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■2017年時点のオートハイビームを2022年のいま試してみる
N-BOX試乗の第3回目は、夜間に於けるライト性能について見ていきます。
といっても、N-BOXのそれはいまどきのライトとしてみればごくオーソドックスな仕上がりで、オールLED照明である点以外はそれほど凝ったものではありませんでした。
では見ていきましょう。
●軽自動車のくせに!? LEDランプが全車標準
N-BOXシリーズのフロントランプは、2017年の登場時からすべてLED式。といっても、標準N-BOX用と同カスタム用とではその内容が異なり、先にN-BOXカスタムについていうと、こちらは3段構成で、下2段に片側あたり9灯ものLEDを並べた、カタログ名「片側9灯式フルLEDヘッドライト(マルチリフレクター式)」。下段にロービーム用6灯、中段にハイビーム用3灯を内蔵しています。これだけ複数のLED素子を並べたタイプなら、たいていは遮光しながらハイビームを放つアダプティブ式になるものですが、N-BOXカスタムはまだその機能は実現されておらず、あくまでもデザインのためのものであることがわかります。
加えると最上段はターンシグナルなのですが、これはシーケンシャル式で、登場少し前の2017年8月の時点で軽乗用車初なのだそうな。
いっぽう、今回の試乗車が属するおとなし顔N-BOXのランプはシンプル型で、ロー/ハイ兼用のプロジェクターランプを中央に、そのプロジェクターレンズを、ポジションランプと呼ばれるリング状の車幅灯が囲み、車両外側にターンシグナルがレイアウトされるという具合です。フォグライトは全車販社オプション、N-BOXカスタムには全車標準装備。
ロック解除で車幅灯が点灯したり、エンジン始動するや車幅灯よりも明るいデイライトが昼間から点灯という面倒なロジックがないのもいいところです。覚えるのが大変だからね。
毎度いっていますが、ランプのオールLED化推進を図るなら、LED素子のどれかひとつ切れただけでユニットごと総取っ替えという悪循環をなくしてほしいこと、そしてLED式に限らないのですが、経時変化でアクリルレンズが黄ばんだ場合、レンズ単品でも交換が可能な構造にすること、および補修用レンズを単品で流通してくれることを強く望みます。ましてやN-BOXは軽自動車。車両価格が高くなりましたが、広く使われる軽自動車だからこそ、維持費や補修費に余計なお金がかからないようにすることをなお意識してほしいところです。
●オートハイビームの性能のほどは?
ライトスイッチの配列は、下からOFF-スモール-AUTO-ライトという、他のどこのメーカーとも異なるホンダ独特のもの。昨年10月から義務化されている最新オートライト対応版で、定位置はAUTOとなります。
エンジンON時、周囲が明るければ消灯のまま、暗ければいきなり点灯します。このときスイッチをスモールにして手を放すと車幅灯に落ち、スイッチをOFFにして手を放すと全消灯。いずれの場合も内部のばね仕掛けでAUTOに戻ります。
昼夜問わずライトをつけたいというデイライト派は、AUTOから1段向こうまわしでライト強制点灯を。このポジションは固定であり、AUTOに戻らないので、エンジンを停止して長時間ドアを開けずにいるとバッテリー上がりを起こすので注意が必要です(この状態でドアを開けるとブザーが鳴り、そのまま降りてリモコンロックすると消灯するようにはなっています)。
ところでいまや自動ハイビームもアダプティブ式がだいぶ広まり、軽自動車にさえ最新型になるとアダプティブ式がちらほら顔を出している時代ですが、どういうわけかホンダは消極的で、アダプティブ式ライトのホンダ初採用車は昨年2021年8月登場の現行シビックでした。いまではここに新型ステップワゴンの一部機種が加わるくらい。いまはもう販売終了しましたが、自動運転レベル3を実現したというHonda SENSING Elite搭載のレジェンドでさえ、ライト切り替えはロー/ハイの2段式でした。
なので、2017年登場のN-BOXがロー/ハイの2段式なのは当然。
N-BOXの自動ハイビームは、フロントガラス上部のカメラが捉えた前方車両のライトまたは街灯の光の状況に応じてロー/ハイを切りかえるものです。
作動条件は以下のとおり。
・パワーモードがON(エンジンがON)である。
・ライトスイッチがAUTOにあること。
・レバーがロービームの位置にあること。
・ヘッドライトが自動点灯中であること。
・車両周囲が暗いこと。
これらの条件をすべて満たすと緑色のオートハイビーム表示灯が点灯し、オートハイビームスタンバイとなります。
実際の走行時のローからハイ、ハイからローへの切り替わりの条件は下記のとおりです。
【ロー → ハイ】
・車速が30km/h以上。
・前方にライト点灯中の車両がない。
・前方に街灯などの光が少ない。
【ハイ → ロー】
・車速が24km/h以下。
・前方にライト点灯中の車両がある。
・前方に街灯などの光が多い。
夜間の街乗り、高速道、山間道で走ってみましたが、過去に乗った最新Honda SENSINGを持つフィットのオートハイビームに比べると、周囲状況の把握やローからハイ、ハイからローへの切り替わりの確実性は、劣っているように感じられました。
自分ならふだんここでハイビームに切りかえるというような場面でも街灯を周囲車両のライト光と勘違いしてローを維持し、逆に高速道で先行車や対向車のライト光が見えていても、それがはるか遠方でポツンと光る程度のものであればハイビームに切りかえてしまうことがたびたび…やはり同じHonda SENSINGでも世代がひとつ前のものなのでしょう。真っ暗闇が広がる夜の山間道では確実性が向上しますが、少しでも周囲の光の存在が認められると、無難で当たり障りのないローを続けます。
ところで、このN-BOXには、オートハイビーム自体を作動させるためのスイッチは計器盤のどこにもカスタマイズ機能のメニューの中にもありません。「ライトのロー/ハイの切り替えくらい自分でやるわい。」というオートハイビームを好まないユーザーさえオートハイビームに付き合わなければならないかというとそうでもなく、ある操作で機能をOFFにすることができます。
【オートハイビームOFFへの設定方法】
ライトスイッチがAUTOのとき、レバー手前引き(パッシング位置)を約40秒間続け、オートハイビーム灯が2回点滅したら手を放す。
【オートハイビームONへの設定方法】
ライトスイッチがAUTOのとき、レバー手前引き(パッシング位置)を約30秒間続け、オートハイビーム灯が1回点滅したら手を放す。
この設定操作ができるのは、パワーモードON、かつ停車中に限られますが、普通は行わない操作をさせることで、オートハイビーム機能の停止・復帰ができるようになっています。ロー/ハイ切り替え自己判断派は覚えておくといいでしょう。
配光特性に注文を付けたくなる点はありませんでした。山間道のカーブでは、カーブ先をもう少し照らすべく、もうちょい左右に広げてほしいと思うことがないではありませんでしたが、それほど大きく不便を抱くこともありませんでした。ウインカー連動ありき、副次的にハンドル連動で点灯するコーナーリングランプを別立てでほしいと思いますが、軽自動車に車両価格を押し上げる要因になるものを強くは望まないことにしましょう。昔ミニカやセルボモードがコーナーリングランプを持っていたことがあったけどね。
●リヤランプ
リヤランプにも触れておきましょう。
上半分の内側上下にあるターンシグナル、リバースランプを、ライン発光するテールランプがぐるりと囲み、下半分ではストップランプがU字型にライン発光します。つまりテールとは別に、ブレーキを踏むとストップランプが追加点灯するというもので、別にハイマウントランプがあるにしても減速・停止が後続車にわかりやすいレイアウトになっています。リフレクター(反射鏡)はリヤバンパー下両端に。
N-BOXの場合はターンシグナルとリバースランプが電球、N-BOXカスタムは、このふたつも含めてオールLED式となります。いずれの場合も、LED球に何かが起きたときには販売店で行わなければなりません。
そのハイマウントストップランプはLED4灯で構成されます。いまやハイマウントストップも義務化されているので、これまたどれかひとつ素子切れを起こすと車検に通らなくなるので要注意! これもひとつ切れただけでユニットごと交換じゃないかな。カラードバンパーに表面傷をつけても補修費が高ければがまんすればいいし、車検もパスできますが、LEDが切れたら車検に通らなくなるので、費用が高いからと我慢してすませることは通用しない。電球なら自前で数百円でできるのに…高機能化しやすいのはわかるのですが、筆者は、クルマのランプのLED化には再考の余地があるのではないかと思っています。半永久的に持つといいながら、切れたり、チカチカとチラつき気味になっているLEDランプのクルマ、結構街で見かけるヨ。
夜間に於ける室内照明の様子は写真のとおりですので参考にしてください。
今回はここまでにすることにし、次回は駐車性能や荷室の収容性について見ていきます。おもしろい工夫があったよ!
ではまた次回。
(文・写真:山口尚志(身長176cm))
【試乗車主要諸元】
■ホンダN-BOX L ターボ コーディネートスタイル(6BA-JF3型・2022(令和4)年型・2WD・CVT・プレミアムアイボリー・パールⅡ&ブラウン)
●全長×全幅×全高:3395×1475×1790mm ●ホイールベース:2520mm ●トレッド 前/後:1305/1305mm ●最低地上高:145mm ●車両重量:920kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.5m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:S07B(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:658cc ●圧縮比:9.8 ●最高出力:64ps/6000rpm ●最大トルク:10.6kgm/2600rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(ホンダPGM-FI) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):20.2/17.4/21.7/20.7km/L ●JC08燃料消費率:25.6km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/車軸式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:190万9600円(消費税込み・除くディーラーオプション)