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■高齢者の免許返納に関するアンケート調査
近年、高齢者の運転ミスなどによる交通事故が社会問題となっており、運転免許を自主返納する人も増えています。
ところが、公共交通機関があまりない地方在住者などでは、免許を返納しクルマに乗らなくなると、買い物や通院など、日常の足を確保できない人もいます。
高齢者が免許を返納すべきか、乗り続けるのかは、在住する地域の事情などもあり、なかなか難しい問題ですが、クルマを運転する高齢の親を持つ人にとっては、「事故を起こしてしまわないか」と心配している人も多いでしょう。
では、実際に、高齢者の親がクルマを運転している世代は、こうした問題をどう思っているのでしょうか?
廃車・事故車買取専門店「事故車買取王 八王子店」を運営するSanta Corporate(サンタコーポレート)は、親がクルマを所有している全国の40代〜50代男女1022名を対象に、「免許返納」に関する調査を実施。
その結果、親の運転に「事故の加害者とならないか」心配する人が77.8%と最多で、79%が高齢者の免許返納に「賛成」していることなどが分かりました。
●親がクルマを使用する頻度を把握している人が70.1%
今回の調査は、2022年6月9日に、インターネットによるアンケート形式で実施。また、調査は、事故車買取王 八王子店のほかに、「埼玉店」「町田相模原店」「横浜店」「山梨店」も共同で行ったそうです。
調査では、まず、「親がクルマを使用する頻度を把握していますか?」と質問。その結果、
「しっかりと把握している(21.8%)」
「ある程度把握している(48.3%)」
を合わせた70.1%が「把握している」と回答。親がクルマを使用する頻度を把握している人は多いことが分かりました。
また、調査では、「高齢ドライバーによる事故についてどのように思いますか?」という質問も実施。これについては、
「判断力の低下が影響している(62.2%)」
「運転操作ミスが多い(25.2%)」
「安全確認ができていない(9.1%)」
といった回答がベスト3に。運転中の判断力が低下していることによって、事故に繋がっていると感じている人が半数以上いることが分かっています。
次いで、調査では、「親がクルマを運転する用途(どこに行っているか、どれくらいの時間運転しているかなど)は知っていますか?」も質問。結果は、
「すべて知っている(8.4%)」
「ある程度知っている(57.1%)」
「あまり知らない(23.6%)」
「まったく知らない(10.9%」
と、「すべて知っている」と「ある程度知っている」を合わせると、なんらかの形で「知っている」人が65.5%とやはり過半数を超えています。
●加害者にならないか、自損事故での怪我などを心配
以上により、親がクルマを使用する頻度や用途を把握している人が多いことは分かりましたが、運転することについて心配や不安を感じることはあるのでしょうか?
そこで、調査では、「親がクルマを運転することについて心配なことや不安なことを教えてください(複数回答可)」と質問。結果は、
「事故の加害者とならないか(77.8%)」
「自損事故で大怪我をしないか(47.9%)」
「あおり運転の被害者とならないか(15.4%)」
といった回答が上位を占めています。やはり、事故を起こして加害者となってしまわないかと心配している人が最多ですね。
また、自損事故による怪我や、近年問題になっているあおり運転による被害なども不安要素としてあることも分かっています。
●免許返納は事故のリスクが減る?
このように、今回の調査をみるかぎり、親がクルマを運転することについて心配や不安に感じている人は多いようです。
では、近年増えている高齢者の免許自主返納についてはどう思っているのでしょうか? そこで、調査では、「免許返納についてどのように思いますか?(複数回答可)」と質問。結果は
「交通事故を起こすリスクが少なくなる(68.3%)」
「移動手段が減ってしまう(64.1%)」
「買い物が面倒になりそう(49.3%)」
「外出の機会自体が減ってしまいそう(46.7%)」
といった項目が上位に入っています。
親がクルマを運転しなくなることで、交通事故を起こすリスクが少なくなるというメリットを感じている人が多いようですね。
一方で、移動手段が徒歩や自転車、公共交通機関などに限られてしまうことで、買い物が面倒になったり、外出する機会が減るといったデメリットを感じている人も一定数いるようです。
●免許返納の年齢は「80歳以上」が最多
以上で分かる通り、免許返納は生活のリズムや移動手段に影響がでる可能性がありますが、やはりリスクが減ると考えている人が過半数以上いることも事実。
では、親が運転している人たちは、どのくらいの年齢で免許返納をした方がいいと思っているのでしょうか?
調査では、これについて「免許返納をした方が良い年齢とはどのくらいだと思いますか?」と質問。結果は
「80歳以上(44.5%)」
「75歳〜79歳(31.9%)」
「70歳〜74歳(17.6%)」
と「80歳以上」になってから免許返納をした方が良いと思っている人が最多となりました。ただし、「75歳〜79歳」と回答した方も3割以上います。
これは、恐らく、80歳でも元気で運転できる人がいる一方、より若い75歳でも、認知能力の低下などで安全な運転ができなくなる人もいるためでしょう。
そう考えると、免許返納時期の判断は、一概に決めるのではなく、個人の健康状態や身体機能の低下などを考慮する必要があるのかもしれません。
●親と免許返納について話をした人は39.2%
調査では、さらに、親がクルマを使用している人たちへ、「実際、親に免許返納について話したことはありますか?」といった質問も行っています。結果は
「ある(39.2%)」
「ない(60.8%)」
となり、免許返納に賛成する人や事故のリスクが減るといった肯定的な意見が多い一方で、デリケートな問題なのか、話合ったことがない人の方が多いようです。
また、調査では、「親の免許返納について考え始めたきっかけとは何ですか?(複数回答可)」といった質問も実施。結果は、
「高齢ドライバーによる交通事故のニュースを見たこと(71.7%)」
「注意力や判断力が低下してきたこと(29.8%)」
「親の運転に不安を感じたこと(22.5%)」
が上位を占めました。これにより、高齢ドライバーによる事故のニュースを見たことで、親の免許返納について考え始めている人が非常に多いことが分かります。
●免許返納の義務化に賛成する人は多い
そして、調査は、近年話題になることが多い「免許返納の義務化」についても聞いています。「免許返納の義務化についてどう思いますか?」といった質問に対し、結果は次の通りになりました。
「賛成(27.6%)」
「どちらかというと賛成(51.4%)」
「どちらかというと反対(17.7%)」
「反対(3.3%)」
「賛成」と「「どちらかというと賛成」を合わせると、肯定派は79%に。ただし、反対している方も一定数いるようです。
●免許返納の特典は認知度が低い
調査では、最後に、免許返納をした場合に受けられる特典についての認知度も調べています。この特典とは、免許を自主返納した人に対し、各自治体などで行っているサービスです。
返納時に申請し取得した運転経歴証明書を提示すると、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店で、タクシーやバスの運賃割引、商品券の贈呈など、さまざまな特典が受けられます。
つまり、免許返納することは、ネガティブな要素だけではないということですね。
そこで、調査では、「免許の自主返納をすることで得られる特典について知っていますか?」と質問。結果は、
「あまり知らない(39.6%)」
「まったく知らない(23.4%)」
「ある程度知っている(31.3%」
で、「あまり知らない」と「まったく知らない」を合わせると63%となります。
こうした特典についての認知度があがることで、自主返納に関する考え方も変わってくるかもしれませんね。
ただし、たとえば、タクシーやバスの運賃割引などの特典は、公共交通機関が発達した都市部に住んでいる人にはいいでしょうが、公共交通機関が少ない地域の高齢者には、あまりメリットにならないかもしれません。そう考えると、特典の認知度だけで、免許返納する人が増えるとは一概にいえないことも現状です。
いかがでしょうか? 実際に、高齢の親がクルマを運転している人なら、こうしたことを一度は考えたことがある人も多いでしょう。自分の親の場合はどうなのか、考える際の参考にしてみて下さい。
高齢者の運転免許制度については、2022年5月13日より、満75歳以上で一定の違反行為がある人への「運転技能検査」が義務化されました。また、衝突被害軽減ブレーキなど先進安全装備が付いたクルマの運転に限定する「サポカー限定免許」も新設されています。
これらは、社会問題化している高齢ドライバーによる重大な交通事故に対する対策といえます。今後も、免許返納の義務化も含めたさまざまな議論をすることで、よりよい制度改革がなされることを期待します。
(文:平塚 直樹 *写真はすべてイメージです)