「ゆっくり走るから楽しい」乗ってみてわかった、新たな発見【ヤマハ発動機グリーンスローモビリティ】

■沖縄北谷でのヤマハ発動機グリーンスローモビリティの取り組みと活躍っぷりを体験してきた

沖縄県北谷におけるグリーンスローモビリティの実証実験、ヤマハ発動機取り組みを取材してみませんか?というオファーをいただき、取材段取りを組む事になりました。前半部分は取材場所へ連れて行っていただけるということですが、後半は自由取材。ということで、宿とレンタカーの手配を試みます。が、宿泊施設は空きがあるものの、レンタカーが予約できない。どこのレンタカー会社であってもトラベルサイト経由でも、『ご希望の日程で空いている車両はありません』と出てきます。これは困った。沖縄でクルマがないとなると、どのような動きが取れるのか、まったく未知数です。とりあえずレンタルバイクは借りることができたので、バイクを予約して旅立つことにしました。

●那覇空港からの北谷を直行で結ぶバス「北谷エアポートエクスプレス」

北谷エアポートエクスプレスは、一日3往復運行中
北谷エアポートエクスプレスは、一日3往復運行中

さて、沖縄那覇空港に到着したら、バスで北谷へ向かいます。沖縄旅行といえば、以前は観光バスや貸切タクシーで観光することも多かったそうですが、今ではほとんどがレンタカーが使われています。ところが、御存知の通り、コロナの影響で利用客が激減。商売であるレンタカー業者は保有車両を減らしました。その影響を受けて、今では慢性的なレンタカー不足に陥っているとのこと。出発前にレンタカーが予約できなかったのは紛れもないこのことだったのです。

ちなみに、現在、沖縄の旅行者数の上限を決めているのは、飛行機の座席数、ホテルのベッド数、それにレンタカーの台数なのだそうです。このどれかが上限に達すると、もう旅行者数は増えることなく、場合によっては、他の予約もキャンセルが発生するという状況だそうです。

今回利用したバスは、空港から北谷へと直行する、「北谷エアポートエクスプレス」です。空港-北谷間を最短45分で結んでくれます。現在の沖縄は、誰もがクルマ移動に頼っています。結果、渋滞は慢性的に発生しており、空港周辺は旅行者と市民が入り交じり、頻繁に混雑しています。超ハイシーズンでは、飛行機が着陸して、レンタカー業者の送迎バスに乗り、いざ出発というまでに1-2時間かかることもあるようです。北谷エアポートエクスプレスに乗って、北谷でレンタカーを借りることも現実的なのです。

さらにバス内では、ガイドさんが沖縄と米軍基地との歴史を語ってくれたり、歌い手さんが沖縄の民族楽器「三線」を演奏し歌ってくれます。これも、せっかく沖縄旅行に来てくれた人へ、バスを退屈な移動にしないという心遣いなのです。

・北谷エアポートエクスプレス

・所要時間/最短45分
・大人1500円/子供750円(片道運賃、ガイド代、食事券500円またはポーたま引換券付き)
・出発時刻:那覇空港発11:00/13:10/15:30 北谷発12:00/14:20/16:40

 

●開発が進む沖縄の注目スポット美浜地区

まるでテーマパークのような街「アメリカンビレッジ」
まるでテーマパークのような街「アメリカンビレッジ」

北谷では米軍から返還された比較的平らな海側の地区の開発を進めて来ました。開発地区は、国道58号線の西側にあり、海に面しており、南北方向へ縦長で、北部、中部、南部にわけられています。

アメリカンビレッジがあるのはその中央部分。アメリカ西海岸サンディエゴをイメージした街づくりとなっているそうです。そのアメリカンビレッジを含む美浜地区にはリゾートホテル、お土産物屋さん、イオンショッピングモールなども含まれています。

その広大な敷地内を移動するのは歩きだけではちょっと大変。

自動運転中の美浜シャトルカート
自動運転中の美浜シャトルカート

そこで利用したいのが、乗り合いの美浜シャトルカート。公道ルートと海沿いルートをぐるりと廻るそのシャトルは、巨大リゾートなどで、受付からコテージやレジャー施設を往復するような乗り合いのヤマハ発動機製のカート「ランドカー」をベースに公道も走行可能としたもの。

そのランドカーをベースに自動運転化して運用しています(安全確認のため保安要員も乗車)。その自動運転車は、福井県永平寺町で、2021年3月に、国内で初めてレベル3の認可を受けた車両と同等で、じつはすごく先進的な車両なのです。

注目度も高い美浜シャトルカート
注目度も高い美浜シャトルカート

自動運転は路面に埋め込まれた電磁誘導線を読み取りながら進行していくもの。ライダーやカメラなどのセンサーを搭載し、障害物を発見すると自動で停止します。自動運転は遠隔で監視され、いざというときには対処することでレベル3の自動運転を実現しているのです。

このグリーンスローモビリティ(電動で、時速20km未満で公道を走る4人乗り以上のパブリックモビリティ)を利用すると、のんびりした沖縄時間に合わせてどう過ごそうかな、とペース配分もゆったりとできそうな気になってきます。

海沿い、公道ルートともに、設置されたバス停で自動停止し、乗降ができ、運賃は無料ですのでぜひ使ってみて下さい。

・美浜シャトルカート

・料金:無料
・運行日:毎日(公道ルート)/土日(海沿いルート)
・定員:最大5名
・運行間隔:約30分間隔(公道ルート)/約20分間隔(海沿いルート)

●スローカーシェアで自由に北谷を散策走行

公道走行に対応し軽自動車登録されたヤマハ発動機製「ランドカー」
公道走行に対応し軽自動車登録されたヤマハ発動機製「ランドカー」

さらに、もう少し積極的に北谷を見て回りたいなら、美浜シェアカートがおすすめです。こちらもヤマハ発動機製のランドカーをベースに、公道を走れるような補機類を追加したものですが、自動運転ではなく自分で運転するもの。もちろん、普通免許が必要です。

シートベルトなしで、乗り降りも簡単
シートベルトなしで、乗り降りも簡単

最高速度は19km/hで、そのため、シートベルトは不要となっていて、観光スポットを見つけては、さっと降りて見に行ってみる、なんて使い方には最適です。

走行可能エリアは限られていますが、おすすめしたいのは北部の宮城海岸エリア。サーフィンやダイビングの発着にも使用される宮城海岸で海を眺めるもよし、おしゃれなカフェでお茶をするもよし。また、米軍人が基地外に住んでいるエリアでもあるので、日本とは違う住宅街をのんびりと眺めるのも異国情緒あって沖縄旅行らしさを満喫できます。

オリジナルチョコレートショップに立ち寄った
オリジナルチョコレートショップに立ち寄った

実際に試してみた際は、見かけたチョコレート店を少し通り過ぎたところで簡単にUターンし、お店の前に停車。お土産のチョコとコーヒーをさっと買ってまた走り出す、という使い方をしていましたが、スキー場などのリフトと同じくらいの速度と楽さで、自転車の自由度を併せ持った乗り物といったところでしょうか。

使用料金が時間ごとにかかって最大5時間の利用となっているので、レンタカーのように借りっぱなしでどこかへ駐めて出かけるような使い方には向いていませんが、美浜地区を半日満喫するような使い方にはまさに足として丁度いい乗り物ではないでしょうか。

・美浜シェアカート

・料金:800円/30分(割引プランあり)
・利用時間:10〜21時(最大5時間)
・定員:大人4名
・最高速度:19km/h
・条件:普通免許

●子供にも人気のムーンライトクルーズ

夜の美浜地区を自動運転
夜の美浜地区を自動運転

北谷は、ホテルも充実しており、飛行機で沖縄に来た初日や、最終日の一泊過ごすのもオススメです。そんな北谷ナイトライフを楽しむなら次世代MR体験ができる「ムーンライトクルーズ」はいかがでしょう?

車両部分をヤマハ発動機、映像部分をSONYが開発を担当した「SC-1」
車両部分をヤマハ発動機、映像部分をSONYが開発を担当した「SC-1」

ムーンライトクルーズは、海沿いを自動運転でフロントガラスがない車両「SC-1」がゆっくりと走行します。車内から見ると、フロントガラスの代わりに、車幅いっぱいの液晶モニターが搭載されています。乗員は、フロントガラスと同じように前方をカメラで映し出し、その上に作成したオリジナル映像をレイヤーとして追加したものをコンテンツとして楽しみながら移動します。

「SC-1」はヤマハ発動機とSONYで共同開発されたもので、可動部分をヤマハ発動機。映像、音響部分をもちろんSONYが担当。今回、移動視聴させていただいたのは、美ら海水族館にいそうな海洋生物の生体「NIGHT AQUARIUM」と、竹富島の水牛車に乗っているかのように見せる「お笑い芸人与座よしあきと水牛車さんぽ」。どちらも、バーチャルな世界にゆったりのんびりと引き込んでくれて、異国情緒を沖縄に求めてきた人にはうってつけの空間となります。

・ムーンライトクルーズ

・料金(片道・1コンテンツ):大人1000円/子供500円
・時間:16〜18時/19〜21時(最大5時間)
・定員:最大4名
・対象:3歳以上

 


北谷エアポートエクスプレスを除くと、どれもゆったりゆっくり移動して楽しもうというもの。これらにはすべて、ヤマハ発動機の培ってきた低速で安全に走る技術が息づいています。

ヤマハ発動機では、こうしたゆっくりと自動または自分の運転で移動するモビリティの交通過疎地域や観光地への導入を進めています。

ゆっくり移動するということは、それだけ新しい発見をすることが増えるとも言いかえられます。速く走る車両を作るのも得意なヤマハ発動機ですが、文化やレジャーに最適な乗り物を創り出すのが得意なのも、ヤマハ発動機なのです。

沖縄を訪れた際は、北谷のスローモビリティにぜひ触れて時計の動きを少しだけ遅くしてみて下さい。きっと何か見えてくるはずです。

(文・写真:クリッカー編集長 小林和久

この記事の著者

編集長 小林和久 近影

編集長 小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務める。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
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