目次
■ドライバー異常時対応、標準オーディオまでもすべてが新開発
●魂動デザインとよりマッチするようになったFRレイアウト
新型マツダCX-60は、デザインの面でも新たなフェーズに入っています。エンジン縦置き、FRレイアウトが採用されたことで、より「魂動デザイン」の表現がしやすくなったと予想できます。以前、マツダが魂動デザインを報道陣に説明するのにあたり、野生動物のチータが走る(躍動)する写真を見せたことがあります。
ロングノーズで後方に重心を置いたようなショートデッキによるフォルムは、サイドビューでより分かりやすく、個人的には、これからチータが獲物に飛びかかる前に体勢を整えているようにも見えます。
さて、新型CX-60のデザインテーマは、「Noble Toughness」。Nobleは、「崇高な」「威厳のある」「気品のある」といったニュアンスがあり、Toughness(タフネス)は、そのままでも意味が通じるでしょう。確かにフロントマスクは、ボリューム感が増したことで、タフな印象を受けます。
一方で、気品の高さは損なっていない感じも強く抱かせます。最近の新型車は、大型フロントグリルや大開口を備えたフロントマスクを備えているモデルも多いですが、グリルや開口部をいたずらに大きく(あるいはワイドに)しすぎず、実車からは品の良さも漂います。
CX-60の内・外装は、先述したように、力強さを感じさせるFRによる骨格(レイアウト)やインテリアのタフさの中に、魂動デザインの知性やエレガンスを表現したとしています。
エクステリアは、堂々とした風格のあるフロントフェイスと、ロングノーズ、ショートデッキの力強く動きのある骨格がベース。魂動デザインの特徴である生命体が地面に踏ん張り、後ろ足で前に向かって跳躍するような生命感が表現されたそうです。
サイドビューは、骨格の動きに連動する大胆な光の魅せ方によりエレガントな面質も表現されています。
ボディカラーでは、3番目となる「匠塗カラー」で、禅の世界の「無」から着想したという「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」が初めて採用されています(5万5000円の有償色)。
●ワイドなインパネとセンターコンソールが高級感と力強さを演出
一方のインテリアは、ワイドで水平基調のインパネに、ワイドなセンターコンソールが前後に配置されるレイアウトになっています。センターコンソールは、FRレイアウトらしくトランスミッションと縦置きエンジンの存在を感じさせる約割も担っているそうです。
インパネからサイドルーバー、ドアトリムに連続するデザインが高級感を抱かせます。またマツダは、CX-60をデザインするのにあたり、「プレミアムモダン」、「プレミアムスポーツ」、「ギャラント」、「アクティブ」という4つの世界観(デザインコンセプト)をイメージし(実際のグレード名とは異なる)、幅広い価格帯に対応したとしています。
2つ用意される「プレミアム」は、光の変化を感じさせる織物の上質さが追求され、ステッチを日本の掛縫い(かけぬい)とすることで洗練されたモダンな印象をもたらしています。
トリムの加装には、心地よい乱れを感じさせる天然木素材が使われていて、自然の美を感じ取り、きめ細やかにしつらえる日本人の精神を表現したという「プレミアムモダン」。「プレミアムスポーツ」は、黒色素材で引き締め、キルティングが施されたスウェード素材とナッパレザーで高級感を演出。
一方、コアとベースグレードの「ギャラント」、「アクティブ」は、素材こそ奢らないものの、骨格の強さ、逞しさがしっかりと表現され、頼もしさを感じさせるアクティブなSUVらしさを表現したとしています。
実車を眺めていると、パッと見はCX-5などと同じ最近のマツダ車らしさも感じさせます。マツダ車のオーナーやクルマ好きであれば、マツダ車であること、新しくなったことは伝わってくるはず。一方で、それでも思ったほどは変わっていない、という感想を持つ人もいるかもしれません。
新型車のデザインは、どんなモデルでも多かれ少なかれ賛否両論があるのは当然。CX-60に関しては、押し出し感が強すぎる、逆に、あまり変わっていない、という声もあるかもしれません。
チーフデザイナーを務めたのは、エクステリア出身の玉谷 聡氏で、アテンザのチーフデザイナーとしても活躍されています。魂動デザインには、以前から「引き算の美学」に基づくこだわりも表現されています。
デザインを考えていく中で、できるだけ要素をとにかく研ぎ澄ませていく、アートの領域まで持って行くことを心がけたそうです。
「カタチの原理としては昔から、後ろ足で蹴る(リヤ駆動)のが正解(魂動デザインの)だとは分かっていても、現実のプロダクトはFFだったという事情もあり、今回からはクルマの機能を突き詰めていくと魂動デザインと合致してモチベーション高く作ることができた」と明かしてくれました。
同時に玉谷氏は、デザインにもう少し新しさがあっても良いのでは?という声に対しては、新規性を表現する方法はある、と前置きしながらも「新しさを盛り込むことで、全体の調和が崩れるのを避けています。タイムレスなデザインも意識しています。最近のクルマの中は、アクの強さを押し出していくのがトレンドになっていますが、CX-60では、3年、5年経っても陳腐化しないように心がけ、さらに月日が経っても古さを抱かせないようにしました」と想いを語ってくれました。
さらに、「新型車にフレッシュさを求める方には少し物足りないかもしれませんが、料理で例えると、すぐに脳が美味しいと感じられる化学調味料を使わず、自然素材を使った料理を噛んでいるうちに、旨味が出てくるようなイメージです。化学調味料を使った料理はすぐに美味しいと分かりますが、毎日は食べたくないなといったニュアンス」と、「適切な喩えではないかもしれませんが」と前置きしながら説明してくれました。
●最適なドライビングポジションを容易に設定、次回から座るだけで呼び出せる
さて、CX-60の運転席に収まると、ワイドなインパネとコンソールが印象的で、大型化により広さを実感させながらも守られるようなパーソナル感も濃厚に抱かせます。
ドライバーを迎えてくれるのは、マツダが初めて採用する「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」。カメラを使ってドライバーを認識し、一度設定されたシート位置(スライド、リクライニング、シートハイト)やチルト&テレスコピック、ヘッドアップディスプレイ、ドアミラーの角度など、ドライビングポジションを含む約200点の調整、設定項目を顔認識で読み出すことができるシステム。
実際、最初の設定ではもちろん、200点も入力する必要はなく、ガイダンスに従って身長などを入力するだけ。多くの一般ドライバーが適切なドライビングポジションを取れているとは言いがたい(もちろん、正しいドラポジの方もいます)調査などもあるようで、自工会の指針などを参考にしたという、正しいドラポジが奨励されます。なお、好みやくせに応じた微調整はもちろん可能。複数でクルマをシェアする場合は、記憶しておけば、細部まで自分好みの設定を即読み出せます。
●標準仕様の新しい8スピーカー純正オーディオシステムを採用
また、CX-60には、新しい純正オーディオシステムも用意されています。この純正オーディオシステムは、最上級仕様の「Exclusive Mode」に標準で他はオプションの「ボーズサウンドシステム(12スピーカー)」を設定しながらも、標準仕様のオーディオシステムを開発しました。
「マツダ・ハーモニック・アコースティック+8スピーカー」がそれです。低音も高音もしっかり響かせる、アーティストが目前にいるようなサウンドを目指し、カウルサイドウーファーのボックスの容量をMAZDA 3などの3.0Lから4.8Lに拡大。CX-60ではボディの一部を使うことで4.8Lの大容量化を実現し、低域の再生帯域を増やし、ダイナミックレンジの拡大に成功しています。
より上質なサウンドを再現できるようになったのはもちろん、1人乗車時によりサウンドを楽しめる運転席優先モードも用意。また、ドアでなくボディ骨格をスピーカーの一部としたことの恩恵として大音量を流したまま車外に出ても「音漏れ」が全くといっていいほど、ほぼしないため、周囲に気を使わず思い切り好きな音楽を楽しめます。
●ドライバー異常時対応は一般道でも機能する
そのほか、安全性では、ドライバー・モニタリングと連動するドライバー異常時対応システム (DEA) が採用されています。急病などでドライバーが運転できない状態になるとハザード点滅、ブレーキランプ点滅とホーン吹鳴で車外に異常発生を報知しながら、 高速道路などでは可能な限り路肩に寄せながら減速停止、一般道でも同一車線内で減速停止するシステムです。
なお、高速道路の追い越し車線から走行車線を経て路肩に停止する自動車線変更はできず、次のフェーズになるそう。それでもまずは一般道で減速することで事故の回避や被害低減を図ることは画期的。停車後は、ドア解錠やヘルプネット自動接続による救命要請も行われ、 早期のドライバー救護、救命に寄与。また、ディーラーオプションになるものの、「ドライビングサポートプラス (DSP) 」にも対応。ペダル踏み間違い事故などに対応する機能で、「ドライビングサポートプラス用アドバンストキーレス 」としてショップオプションで設定されます。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)
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