マツダ「CX-60」試乗燃費は16.3km/L、販売台数の7割が4WD! ボディカラーはホワイト、ブラック、グレーが人気順!【新車リアル試乗 8-17 マツダCX-60 販売動向/燃費 まとめ編】

■CX-60総まとめ。機種が膨大な数に上る、CX-60の販売動向を見てみよう

約7割が4WD!
約7割が4WD!

CX-60リアル試乗の最終回です。長い道のりでした。

国内発売開始から約8か月半経過時点の販売動向や、CX-60のまとめ&燃費報告を行います。

●販売動向

マツダ広報の方にお願いし、昨年2022年9月15日の国内仕様発売開始から、今年2023年5月までの、CX-60の販売動向データを出していただきました。

ただし、9月15日時点の発売は、今回の試乗車でもあったディーゼルハイブリッドのe-SKYACTIV Dのみで、他のSKYACTIV-G 2.5、SKYACTIV-D 3.3,e-SKYACTIV PHEVのモデルは2022年12月発売と、発売時期にズレがあることを含んだ上での数値であることをご承知おきください。

【CX-60販売動向データ】

1.販売台数(2022年9月15日~2023年5月31日速報値)
1万9924台

2.2WD・4WD比率
30.3% : 69.7%

3.機種別比率
1.ガソリン車・SKYACTIV-G 2.5 ※()内は4WD車 ※2022年12月発売

・25S S Package:2.3%(0.9%)
・25S L Package:4.6%(1.7%)
・25S Exclusive Mode:3.7%(1.5%)

2.ディーゼル車・SKYACTIV-D 3.3 ※()内は4WD車 ※2022年12月発売

・XD:0.6%(0.5%)
・XD S Package:3.3%(2.3%)
・XD L Package:8.9%(7.8%)
・XD Exclusive Mode:6.9%(5.4%)

3.ディーゼルハイブリッド車・e-SKYACTIV D ※全機種4WD ※2022年9月発売

・XD-HYBRID Exclusive Sports:14.6%
・XD-HYBRID Exclusive Modern:6.6%
・XD-HYBRID Premium Sports:19.5%
・XD-HYBRID Premium Modern:4.9%

4.プラグインハイブリッド車・e-SKYACTIV PHEV ※全機種4WD ※2022年12月発売

・PHEV S Package:0.1%
・PHEV Exclusive Sports:0.7%
・PHEV Exclusive Modern:0.5%
・PHEV Premium Sports:1.8%
・PHEV Premium Modern:1.1%

4.ボディカラー比率
1位:ロジウムホワイトプレミアムメタリック 41%
2位ジェットブラックマイカ 17%
3位:マシーングレープレミアムメタリック 16%
4位:プラチナクォーツメタリック 12%
5位:ソウルレッドクリスタルメタリック 11%
6位:ディープクリスタルブルーマイカ 3%
7位:ソニックシルバーメタリック 1%

5.人気メーカーオプション ※2023年4月までの数値
1位:地上デジタルTVチューナー(フルセグ) 30%
2位:ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 16%
3位:Boseサウンドシステム+12スピーカー 15%

6.ユーザー層
男性86%、女性14%。平均年齢46.9歳。
ライフステージ:独身&カップル30%、ファミリー22%、ポストファミリー48%

このCX-60、車両価格が下は299万2000円から上は626万4500円までとずいぶん広範囲に渡っているばかりか、かなりのボディサイズ(特に幅!)の持ち主なのに、その割に8か月半で1万9924台も買われているとは! ましてやこれだけの知能派デバイスを持っているなら半導体不足の影響をもろにひっかぶっているはずなのですが、それをものともせずによくぞ売れているほうだと思います(もっとも、影響がなければもっと数字は大きいのでしょうが・・・)。

発表時の目標販売台数は2000台となっていますが、実際は2000×8.5=1万7000台を超えての1万9924台と目標を超えており、このご時世としてはヒット作のうちに数えていいでしょう。

機種別比率を見てみると、それぞれの数字が小さめに見えますが、それは機種が23もあって数字が分散されているゆえの錯覚。そのなかにあって、多く売れているのはXD-HYBRIDシリーズで、人気はXD-HYBRID Premium Sports、同XD Exclusive Sportsに集中しています。少なくともいまの日本では、ハイブリッドが大きな訴求力を持つことがわかるというもの。

約7割が4WDという、SUBARU車かと思うような販売動向も特徴で、ハナっから4WDしかないXD-HYBRIDがシリーズ最多ともなれば当然のことでしょう。4WD車の品揃えが他メーカーほどではなく、マツダ車の北国の販売比率が高くなかったのは過去の話です。

筆者は、いちばん安い25S S Package、いちばん装備が省かれているのにいちばん安くはないXDを買うひとがどれほどいたか興味があったのですが、それぞれ2.3%、0.6%と、多くは買われていませんでした。やはりそうか。

いちばんすっきりしていて飽きがこないからクルマは白でいいと勝手に決めつけている筆者が「ほー」と思ったのは、車体色の一番人気が「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」であることで、これはマツダがCX-60で初起用した新色。続けてCX-5にも中途採用されましたが、さらに他のマツダ車にも展開されていくでしょう。

ところで、クルマを選ぶ客のほうは楽しくとも、造り手のマツダ社内の、特に生産管理部門の担当者、売る側のマツダ販社のセールスマン、ともにアッタマ痛いだろうなと思うのは、機種数も去ることながら、セットオプションの膨大な数です。

例えばいちばん安い25 S S Packageだけでも工場オプションのパッケージ種類は14通り、2駆4駆で28通りとなり、いわば同じ25S S Packageでも、マツダ社内の仕様書なり生産管理書なりの上では、オプション品を選ばない、ただ買っただけの25S S Packageを入れて29種の25S S Packageが存在しているはずです。

セット内容の数はシリーズによって増減はあるものの、他機種もいろいろな組み合わせのセットがあり、筆者の数えでは、その数は全部で207とおりありました。ここにまる裸のCX-60 23種を入れると、世の中には装備分けで230種のCX-60が存在することになります。

ボディカラーは全機種とも全7色選べるので、色別まで細分して見るとCX-60の種類は一挙1610種にまで膨れ上がる・・・ここまで書いてきて、「計算合ってるよな?」とだんだん自信がなくなってきましたが、CX-60を検討する方は、ピュアホワイトの内装に惹かれてロジウムホワイトプレミアムメタリックのXD-HYBRID・Exclusive Modernを選んだつもりが、納車日にはソニックシルバーメタリックの黒い樹脂内装のXDが届いていたということのないよう、装備表とオプション表にじっくり目をとおし、1/1610のCX-60を選んでください。

★メーカーコメント

新世代ラージ商品群第一弾であるCX-60は、縦置きプラットフォームと高出力パワートレインがもたらす滑らかでパワフルな走りに加え、日本人の感性や美意識を元にした内外装デザイン、最新の環境・安全性能や安心感を高次元でお届けすることを目指した、全く新しいSUVです。

現在マツダ車をお乗りのお客さまへの魅力的な選択肢をご提供するとともに、より「上質さ」を求められるお客さまの選択肢にもなるよう、4種類のパワートレインと4種類のデザイン表現を組み合わせた、幅広いグレード展開としています。

特に安全性能についていうと、ドライバーの異常を検知し、事故の回避・被害低減を図る、高度運転支援技術の1つとしてこの度初採用した「ドライバー異常時対応システム(DEA)」は、改正保安基準に基づく型式指定を国土交通大臣より日本で初めて取得。

また第55回市村賞「市村産業賞 功績賞」を受賞するなど、高い評価をいただいております。

●エピローグ

CX-60は、身長170cmのしおりさんが立っても大きいままに見える
CX-60は、身長170cmのしおりさんが立っても大きいままに見える

筆者は手放しにクルマをほめることをめったにしませんが、結論からいうと、このCX-60、サイズが大きいことを除けば割と気に入りました。

乗っている間もクルマを返却したいまも抱いている感想は、「なかなかやるじぇねえか、マツダ!」というものです。

具体的にいうと「クルマの好きなヤツらが造ったクルマ」という感じで、それも、ガキくさい、学生レベルの延長線上にある「クルマ好き」(若いひとはクルマに興味がないという話は置いておいて)ではなく、「自動車とはかくあるべき」という主義・主張を持っている「ヤツら」が造ったクルマ。

残念ながら、「クルマを造る会社に入ったひとが仕事で造った」「クルマは好きなんだろうけど、いろいろな事情でこうなったんだろな」という感触がチラつくクルマが多いなか、ハンドルを握り、道を走らせている間、図面や試作車を前に、ああでもない、こうでもないと侃々諤々する開発陣の姿が思い浮かぶようなCX-60でした。

何度でも書きますが、走り出して車速とエンジン回転が上昇するにつれて自動変速する8ATの変速感とリズミカルなサスペンション揺れの調和、電動式で「よくぞここまで仕上げた!」と感心した、軽いのに適度で好感触な反力を持たせた電動パワーステアリング、おおよそ自動車向きとは思えない静電容量チョンチョンタッチ化の流行に乗らなかった操作類。クルマの乗り味はこうあるべき。ハンドリングはこう。走るクルマに於ける操作性はかくあるべし・・・内外各所に、マツダの「クルマ好きなヤツら」の主義・主張が読み取れます。

ボタン式でない、レバー式の電気シフトがうれしかった
ボタン式でない、レバー式の電気シフトがうれしかった
マツダは操作性にも一家言あるにちがいない。マツダ車の特徴、コマンダースイッチ
マツダは操作性にも一家言あるにちがいない。マツダ車の特徴、コマンダースイッチ

アームレストにかけた左腕から自然な位置にある、小さなマツダ3でも手抜きなく起用しているコマンダースイッチ、「アイデア倒れ」と書いた部分はあるものの、シフトを電気式にするならボタン式にもできたのにそれをせず、引き続きレバー式に徹したのがその象徴だと勝手に思っており、マツダは自動車に於ける操作性について決して軽視していないと信じます。

消火器
消火器
1990年代前半、この5ブランドで5チャンネル体制を構築していた
1990年代前半、この5ブランドで5チャンネル体制を構築していた

なーんだ、こういうクルマをめざしていたのか!

いや、筆者はこれまで、マツダやマツダラインナップのクルマたちを見るにつけ、「5チャンネル体制の再来」だの「AKB」だの「消火器」だのと思っていましたが(第1回)、どうもすいませんでした。

マツダにはただただひれ伏してお詫びを申し上げたい。

CX-60の素性をそのまま小さなサイズのクルマにも転用できればすばらしいと思う
CX-60の素性をそのまま小さなサイズのクルマにも転用できればすばらしいと思う

ただ、残念ながら、筆者にはあまりに値段が高いのと、日常の使用環境からサイズを持て余し気味になるので、CX-60を買うことはできません。

たまたま最初に買った中古のアクセラでマツダファンになり、その次もマツダ車にし、いま中古で買った2代目プレマシーを愛用している友人がいますが、彼にも勧められません。というのも、CX-60が入るには違いない彼の家の車庫ですが、いかんせん、その車庫に行くまでの道がせまいからです。とてもいまのプレマシーのようにはいかないでしょう。

ヨーロッパで発表されたクルマなのでこれでもいいのですが、せまい日本(本当は縦に長い)では、乗り手の環境が買う・買わないを大きく左右するクルマです。

このクラスのSUVを選ぶにあたり、財力のほか、使用環境にも恵まれているひとは、CX-60を候補に入れるのも悪くはないでしょう。

CX-60は次世代ラージ商品群の第1弾とのことですが、ラージといわず、ミディアム、スモール商品群にまでこの走りの爽快感、リズミカルな乗り心地、よく練り込まれた操作感がそのまま展開されるなら、次はマツダ車を選ぶのもいいかなと思いました。

5ナンバーサイズ時代のルーチェだって「おっきいクルマだな」と思わせたもの。願わくば、ドラえもんがCX-60にスモールライトの光を浴びせ、5ナンバーサイズに縮小したような、そしてそれでも小ささを感じさせない「CX-2」ないし「CX-20」が出てくれれば。

純粋なディーゼルエンジンだけの走りがどうなのか? 非常に興味がある
純粋なディーゼルエンジンだけの走りがどうなのか? 非常に興味がある

もうひとつ、本編と重複しますが、今回の試乗車では、ディーゼルのウィークポイントをほとんど解消した、新開発6気筒ディーゼルエンジンの仕上がりに感心しました。音の静かさ、パワーの出方に感心しましたが、あくまでもハイブリッドでのもの。ハイブリッドではない、ディーゼルエンジン単体車両でもあの力強さは健在なのか、乗っている間じゅう、興味がありました。

機会があったらXDシリーズにも乗り、このリアル試乗で採りあげたいと思います。

最後、燃費の報告をもってCX-60のリアル試乗はおしまい。

次回は新型ステップワゴンを採りあげます
次回は新型ステップワゴンを採りあげます

次回のリアル試乗は新型ステップワゴンを採りあげます。

(文:山口尚志 モデル:星沢しおり 写真:山口尚志/マツダ)

【燃費報告】

燃費はかなりよかった
燃費はかなりよかった

★試乗トータル燃費:16.3km/L(カタログ燃費:21.0km/L(WLTC総合))
★燃費計測のための総走行距離:456.3km(一般道136.8km + 高速道258.0km + 山間道61.5km)
★試乗日:2023年4月16日(日)~17日(月) 期間中、晴れとくもりと雨が混在。今回はクーラーはONにしっぱなし。アイドリングストップは半々。

今回の燃費計測のために走った距離は456.3km
今回の燃費計測のために走った距離は456.3km

【経路内訳】
一般道:東京都練馬区~新宿区~江東区、群馬県前橋市内、高崎市内 計136.8km
高速道:
首都高速11号台場線・台場IC~都心環状線C1右まわり~5号池袋線・早稲田IC 計13.3km
関越自動車道 下り・練馬IC~北関東道・前橋南IC 計87.1km、前橋IC~沼田IC 計33.0km
関越自動車道 上り・沼田IC~練馬IC 計124.6km
山間道:群馬県赤城山 2往復 計61.5km

【所感】

燃料タンク容量58Lのうち、東京帰着時の給油量は28.02Lだった。タイヤは前後とも規定圧の2.5kg/cm2に調整、給油は走行前後同じ給油機の自動ストップにて行った
燃料タンク容量58Lのうち、東京帰着時の給油量は28.02Lだった。
タイヤは前後とも規定圧の2.5kg/cm2に調整、給油は走行前後同じ給油機の自動ストップにて行った
燃料計の針はなかなか下がらなかった。給油時の残りは約半分。この時点の走行可能距離は450kmなので、1満タンあたり約900km走れる計算だ。それにしても燃費計、ちょっとサバを読んでいるのはご愛嬌だ
燃料計の針はなかなか下がらなかった。給油時の残りは約半分。この時点の走行可能距離は450kmなので、1満タンあたり約900km走れる計算だ。それにしても燃費計、ちょっとサバを読んでいるのはご愛嬌だ

カタログ燃費・WLTC総合値21.0km/Lに対する達成率は、約77.6%。ハイブリッドはカタログ値に対する乖離が大きいの定説は、CX-60のディーゼルハイブリッドにもあてはまった。

いっけん、「16.3km/L」の数字は大したことないように思える。ただ、CX-60は、3.3L直6ディーゼル搭載。このサイズにして車両重量は2t近い1940kg。それを思えば、もともと燃費に有利なディーゼルのハイブリッドであるにしても、この数字は優秀だと思う。

ましてやクーラーは借りてから返すまでONにしっぱなし、アイドリングストップも走行距離の半分はクルマ任せだったのに、1.5t未満の3.3L未満のクルマだってこれほどまでに届かないクルマはザラにある。やはり燃費は排気量の大小に直接結びつくのではなく、要は車両重量と排気量、トランスミッションギヤ比などとのバランスで決まるということをこのCX-60は教えてくれた。

それにしてもまあ、乗っている間じゅう、燃料計の針の下がりの遅いのには感心しました。

【試乗車主要諸元】

■マツダCX-60 XD-HYBRID Exclusive Modern〔3CA-KH3R3P型・2022(令和4)年8月型・4WD・8AT・ロジウムホワイトプレミアムメタリック〕

★メーカーオプション
・ドライバー・パーソナライゼーション・システムパッケージ 5万5000円(消費税込み)
・パノラマサンルーフ 12万1000円(同)
・ロジウムホワイトプレミアムメタリック特別塗装色 5万5000円(同)

●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm ●ホイールベース:2870mm ●トレッド 前/後:1640/1645mm ●最低地上高:180mm ●車両重量:1940kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:5.4m ●タイヤサイズ:235/50R20 ●エンジン:T3-VPTH型(水冷直列6気筒DOHC24バルブ直噴ターボ) ●総排気量:3283cc ●圧縮比:15.2 ●最高出力:254ps/3750rpm ●最大トルク:56.1kgm/1500~2400rpm ●燃料供給装置:電子式(コモンレール) ●燃料タンク容量:58L(軽油) ●モーター:MR型 ●最高出力:16.3ps/900rpm ●最大トルク:15.6kgm/200rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池 ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):21.0/18.0/21.2/22.4km/L ●JC08燃料消費率:- ●サスペンション 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク ●車両本体価格505万4500円(消費税込み・除くメーカーオプション)