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■街や郊外で軽快な125cc新型ネイキッドスポーツ
イタリアの老舗バイクブランド「ベネリ」が放つ原付二種の新型ネイキッドスポーツ「125S」。
近年、世界的に人気が高いストリートファイターというジャンルに属し、野獣系のアグレッシブなスタイルと125ccクラスとは思えない大柄な車体などで、存在感が満点の最新モデルです。
そんな125Sに、JAIA(日本自動車輸入組合)主催の輸入2輪車試乗会で乗ってきました!
最高出力9.4kW(12.8ps)を発揮する単気筒エンジン、スリムながらトップクラスの迫力ボディ、ストリートなどで快適なアップライトなポジションなどにより、125Sは一体どんな乗り味をみせてくれるのか? 早速レポートしてみましょう。
●老舗ベネリの最新スポーツモデル
昔からのバイク好きならば、ベネリという名前を懐かしく思う人も多いでしょう。1911年にイタリアで創業し、かつて数々の国際レースで活躍した老舗バイクメーカーです。
1980年代後半に一度消滅しましたが、現在はブランドが復活。
4輪ブランドのボルボ・カーズやロータスも傘下に収める中国のGEELY(ジーリーホールディングス)の一員、銭江グループ(Q.J.)傘下として、数々の個性的なモデルをリリースしています。なお、日本では、2輪車用品なども手掛けるプロトが輸入販売を行っています。
そんなベネリがリリースする原付二種の最新ストリートファイターが125Sです。
ちなみに、ストリートファイターとは、サーキット走行にも対応する高い動力性能を持つスーパースポーツを、カウルレスのネイキッド仕様にしたモデルのこと。
アップライトなポジションや扱いやすいエンジン特性などにより、主にストリートを俊敏に走ることを目的に作られたバイクで、近年、欧米はもちろん、バイク需要が拡大中の東南アジアやインドなどでも人気のスタイルです。
125Sの大きな特徴は、前述の通り、原付二種としてはトップクラスの大柄な車体を持つこと。なお、車体サイズは全長2030mm×全幅780mm×全高1070mmです。
原付二種のストリートファイターでは、たとえばホンダの「グロム」などが人気ですが、グロムの車体サイズは全長1760mm×全幅720mm×全高1015mm。全体的に125Sの方が大きく、どちらかといえば250ccクラスに近いサイズ感だといえるでしょう。
なお、ベネリには従来から「TNT125」という、同じく原付二種ストリートファイターがありますが、こちらの車体サイズは全長1770mm×全幅760mm×全高1025mm。どちらかといえば、グロムに近いサイズです。
また、125SとTNT125は、どちらも125cc・SOHC単気筒エンジンを搭載しますが、最高出力はTNT125の8.2kW(11.1ps)/9500rpmに対し、125Sは9.4kW(12.8ps)/9500rpm。車体のサイズアップに対し、若干のパワーアップを図っています。
●上体の自由度が高いポジション
125Sのスタイルは、デイランニングライトがアイコンとなっているLEDヘッドライトにより、シャープかつ獰猛なフェイスデザインを演出します。
また、燃料タンクやリヤシートが高くなった前後シートの形状は、スーパースポーツを彷彿とさせるデザインで、全体的にスポーティかつシャープなイメージに貢献しています。
乗車してみると、アップライトなバーハンドルなどにより、上体の自由度がかなり高く、リラックスしてライディングできる感じ。ステップ位置も、スーパースポーツのような後方にあるタイプではなく、どちらかといえばオフロードバイクに近いイメージですね。
足の曲がり具合が窮屈にならないため、長距離走行でも疲れにくいことが伺えます。
また、足着き性も良好で、身長165cm・体重59kgの筆者の場合、片足でもカカトまでピッタリと着きます。シート高は800mmで、761mmのグロムなどと比べると高めですが、前方が絞られているシート形状により、足をスッと下に出しやすく、信号待ちなどの停車時でもバランスを崩すことなどはほぼないと思われます。
●単気筒ながら意外に回るエンジン
エンジンを始動させ発進。6速ミッションを1速に落とし、アクセルを開けながらクラッチをミートすると、スルスルとスムーズに加速します。
ただし、125ccという小排気量のためか、単気筒のわりには低回転域のトルク感はあまりありません。一方、アクセルをひねり、回転を上げていくと意外によく回るエンジンであることが分かります。
4000rpmあたりからトルク感も増し、最高出力が出る9500rpmあたりまでグーンとストレスなく加速していく感じです。しかも、出力の出方がとてもスムーズで、扱いやすさも抜群。エンジンの中・高回転域を使うと、キビキビと軽快に走れてとても楽しいですね。
●スリムな車体は切り返しも軽快
コーナーでは、進入に備えて減速すると、倒立タイプのフロントサスペンションが沈み込みの初期からよく動き、荷重の移動もスムーズ。しかも、奧でしっかり踏んばるため、コーナリング中の安定感は高いですね。
車体がスリムですから、S字コーナーなどの切り返しでも、かなり軽快です。コーナーでは、上体を内側に入れるリーンインや、腰までイン側に落とすハングアウトなどの乗車姿勢でもいいですが、アップライトなハンドルを活かし、上体をコーナー外側に出しイン側の足を出すリーンアウトで乗るのも楽しいバイクですね。
つまり、オフロードバイクにロードタイヤを履かせたモタード風のライディングスタイルですね。特に、試乗時はあいにくの雨。路面が滑りやすかったこともあり、精神的にも足を出すリーンアウトの方が、タイヤが滑ったときに対処しやすい感じがして、個人的には安心して乗れました。
フロントに260mm径の油圧ディスク、リヤには220mm径の油圧ディスクを装備したブレーキは、レバーの入力に対しリニアに制動力が発揮され、コントロール性も良好です。
また、ハードブレーキング時は、リヤシートが段差になっているため、お尻をしっかり押しつけて減速Gに対し踏んばることができるのも好印象。
加えて、フロント100/80-17、リヤ130/70R17の前後タイヤもグリップ感が高く、雨の路面でもヒヤリとするシーンはまったくありませんでした。
●250cc並みのビッグな車体は安全性も高い!?
原付二種ながら大柄な車体を持つものの、車両重量も147kgと軽く、駐車場などでの取り回しも楽。また、実際に乗ってみると、軽快な走りでパワー不足も感じないため、街中で十分に交通の流れに乗れることを実感しました。
逆に、250cc並みのビッグな車体は、ほかの一般的な原付二種ストリートファイターと比べ、四輪ドライバーが発見しやすく、安全性も高いことが伺えます。
さらに、燃料タンク容量は10.0Lを確保。グロムの6.0Lなどと比べると、容量が大きく、WMTCモード値で45.5km/Lという高い燃費性能(数値上の航続距離455km)と相まって、ツーリングでもガソリン補給の回数が少なく済みそうなことも魅力です。
ちなみに、価格(税込)は、ホワイト、ブラック、レッドの車体色が39万4900円、グリーンの特別色が40万400円。現在注文受付中で、2022年6月頃の出荷予定です。
(文:平塚直樹/写真:小林和久)