機能美とスタイリッシュさの融合にチャレンジ。新型レクサス「LX」の唯一無二なデザインとは?【特別インタビュー】

■ランクル+「Dignified Sophistication」=LX

LX・メイン
ランドクルーザーの機能美とは異なるテイストを追求したボディ

納車まで数年待ちというトヨタの「ランドクルーザー」と多くを共用する「レクサスLX」ですが、レクサスの次世代デザインの第2弾である新型の特徴はどこにあるのか。エクステリアデザインを担当した奥江氏に話を聞きました。

── はじめに、今回のデザインキーワードを「Dignified Sophistication(威厳のある、洗練された)」とした意図から教えてください。

4代目となる新型は14年ぶりのモデルチェンジです。そうした長い歴史を持つ本格オフローダーとして、歴代の威厳あるDNAに新しい価値観を与えたかった。とくに先代のデザインは完成度が高く、かなり意識しつつリスペクトしています。そこに、「いま」のモダンさを加えることで洗練さを打ち出そうと考えました

── ランドクルーザーとはドアパネルなどを共用しますが、デザイン開発も同時に行われたのですか?

商品企画としてはほぼ同時ですが、デザイン開発は半年ほど遅れて開始しました。実は、私はランドクルーザーのチーフデザイナーも兼ねていましたので、両車間での調整はスムーズにできたと思います。たとえば、従来はランドクルーザーの機能美とLXのラグジュアリー感がうまく一致できていなかったのですが、新型ではその点で両立できたと考えています。

── 特徴的なフロントグリルですが、なぜ「フローティング」という表現をしたのですか?

デザインを進めている中で行き着いたというのが正直なところです。スピンドルグリルとして新型は2代目となるのですが、常にチャレンジするレクサスとしてはより進化しなくてはいけません。では、レクサスの4WDとしての記号性は?と考えたとき、ボディと一体化するシームレスな表現にしたいと。その点、先代は若干取って付けた感がありましたので。

LX・グリル
次世代のレクサスデザインとして枠を取り払ったグリル

── レクサスの次世代デザイン第1弾の「NX」にはブラックの「枠」が残されていましたが、フローティンググリルはあくまでLXだけの特徴なのでしょうか?

スピンドルグリルはボディの一部であるという考え方は同じですが、NXとは手法が違います。思想だけでなく、実際に枠をなくしたらどうなるかというチャレンジですね。前提として、新型はエンジンの高出力化でクーリング性能の向上が必須であり、フロントをほとんど「穴」にしなくてはいけない。これはデザイナー泣かせで、細かな造作も厳しい。そこで、これ以上シンプルな表現はないだろうというところに行き着いたワケです。

── 機能性も追求したフローティング表現ですが、一方で、このグリルばかりに話題が集中してしまうことについてどう思われますか?

実は、グリルがこんなに話題になるとは思っていなかったんです(笑)。ただ、決してアクを強めるのではでなく、新しさを打ち出したということで、基本的にはポジティブに受け止めています。ランドクルーザーがベースですが、しっかりLXとして認識されるのは嬉しいですからね。

LX・サイド
ランドクルーザーと異なるシルエットを求めたサイドビュー

── ボンネットは、ランドクルーザーに準じて視界確保のためにセンターを凹ませた形状としましたね。

はい。本格オフローダーとして両車に違いはありませんので。ただ、LXは成型の難しいアルミ製なので、強いRは気を抜くとダレてしまう。今回は通常の板金でも難しいほどのシャープなラインとしていますので、アルミの限界にチャレンジしたとは言えますね。

── ボディ後半の特徴は、リアクオーターの絞り込みとサイドウインドウのキックアップですが、その意図はどこにありますか?

開発当初から、ランドクルーザーとはシルエットを変えたいと考えていました。四角いイメージのランドクルーザーに対し、リアをラウンディッシュに絞り込み、凹凸のないフラッシュサーフェス感を出す。それによって全体のカタマリ感を出したかったワケです。サイドウインドウのキックアップはレクサスの記号性を意識した形状ですね。

LX・リアクオーター
リアの絞り込みによってカタマリ感を打ち出した

── リアウインドウを寝かせたのもその一環でしょうか?

そうです。先代はランドクルーザーとほぼ同じ角度でしたが、よりスタイリッシュにしたかった。ランドクルーザーはタイヤをしっかり見せるためにキャビンを立てていますが、LXはキャビンを倒すことで凝縮感を狙いました。

── 最近のレクサス車のリアランプは横一文字の表現が多いですが、今回はボリューム感を持たせましたね。

はい。繰り返しますが、本格4WDのオフローダーとして視認性、つまり機能性を確保しました。その点、最近の流行には逆行しているかもしれませんが、レクサスのロゴを置いた台形パネルをはじめ、あくまでもレクサスのシグネチャを大切にしています。

LX・リア
ボリューム感のリアランプとレクサスのロゴを配したリアパネル

── 最後に。LXはレクサスの次世代デザイン第2弾ですが、たとえばランドローバーの「ディフェンダー」のように、より劇的な進化、モダン化は検討されたのでしょうか?

いえ、今回はとくに他車は意識しませんでした。EVが注目されるいま、時代的には逆風が吹いているとも言える貴重な存在ですから、あくまでも歴代をヘリテッジした唯一無二のクルマとして進化させました。それに、モノコック構造の他車に対し、フレーム構造のLXは競合車とは言えません。ただ、レクサスデザイン自体は進化を続けますから、今後は大きな進化はあり得ると思います。

── そういう意味で、次世代デザイン第2弾のLXはレクサスの多様性を示したと言えそうですね。本日はありがとうございました。

【語る人】
トヨタ自動車研究開発センター(中国)有限会社(TMEC)
上海デザインセンター 室長
奥江 正樹氏
LX・デザイナー

(インタビュー:すぎもと たかよし

この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。