復活するラリーアート、アウトランダーPHEVに「ランエボ後継」のスポーツグレードを用意!?【週刊クルマのミライ】

■オートサロンで披露されたコンセプトカーはアウトランダーPHEVのオンロードバージョン

2021年5月の決算発表において、三菱自動車が同社のワークスチューンブランド「RALLIART(ラリーアート)」を再始動させるという発表をしてから半年余り。予想通り、東京オートサロン2022において、ラリーアートの未来を示すコンセプトカーが展示されていました。

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サイドデカールは砂漠を疾走するイメージ。ラリーレイドで活躍したパジェロへのリスペクトだ

それが「ビジョン・ラリーアート・コンセプト」です。

発売されたばかりのアウトランダーPHEVをベースに、グロスブラックとマットブラックで凄味を増したアピアランスチューンを施されたビジョン・ラリーアート・コンセプトは、名前にコンセプトが含まれているものの、夢のコンセプトカーというよりは、オートサロンというステージにマッチした現実的なカスタマイズといえます。言い方を変えるとリアリティがあるカスタマイズといえます。

具体的にビジョン・ラリーアート・コンセプトにおいて、変わっているのは前後バンパー、オーバーフェンダー、サイドパネルといったところで、これらは後付けも可能でしょう。

さすがに大型ブレーキキャリパーといった不可能ではないけれど量産では難しいだろうなというチューニング内容もありますが、このコンセプトカーの先にスポーツバージョンの量産化を睨んでいるであろうと思える部分が多々あったのも事実です。

新型アウトランダーを宣伝するために作ったカスタマイズ仕様というよりは、ラリーアート・バージョン的なグレード展開の可能性を感じさせるものだといえるのではないでしょうか。

●ワイドボディに大径タイヤ、オーソドックスな進化

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大迫力のタイヤは285/40R22サイズのアドバンスポーツV107

ポイントのひとつが、オーバーフェンダーに収まる大径タイヤでしょう。

ノーマルのアウトランダーPHEVは255/45R20という大きなタイヤを標準装備していますが、ビジョン・ラリーアート・コンセプトは285/40ZR22というさらに大径のタイヤを与えられています。その銘柄がヨコハマのアドバンスポーツV107だったのも、オンロードを重視したチューニングがなされていることを示しているといえるでしょう。

サスペンションについては、どのようなカスタマイズを受けているのか詳細発表はありませんでしたが、これだけの太いスポーツタイヤを履きこなすためにはノーマルのままでは力不足でしょうから、何らかの方法で引き締められていることは確実です。

アドバンスポーツのグリップを活かす方向でセッティングされているとすれば、やはりオンロードを意識した味つけになっていると考えられます。

●オンロード風味はランエボ後継の匂いがする

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リヤのディフューザー的造形は高速域での優れた空力性能を感じさせる

さらにボディをよく眺めていくと、リヤには大きなディフューザーが備わっているのが確認できます。

いまや高速化しているラリーレイドでも空力性能は重要なのですが、ここまでエアロダイナミクスへこだわっている様は「ランサーエボリューション」の最終進化形が示したサーキットでの走り、舗装路でのパフォーマンスを連想させます。

たしかに、アウトランダーには三菱自動車の伝統的SUVモデルである「パジェロ」の後継という要素も必要ですが、三菱自動車が進化させてきた電動4WDの可能性はオフロードでもオンロードでも活きてくるはずです。

もちろん理想をいえばランサーエボリューションの後継となるスポーツモデルを開発すればいいのかもしれませんが、三菱自動車のリソースを考えると現実的ではありません。

アウトランダーPHEVという素材を使って、ランサーエボリューションの後継と呼ぶにふさわしいスポーツグレードを用意するというのは、ある意味でリアリティが感じられるのです。

●個人的には東京オートサロン2022のベストモデル

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2022年からワークスチューンのRALLIART(ラリーアート)ブランドを復活させる

ビジョン・ラリーアート・コンセプトは、ブランドイメージを高めるだけのショーモデルには思えません。

このコンセプトカーは、アウトランダーPHEVの2モーター4WDパワートレインにハイグリップタイヤを活かす制御も可能ということを示すものであり、量産につながる技術を感じさせます。

ベースとなったアウトランダーPHEVには、ノーマル/エコ/パワー/ターマック/グラベル/スノー/マッドという7つのドライブモードが用意され、ドライバーの選択に合わせて最適なパワー特性、駆動制御を行なうという機能が備わっています。

駆動力コントロールとブレーキ制御によって思いのままに走ることを可能とする『S-AWC(車両運動統合制御システム)』は、ランサーエボリューションにも採用されていた、三菱自動車が長年温めてきたテクノロジーです。

今回はインテリアについては公開されていませんが、もしかするとビジョン・ラリーアート・コンセプトのS-AWCには、「ラリーアート」モードのような特別なドライブモードが用意されているのかもしれません。SUVであることを忘れるような俊敏な動きを実現していれば、それは確実に商品力を高めるはずです。そんな妄想が膨らむのは自分だけでしょうか。

是非とも量産バージョンに乗ってみたい、そんな風に思えるビジョン・ラリーアート・コンセプトは、2022年の東京オートサロンにおいてもっとも印象的で記憶に残る一台でした。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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