普段右ハンドルしか乗らない運転者が左ハンドルのアメ車に乗ってみた!最新キャデラックXT4試乗その2/ADAS安全デバイス編【新型車ねちねちチェック第7弾】

■最新型アメ車の安全デバイスを試す

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いまロックオンしているのはハイエース!

キャデラックXT4の試乗記第2回目は、安全デバイスの実践です。

自動ブレーキや先行車追従型クルーズコントロール、センサーやカメラで周囲環境を捉える技術はいまや必須で、装備のない新型車を探すほうがムリ(自動ブレーキは2021年11月以降にフルモデルチェンジを予定する新車に装備の義務)という時代です。

このXT4もその例に漏れず、私たちに「寄り添う、革新的な安全技術(XT4カタログより)」が山ほど搭載されています。

今回はそれらをご紹介しましょう。

●XT4の最新安全技術は12点

XT4に搭載されている、安全に関するデバイスは以下のとおり。

全12点あり、中には見慣れない名称のものもありますが、たまたま国産車で使われていない言葉が使われているだけで、多くは国産車でも起用されているものです。

1.フロント歩行者対応ブレーキ+リアペデストリアンティテクションアラート
カメラで車両前後の道路状況を把握。歩行者を発見するとドライバーに警告し、必要に応じてブレーキも加え、前方との衝突回避&被害軽減を図る。

2.レインセンスワイパー
降雨を検知したらワイパーを自ら動かし、雨量に応じてワイパー速度を調整する。

3.フォワードコリジョンアラート
前方の交通状況をモニターし、衝突の危険性を感知すると警告を発する。この中のフォワードディスタンスインジケーターは、先行車との車間距離を算出して、DIC(ドライバーインフォメーションセンター)に秒数で表示。

4.アダプティブクルーズコントロール
前方レーダーを駆使して先行車を継続的にモニタリング、必要に応じて加速・減速・完全停止を自動で行う。

5.セーフティアラートドライバーシート
センサーが危険を感知すると、シートクッションの左右に内蔵したバイブレーターを振動させてドライバーに警告する。状況に応じてシート左右それぞれ、または両方同時に振動させるので、危険が迫る方向を感覚的に認識させられる。キャデラックの特許。

6.リアクロストラフィックアラート
駐車スペースからバックで出るさい、後方を横切るクルマの存在をレーダーで検知してDICおよびセーフティアラートドライバーシートにて警告を行う。

7.レーンキープアシスト
ドライバーがウインカーを出さずに走行レーンから逸脱しそうになったとき、ハンドルをゆるやかにコントロールして元の車線内に収束させる。

8.サイドブラインドゾーンアラート
車線変更時、ドライバー死角、特に斜め後方の死角エリアへの他車の存在または急接近車両を検知すると、検知した側のドアミラーに警告アイコンランプを点灯させる。ドライバーが気づかずにウインカーを出した場合、ランプを点滅させて注意を促す。

9.エマージェンシーブレーキシステム
一定速度で走行中、前進でも後退でも車両前後の障害物との衝突危険性を感知したら自動でブレーキをかけ、衝突の回避を図る。

10.新世代サラウンドビジョン
低速での前後退時、自車とその周囲360度の様子を、真上から映しているかの映像でモニターに表示する。

11.リアビューカメラ
高解像度リアビューカメラで、自動的に車両後方の映像をモニターに表示する。

12.オートマチックパーキングアシスト
駐車可能なスペースをスキャンし、自動で適切なステアリング操作で駐車してくれる機能。ドライバーはシフト操作のみを行えばよく、縦列駐車ばかりか並列駐車にも対応してくれる。

名称を見ただけで内容がわかりそうなもの、そうでないもの、様々です。運転席に座り、経験的にスイッチを見れば使い方がわかるものもあれば、勝手に作動したのを見て初めて存在を知ったものと2つに大別されます。そしてこれら12点は、エンジンをかけて走っている間は、個別ばらばらに働いているのではなく、12人が相互乗り入れしながらドライバーを見守っている…そんな印象を抱きました。

12もの安全デバイス数を持つXT4ですが、しょせん借りたクルマでは試すことのできる項目数は限られ、今回実践することができたのは、

4.アダプティブクルーズコントロール
7.レーンキープアシスト
8.サイドブラインドゾーンアラート
10.新世代アラウンドビジョン
11.リアビューカメラ

の5つでした。

●実践編1.アダプティブクルーズコントロール

アダプティブクルーズコントロール(以下ACC)は、もはやいまのクルマではあたり前になりました。90年代にはオプション価格およそ35万ほどしたものですが、いまや軽自動車にまで搭載されている時代です。それだけに車両価格も上がりますが、このシステムの有無は、今後、中古車市場への下取り査定価格に影響をおよぼすことは間違いないでしょう。

XT4のACCは、車速ゼロから高速域までをコントロールするというタイプ。車速が数十km/hにまで下がると「あとはドライバーがんばれ」というクルマがありますが、どうせACC付車を買うなら全車速追従型がほしいところです。

カタログ表記を借りると、XT4のACCは「前方レーダーを駆使して先行車を継続的にモニターし、必要に応じて加速・減速・完全停止を自動で行います。設定した車間距離を維持するので、ロングドライブや渋滞でドライバーの負担を軽減(以下略)」するというものです。

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ACC操作に必要なスイッチ。中央のシーソースイッチがつかいやすい

スイッチはハンドルの左スポークに設けられており、写真のような並びとなっています。

メーンスイッチを押すとこのマークのランプがメーター内に白く点灯、待機状態となります。左の「×」付きマークのスイッチは、設定速度を記憶した状態での一時キャンセル、ホーンボタン寄りにある2つのスイッチのうちの下側は、先行車との距離を「長」「中」「短」の設定ボタンです。

「SETー」「RES+」ボタンはシーソー式で、「SET-」のチョン押しで車速設定、その後のチョンチョン押しで1km/h刻みで下がる、「RES+」はチョン押しで記憶速度呼び出し(=キャンセルから復帰)、連続チョンチョン押しで1km/hごとに上がる…ここまでは普通なのですが、このシーソー式でいいなと思ったのが、押した感触が、内部にクリックのある2段構えになっていたことです。「SET-」「RES+」とも、クリック越えで押すと、「SET-」「RES+」ともども、5km/h刻みで上がったり下がったりし、国産車の多くのように、長押しで行き過ぎたりすることのない操作ロジックなのは気に入りました。ずいぶん細かいことをいうようですが、オーナーにしてみればクルマを手放すまで付き合う部分であり、「これいいね」と思うひとは多いんじゃないかな。

ACCは昼間の首都高、夜の高速道路で使いましたが、あらゆるシーンでまったく違和感のない働きをしてくれました。先行車がいないときは設定速度で淡々と走り、先行車をキャッチするや、そのクルマの車速とこちらの車間距離設定に応じてディスタンスを保持して走行。先行車が隣車線へに移行すれば当初の設定速度まで加速し、逆に流入されたりすれば減速ブレーキング。

車間距離が中間か短めのときのブレーキだけ、やや唐突に感じたことが1回だけありましたが、それ以外の場では、ベテランドライバー並みの挙動で走る・止まるを演じてくれます。運転操作が得意でないひとが我流で操作を行うよりも、いっそクルマ任せにしたほうが、ドライバーはもとより、同乗者にもヒヤッとさせない運転ができるといっていいでしょう。クルマのほうがうまい運転をしてくれるなら、長期的に見たとき、クルマ各部への負担が軽くなるだろうから、案外ACCはクルマの長寿命化に貢献するのではないかというヘンな推測も思い浮かびました。

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いよいよノロノロ渋滞に。このようなときにACCは便利だ。この便利さを知ってしまうと、ACCのないクルマには乗る気にならなくなるだろう

今回はたまたま、首都高の渋滞エリアに出くわしましたが、ノロノロ渋滞は、「動いては止まる」「止まっては動く」の繰り返しというほど単純なものではなく、「止まるかと思ったら加速」「止まりそうになったらまた進む…のかと思ったらやっぱり止まるのね」という予測の困難さも加味されるわけですが、どの状態であってもカメラは先行車の絶妙な動き、距離の長短をよく捉え、自車をよくコントロールしてくれました。

そういった先行車の動きを、これまで人間は何でもなく簡単に掴んできましたが、これを電子デバイスにできるようになったとは、長年かけての制御ユニットの処理能力向上ぶりを実感させられます。

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XT4のACC作動中のメーター表示

ACC作動中のメーター表示は見やすい部類です。速度が設定されるとACCの待機を示していた白から緑に変化。速度は指針式とは別に、中央にも数字でも示されるのですが、その速度数字とは明確なサイズ差で設定速度が示されます。このふたつ、相互のサイズ差を同じ比率のまま、全体を大きくしてもいいと思いますが、そもそもメーター盤が大きいため、表示にせせこましさがないのはいいことです。

●実践編2.レーンキープアシスト(LKA)

これもカタログの文句を引っ張り出しましょう。

「ドライバーがウインカーを出さずに走行車線を逸脱しそうになると、ステアリングをゆるやかに制御して本来の車線内に戻します。また、レーンディパーチャーウォーニングは、走行車線からの逸脱を検知すると、DIC(ドライバーインドーフォメーションセンター)に警告を表示するとともに、セーフティアラートドライバーシートを振動させます」

やってみました、LKA!

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LKA作動時のメーター表示

システムの作動は60~180km/hの範囲で、主に高速道路での使用を想定したものでしょう。スイッチは、計器盤センターの下の、ハザードスイッチ右にあります。押すとランプが点灯するとともに、メーターにもマークが表示され、準備中が白、準備が完了すると緑に変化します。

高速走行中にクルマが白線を認識しているとき、意図的に白線ラインに寄ってみたら、クルマのほうが「おーとっとっ」という具合にハンドル操作をし、元のレーン内にクルマを収めようとします。これが線をまたぎ気味になるとメーターのマークをオレンジ色に変えて点滅、逸脱した場合は警告音が3回、運転席シートが3回振動するという仕掛けになっています。

取扱説明書には「…このLKAは継続的に車両を操舵するものではありません」とあります。しかし、XT4は先のカーブまでじっと把握しているフシがあり、高速走行中、あえて手を離し気味にして(ハンドルから手を浮かせた)試してみたのですが、ゆるーいカーブでもきちんと追従している(ように見えた)ようで、車線に近づくことはありませんでした。ハンドルは動いているはずなのですが、見る目にはほとんどわからず、極めて絶妙な修正舵を与えているのでしょう。その様は何だか「1歩身を引いて夫を後ろから支える控えめな妻」のようなつつましさ、控えめさで、あくまでも裏方に徹する安全デバイスという印象です。

それにしても最近、数々の試乗車で「レーンキープ」を試すたびに思うのですが、「車線を認識して自車をレーン内に収束させる」という、昔では考えられなかったデバイスの普及タイミングと、不況、お給料が上がらない、財源不足という時勢がピタリと同じ時代で一致し、その財源不足のせい?で路面の白線がかすれっぱなしで補修がされていない道が多いのは皮肉なことです。気のせいではないと思うのですが、少なくとも筆者がよく走る都内や群馬県の道ではそのように感じます。まずは白線(黄線)ありきで機能するレーンキープなのに。これを読んでくださっているあなたの生活道路はどうですか?

●実践編3.サイドブラインドゾーンアラート

自車斜め後方からの接近車両を検知し、右左検知した側のドアミラー内のランプを点灯させてドライバーに注意を促す機能です。

そしてワイドボディの左ハンドル車というXT4にまだ慣れていない借り始めの時点では、ずいぶん助けられました。

いまのクルマはピラーが太いと第1回で書きましたが、この斜め後方からの接近物を知らせる機能も、これから必須になるのかも知れません。太いリヤピラーは斜め後方視界を阻害するからです。

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ドアミラー内の警告ランプは極めて明るく、目に入りやすい

高速路などで中央レーンを走っているとき、左右どちらかのレーン後方からの車両が自分を追い抜いていくときはドアミラー内ランプが点灯、警告はしません(逆に路肩に停まっているクルマの横をすりぬけるときも点灯する。)。この接近車両に気づかず、車線変更をしようとウインカーを点灯させると、衝突回避のために警告してドアミラー内ランプが点滅します。

何とかならないかなと思ったのは、このクルマの車幅が1870mmであることの成り行きで助手席側(右側)ドアミラーもかなり遠い位置にあるため、助手席側ランプは点灯してもほとんど目に入らないことでした。ドライバーサイドは当然筆者の近くにあるため、正面を向いていても視界のどこかにランプ光が入り込んでくるのですが、そもそもランプが鏡面のより外側にあるため、助手席側は入ってこない…う~ん、意外と解決方法は難しいかな。

なお、取扱説明書には、「(斜め後方の)死角内を走行している車両との…」と書いてありますが、左折時、自車の左後方の車道側から近づいてきた自転車にも反応して警告してくれたことを申し添えておきます。この点についてちょっといいたいことが出て活きたので、詳細は第5回で…

●ACC、レーンキープデバイス使用で心がけるべきこと

さて、フィットの試乗時にも書きましたが、ACCやレーンキープシステムの使用中、両足をあらぬところに置いたりハンドルから手放しするのは禁物で、クルマを過信せず、クルマが意に反した動きをしてしまったときのため、常に右足はブレーキペダルに備え、両手も相変わらずハンドルを握るのが原則です。もっとも、通常の神経の持ち主なら両足を床につけることに違和感を覚え、右足をいつでもペダルを踏めるようスタンバイすることでしょう。確実に作動する完全自動運転の時代になれば、またいくらか緩和される可能性がありますが、それまでは引き続き、従来どおりの運転スタンスでいるべきです。

XT4の安全デバイスのうち、5つを試したと書きましたが、今回はここまで。「10.新世代サラウンドビジョン」「11.リアビューカメラ」の2つは別の回にまわします。

(文・写真:山口 尚志

【試乗車主要諸元】
■キャデラック XT4 プラチナム(左ハンドル・7BA-E2UL型・2021(令和3)年型・9AT・ステラーブラックメタリック)
●全長×全幅×全高:4605×1875×1625mm ●ホイールベース:2775mm ●トレッド 前/後:1600/1600mm ●最低地上高:-mm ●車両重量:1780kg ●乗車定員:5名 ●最小回転半径:-m ●タイヤサイズ:245/45R20 ●エンジン:LSY型(水冷直列4気筒) ●総排気量:1997cc ●圧縮比:- ●最高出力:230ps/5000rpm ●最大トルク:35.6kgm/1500-4000rpm ●燃料供給装置:電子制御燃料噴射(筒内直接噴射) ●燃料タンク容量:61L(無鉛プレミアム) ●WLTC燃料消費率(総合モード/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):-/-/-/-km/L ●JC08燃料消費率:-km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソン式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/ディスク ●車両本体価格:670万円(消費税込み)