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■5ナンバーサイズのボディにセルシオの世界を
80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第24回は、5ナンバーサイズにセルシオ並みの走りと装備を盛り込んだ、新ミディアムセダン、トヨタ プログレに太鼓判です。
●クラスレスのイノベーティブセダン
21世紀を前に、従来のクルマ作りからの脱却を模索していたトヨタは、いわゆるヒエラルキーにとらわれないクラスレスな高級車を計画。1998年、「新世紀の高級車」を商品コンセプトに登場したのが「プログレ」です。
全長4500mmのミディアムサイズに、Lクラスに匹敵するロングホイールベースとビッグキャビンを実現。FRレイアウトを生かし、前後オーバーハングをギリギリまで短くまとめたボディは「新ミディアムフォルム」を名乗りました。
フロントは、白色ターンランプ一体のロービームと丸型ハイビームの組み合わせが個性的な顔を作り出します。メッキで囲まれたグリルは意外に小振りで、必要以上の押し出し感は控えめ。安定感のある大型バンパーには、上品なプロテクターを含め、成型や取り付け精度など作りのよさが光ります。
サイドでは、実に素直な形状のキャビンがこのクルマの落ち着き感を演出します。前後長だけでなく、ガラス面を立てたパッケージが居住性の高さを表現。サイドウインドウはメッキモールで囲まれていますが、その細さが品のよさを醸し出します。
ボディに目立ったキャラクターラインは引かれず、奇をてらわない大きく素直な面と、バンパーに準じた品のいいプロテクターだけで質感を確保。また、ホイールデザインも派手さは追わず、ここでも端正で品のよさを表現しています。
リアビューでは、高級車らしい縦型の台形ランプと、同じく縦長のクリアなバックランプの組み合わせが個性的。サイド同様メッキモールを配したリアガラスを含め、きわめてシンプルで余計なノイズは一切見当たりません。
●新しいカテゴリーを作りたい
「心地よく落ち着きのある空間」を目指したインテリアは、セルシオ並みの質感の高さが自慢。本革はもちろん、一部グレードには本木目が奢られ、先進的なオプティトロンメーターとアナログ時計という対照的な組み合わせも見所です。
90年代末のトヨタは、初代ヴィッツや「ニュー・センチュリー・バリュー」を掲げた9代目カローラなど、きわめて先進的で合理的なクルマ作りを目指しました。その際、高級車市場で安定した販売を続ける、メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズを意識したのも自然な流れだったのでしょう。
だから、プログレにNC=「ネオ・カテゴリー」というグレード名を付けたこともよく理解できます。一般的には地味なデザインの代表として扱われることが多いプログレですが、逆に言えば、妙な小手先で勝負しなかったことは評価されるべきではないでしょうか?
■主要諸元 NC250(4AT)
形式 GF-JCG10
全長 4500mm×全幅1700mm×全高1435mm
ホイールベース 2780mm
車両重量 1460kg
エンジン 2491cc 直列6気筒DOHC24バルブ
出力 200ps/6000rpm 25.5kg-m/4000rpm
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