タイヤのあの模様はなに?地面と接するゴム面に溝が彫られているワケは?

■タイヤに溝が彫られている理由と役割とは?

「タイヤの溝(ミゾ)が無くなってきたから、タイヤ交換をしなきゃ」という話はクルマを運転する人なら多くの人が聞いたことがあるはず。溝がないと危ないという話はよく聞きますが、タイヤの溝がないとどうなってしまうのでしょうか? タイヤの溝が果たしている役割とともに紹介していきます。

●タイヤの溝が果たしている役割は主に4つ

ologic ブリヂストン
ologic ブリヂストン

トレッドと呼ばれるタイヤの表面に刻まれた溝。この溝はパターンと呼ばれています。このパターンが性能的な部分で果たしている役割は大きく分けて以下の4つ

・タイヤと路面の間の水を除去する(排水性の向上
・タイヤの駆動力・制動力を確保する。
・操縦安定性・放熱性を向上する。
・美しいデザインにより、商品としての魅力が高まる。

それではそれぞれの性能的役割を詳しく見ていきましょう。

ハイドロ試験
ハイドロ試験

・タイヤと路面の間の水を除去する
雨が降った場合などで路面に水が張った場合、タイヤと路面の間に水の膜が出来てしまいタイヤが浮いてしまうことがあります。このタイヤが浮いてしまう現象のことを「ハイドロプレーニング現象」というのですが、この現象を防ぐためにタイヤには溝が刻まれているのです。

もしも溝が無かったらこの排水能力が無くなり、タイヤが浮いてしまうため濡れた路面を走る場合は大変危険です。タイヤが浮いてしまうということはハンドルもブレーキも全く効かないということになってしまうのです。

氷上走行時のスタッドレスタイヤ
氷上走行時のスタッドレスタイヤ

・タイヤの駆動力・制動力を確保する
タイヤの溝は刻まれている向きの垂直方向に力を伝えます。縦方向に刻まれた溝であればクルマが曲がる時に、横方向に刻まれた溝ならクルマが進んだり(駆動力)止まったり(制動力)する時に力を伝えるのです。これは乾いた路面でもそうですが、特に雪道などでその効果を発揮します。

溝が刻まれていない部分が溝へ倒れこんだりすることにより、溝の角でエッジを効かせ、溝が刻まれた垂直方向に力を伝えているのです。

ちなみにレース用のスリックタイヤには溝は刻まれていませんが、スリックタイヤは普通のタイヤよりも柔らかいため、路面の細かな凹凸に合わせて変形してグリップ力を発生させます。しかし普通タイヤはそこまで柔らかくないため、溝の端の部分でひっかかりを作ることでグリップ力を発生させているのです。

・操縦安定性をもたらしタイヤの熱を放出させる
タイヤは走行によって内部材が変形し、熱が発生します。そんな熱を放出させる役割も溝が果たしているのです。

●タイヤの溝はこうして決まる

これまでは主に溝が果たしている役割をについて紹介してきました。それ以外にも、タイヤの溝には細かな特徴や違いがあるのです。

その中でも大きな要素として挙げられるのがパターンの種類。基本的に3種類に分けられていて、点対称のもの、方向性が決められているもの、非対称のものの3つです。それぞれにメリットとデメリットがあります。

点対称パターン
点対称パターン

・点対称パターン
点対称であるため、回転方向の指定がなく、左右どちらを外側にしても問題ありません。そのため前後左右の減り具合などを均一にするローテーション(入れ替え)が可能であるため経済的です。しかし、他のパターンに比べると特出した性能を引き出すのが難しくなります。

方向性パターン
方向性パターン

・方向性パターン
排水性や運動性に優れていて、スポーツ性の高いタイヤに多いタイプです。各種性能には優れていますが、左右のローテーションが出来ないため、経済的とは言えません。

非対称パターン
非対称パターン

・非対称パターン
排水性と運動性、それぞれの役割を内側と外側のパターンに役割分担させたものです。回転方向がないため前後左右のローテーションが可能で経済的でありながら、高い性能を実現することが可能です。デメリットとしては製造が難しいという点が挙げられます。

●パターンは均等に並んでない!

ブリヂストンスタッドレスパターン
ブリヂストンスタッドレスパターン

また、タイヤのパターンをよく見てみると、その間隔が微妙に不均等になっているのが分かるかと思います。これは騒音対策のためです。

均等に並んでいると車内に入ってくる騒音が大きく、快適性を損ないます。そのため、シミュレーションにより性能と騒音のバランスから最適とされた間隔でパターンが刻まれているのです。

●溝は多くの要素を考えて決められる

タイヤの溝であるパターンは、商品企画としてタイヤに求められる性能(スポーツ性能や快適性、経済性など)や、タイヤのキャラクターなど多くの要素を加味して決められます。コンピュータでのシミュレーションや、実際の試験などを通じて最適とされたものが採用されているのです。


今回の記事を思い出しながら改めてタイヤの溝を見てみると、新たな発見があって面白いかもしれません。

(取材協力・写真:ブリヂストン/文:西川 昇吾