ラリーウィーク、TGRラリーチャレンジ豊田でヤリスWRCデモランをドライブした勝田貴元選手にインタビュー

■セントラルラリー2021につながるラリーウィーク

ラリーの魅力を伝えるために、11月6日(土)から愛知県内で様々なイベントが開催されている「ラリーウィーク」。

そのエンディングは11月13日(土)、14日(日)に開催されるセントラルラリー2021で、2022年に開催が予定されているWRC世界ラリー選手権日本ラウンド「Rally Japan(ラリージャパン)」へとつながって行くこととなります。

TGRラリーチャレンジ第12戦 豊田
TGRラリーチャレンジ第12戦 豊田 会場の様子

そのラリーウィークのオープニングともいえる「TGRラリーチャレンジ第12戦 豊田」が11月7日に愛知県豊田市鞍ケ池公園を中心に開催されました。TGRラリーチャレンジはラリーの入門編ともいえる参加型ラリーシリーズで、5ドアのヤリスやアクア、ヴィッツ、86の4クラスで競われています。

鞍ケ池公園デモランの様子
鞍ケ池公園でのデモランの様子

そのTGRラリーチャレンジ第12戦 豊田の鞍ケ池公園内に設定されたスペシャルステージでは競技の合間にヤリスWRCのデモランも披露されました。

勝田貴元選手
勝田貴元選手

そのデモランをドライブしたのは、地元愛知県出身で現在WRC世界ラリー選手権で大活躍中の勝田貴元選手です。

●愛知県から世界に羽ばたいた勝田選手にインタビュー!

勝田選手は、TOYOTA GAZOO Racingがラリーで世界に挑戦する若手ドライバーを支援するプログラムで現在、WRC世界ラリー選手権を中心に世界で活躍中。その世界を舞台にした戦いの相棒がヤリスWRCとなります。

ヤリスWRC
ヤリスWRC

そんな勝田選手にデモランの感想やラリーのことなどをインタビューさせていただきました。

勝田貴元選手
勝田貴元選手

── ラリーチャレンジ豊田のヤリスWRCのデモランには、ものすごく多くの人が集まっていましたね。久しぶりに多くの観客の前で走った感想いかがでしたか?

勝田選手「2020年の東京オートサロンが、おそらく最後に日本のファン、メディアの前で走った日だったので、日本のファンの皆さんに走りを見ていただくのは1年半以上ぶりになります。そういった意味でも今日はすごくよかったです」

鞍ケ池公園デモランの様子
鞍ケ池公園でのデモランの様子

── 今日は本当に多くの観客が集まりました。勝田選手も日本でもラリーの人気、WRCの人気が高まってきていると感じていますか?

勝田選手「もう、年を追うたびにというか、毎年イベントがあるたびにラリーの人気が上がっていると感じています。ラリーチャレンジのようなラリーイベントを見に来られる方は、数字を見なくても入場者数がすごく増えているなって実感できるくらいです。本当にラリー人気がどんどん上がってきたと思います。今後、ラリーだけじゃなくてモータースポーツ全体がより盛り上がっていけばいいな、と思っています。そのために、まずは日本人が世界選手権やいろいろな舞台で活躍することが大事だと思います。ボクはラリーというカテゴリーで結果を残して、より盛り上げたいと思っています」

── WRCの参戦車両について教えてください。今日ドライブしたWRCのマシン・ヤリスWRCは、普通にちょっと転がすだけなら、一般の方でも運転できるようなクルマなのでしょうか?

勝田選手「ヤリスWRCは、もちろん4WDでパワーもあるんですが、ステージモード、いわゆるSSで使っているモードでないとき、一般の公道を走るときのモードの場合は、すごく簡単に乗れると思います。クラッチだけ焼結ツインプレート・クラッチなので、スタートだけ難しいかもしれません。走り出してしまえば結構簡単かなと思います」

── そうなんですね。エンジンは、市販車とは排気量は同じでも違うエンジンが載っています。競技車両のエンジンのフィーリングはどんな感じなんですか?

勝田選手「競技車両、今日ボクが乗ったヤリスWRCもそうです。エンジンパワーはものすごいので、なかなか市販車と比べるのも難しいのですが、まずひとつ大きな点でいうとヨンク(4WD)というところがあります。4輪駆動なのでボクが過去に乗っていたレース車両、フォーミュラカーとかF3とかの加速感よりも加速Gは倍か、それ以上にかかる感じがします」

ヤリスWRC
ヤリスWRC

── ということは、トルク特性とかレスポンスとかが市販車とは比較にならない…?

勝田選手「あー(笑)、はい。そうですね。そこはもう市販車とは比較できないくらいにはなっています」

── なるほど。次はヤリスWRCの外観についてです。空力パーツがかなり付いています。こういった空力パーツの効果はどんなシチュエーションで感じられるのですか?

勝田選手「たとえば、ですが…。高速ラリー、平均速度が100km/h以上のラリーは、乗っていて安定感がまったく違います。たとえばですけど、フロントのカナード、パナソニックさんのロゴが入っている部分ですね。ここがけっこうイン側にヒットしやすくて、たまに壊れちゃったりするんです。このカナードが片方壊れるだけで、マシンは真っ直ぐ走らなくなります。それくらい空力パーツが空気の力でマシンを地面におさえている力がものすごいので、フィンランドやエストニアのコースはすごくハイスピードなので、カナードがひとつ壊れるだけで結構ハンドリングにも影響しますし、挙動が不安定になります」

── それだけ効果抜群なんですね。

勝田選手「効果、大きいです」

勝田貴元選手
勝田貴元選手

── これからのご自身の課題について、教えて下さい。

勝田選手「ドライバーとしてはまだまだ足りない部分も非常に多いですね。自分のスキル、ペースノートやドライビングはもちろん、ラリーにはいろんな要素があります。それを全部ひっくるめて言うと「経験」という言葉になるのですが、まずは経験値をしっかり上げて、自分に足りない部分を見極めることが大事だと思っています。
今シーズン前半戦、非常に調子よくていい流れだったのですが、後半になってガラッと流れが変わって、非常に厳しいシーズンをいま送っています。でも、逆にその経験が今後糧になると実感していますし、いまかなり苦しい状況下ですけど、本当にこれを乗り越えれば、かなりいいところへいけるという手応えを感じています。そういった意味で自分の課題はたくさんあるのですが、まずひとつひとつ洗い出して向上していこうと思います」

── 勝田さんのお仕事は、ラリーマシンをより速くゴールまで運ぶということだと思うんですが、ヤリスWRCはドライブして楽しいクルマですか?

勝田選手「ああ、もう最高に楽しいクルマです! WRカーだけじゃなくて、ラリーって公道を使用した競技です。モータースポーツのなかでも公道を使った競技は多くありませんが、そんななかでボクはいま本当に地元・愛知県でこうやって走っています。
2年前のセントラルラリーもそうですが、10年くらい前に友だちと遊びに行くとき使っていた道を、ラリーカーで自分が走っているのは想像もできなかったですし、走っているときはすごく不思議な感覚で、とても感慨深かったというか…。そういう感覚がありました。
多分こういう感覚って、ボクだけじゃなくてたくさんの方が体験できるものだと思います。入門者向けのラリーチャレンジもそうですし、まだラリーやったことがない、でもやってみたいなという人に、どんどんラリーをやっていただければ、と思います。モータースポーツって間違いなく交通安全にも繋がっていくと思うので、本当に多くの方にラリーを知ってもらって参加してもらって、というふうに輪を拡げたいけたらな、と思っています」

勝田選手とモリゾウ選手こと豊田章男社長
勝田選手とモリゾウ選手ことトヨタ自動車 豊田章男社長

── ラリージャパンは2年連続でコロナ禍の影響で中止になってしまいました。来シーズンの2022年、ラリージャパンは地元での開催となります。WRCの魅力、こういうところを見て欲しい、というのを教えてください。

勝田選手「まずひとつ、ラリージャパンが来る前にお話したいのは、ラリーって選手とファンの人の距離感もものすごく近いのでぜひ、現地に見に来てほしいと思います。全開で走っている競技区間(SS)じゃなく、移動区間(リエゾン)をゆっくり走っている区間があって、そういった道でラリーカーに遭遇する場合もたくさんあるんですね。
たとえば高速道路で走行車線を走っているときに右側からラリーカーが追い越していくこともありますし、逆ももちろんあります。そういうときに日本だとなかなか馴染みがないと思うのですが、ラリーカーに手を振っていただけるど、ボクたちももちろん見ているので、そういうファンとの触れあいもあります。
迫力のある走りも魅力で、普段皆さんが使っている公道を閉鎖して、そこをものすごいスピードで、ものすごい音でラリーカーが走り抜けていく。これを現地でぜひ、生で見てほしいな、と思っています」

勝田選手も魅力として語る、公道を閉鎖してそこをものすごいスピードで、ものすごい音でラリーカーが走り抜けていく姿。この魅力を今週末11月13日(土)、14日(日)に開催されるセントラルラリー2021で、ぜひとも体験してみてください。

松永 和浩

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
続きを見る
閉じる