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■オンライン販売がスタンダードになればクルマの売り方が完全に変わる
国産ブランド初の新車のオンライン販売をホンダがはじめた
サービス名は「Honda ON(ホンダオン)」。ユーザーからすれば”オン”ラインで新車購入ができるという意味でオンを理解できますし、ホンダとその販売店(ホンダカーズ)からすると新規顧客のアド”オン”が期待できることを込めてのネーミングということです。
2021年10月4日からはじまったオンライン販売の対象となっているのは、ひとまずN-BOX、フィット、フリード、ヴェゼルという人気の4車種で、その買い方にしてもスマートフォンで注文しやすいようにオプション設定をナビゲーションやETC、フロアマットなどに厳選しています。
さらにいえば、オンライン販売といっても、じつはサブスクリプションのみで、実態としては期間5年のオープンエンドリースとなっています。
同じようなサブスクモデルにしても、リアル店舗であるホンダカーズで契約すると3年・5年・7年のプランが選べますから、やはりオンライン販売用に厳選した仕様となっているわけです。
また、ホンダオンは東京在住のユーザーに限定したものとしてサービスインしています。いきなり全国展開するのではなく、時間をかけて進めていくという方針となっています。
ただし、ホンダオンで注目したいのは、このままサブスク専用とするのではなく、数年後には買い切りでの新車販売も視野に入れているということです。そのため、すでに下取り車の査定サービスも実施していますし、任意保険については別途契約をするカタチにすることでユーザーが自分の等級を継承できるようにしています。
そして、ホンダオンの特徴は安心感を考慮している点です。面倒な対面での駆け引きなど不要でオンラインにて契約できるのはいいとして、クルマが自宅に届けられて「あとはご自由に」では多くのユーザーは困ってしまいます。ホンダオンの場合、納車は指定したホンダカーズで行なうため、コクピットドリルを受けることもできますし、また定期点検や修理などの窓口としてホンダカーズを利用できるのです。
限定車の販売が普及のフックになるかも?
ただし、今後新車の買い切り販売がはじまったときのテーマとなるのがフェアネスでしょう。オンライン販売はメーカー希望小売価格、リアル店舗では値引きがあるようではユーザーはアンフェアに感じてオンライン販売を利用しなくなるでしょう。
とくにホンダオンのメインターゲットはデジタルネイティブのZ世代ということですが、彼らはネットを利用した情報収集にも長けていますから、アンフェアな行為にはすぐに気付きます。逆にオンライン販売では最初から値引きを考慮した金額になっていたりすると販売現場からの反発は必至です。
いずれにしても、オンライン販売を拡大していくためには、オンラインとリアル店舗のいずれもで値引きそのものをやめたワンプライス販売を徹底する必要が出てくるはずです。
仮にワンプライス販売が徹底され、オンライン販売ですべての車種を扱い、自由な仕様が選べるとしたらどうでしょうか。
おそらく、リアル店舗で購入するというユーザーは減ってくるでしょう。車両価格は同一であってもリアル店舗よりオンライン販売のほうが手数料などの部分で差別化することで結果的にリーズナブルに新車が購入できるという状況になってくるでしょう。むしろ、そうならなければメーカー自身がオンラインストアを運営する意味はありません。
つまり、リアル店舗から営業スタッフがだんだんと減り、ホンダカーズは整備点検の窓口として整備スタッフが中心の組織に変わる未来が想像できるのです。
現時点ではホンダオンはホンダカーズと共に歩んでいくことを目指しているといいますが、オンラインで購入するユーザーが増えれば、自然とオンライン販売とリアル店舗での整備という風に役割分担が進んでいくでしょう。
また、オンライン販売のメリットはスピード感と前述したフェアネスにあります。シビックタイプRリミテッドエディションやNSXタイプSのような限定車については、一般ユーザーが情報を知ったときにはすでに予約が殺到しているということも珍しくないわけですが、すべてオンライン販売とすることで抽選になったとしてもフェアに感じるでしょう。
また、限定車の販売をすることでロイヤルカスタマーがホンダオンを積極的に利用しはじめるという相乗効果も期待できるのではないでしょうか。そうなったときに、はじめてホンダのオンライン販売についての評価をすべきなのかもしれません。