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■追い越し車線を走るクルマが低速すぎるとき走行車線から追い抜いてしまうのは違反ではない、と神奈川県警は言っている
●あおり運転は妨害運転が定義されるまでに社会問題化
あおり運転が社会問題となって久しく、道路交通法改正によって「妨害運転」が定義され、警察も積極的に取り締まれるようになっています。
ですが、いまだにSNS界隈ではあおり運転に関する報告や動画などを見かけることが多く、瞬間湯沸かし器のごとくカーッと頭に血が上ってしまいあおり行為を行なってしまうドライバーはいなくなってはいないようです。
そんなあおり行為のきっかけとして「高速道路の追い越し車線をずっと低速(定速)で走っているクルマが一向に減らない」という指摘もあります。
実際、追い越し行為が終わっても、そのまま追い越し車線(三車線ある場合はもっとも右側の車線)での走行を続けているクルマも多く、そうしたケースもSNSなどに投稿され物議をかもしたりしています。
なぜ、追い越し車線をずっと走る行為が問題になるかといえば、道路交通法で「前車を追い越す場合は、通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」と規定されているからです。
つまり、前車が一番右側の車線を走行していた場合、他の車両はその車を追い越すことができません。そのように迷惑をかけてしまうため追い越し車線を定速で走ることは、たとえ制限速度であっても「通行帯違反」となります。
●神奈川県警が追い越し車線のクルマの追い抜き方を指南
では、追い越し車線を低速で走るクルマがいるときに合法的に追い抜くことはできるのでしょうか。 結論をいえば、イエスです。東名高速をはじめ多くの自動車専用道路の走る神奈川県警がホームページにおいて、違反にならない追い抜き方を指南しています。
具体的には、以下のような例においては、ただちに違反には当たらないのだそうです。
高速道路の追い越し車線(第三通行帯)を走行中、進路前方を走行中の車両速度が、他の車両と比べ明らかに遅かったので、このまま追い越し車線を走行していても追い越せないので、左側車線(走行車線)に車線を変更した。しばらく同車線を走行しながら追い越し車線を走行中の車両の動静を観察したが、その車は速度も上げず、車線変更する様子もなかったので、そのまま第二通行帯を走行して追い抜いた。
この場合、ドライバーが左側に車線変更したのは、前車を追い越すことができないために走行車線に戻ったのであって、前車を追い越すためではありません。ですから追い越しではなく「追い抜き」となり、違反ではないのです。
ただし、追い抜きと判断されるポイントはしばらくの間走行車線を走ったうえで車線変更することなく第三通行帯を走行中の車両の前に出ているという部分です。追い越し車線で前走車に追いついて、すぐさま第二車線に移り、追い抜いた場合は、左側からの追い越しと判断され、違反になってしまいます。
このように、追い抜きまでにかかった時間や距離が短い場合により違反かどうかの判断は変わってきます。
また、インターチェンジやパーキングエリアなどから高速道路本線に合流したときに追い越し車線が渋滞していて、走行車線が流れているようであれば走行車線を走って追い越し車線を走るクルマの前に出たとしても追い抜きになりますから、違反とはいえません。車線を変えていないのであれば基本的には左側追い越し違反とは捉えられないからです。
法律を守るのは当然ですが、すべてのドライバーが自分本位な走り方をするのではなく、交通全体のスムースな流れを意識した運転をするようなれば、こうした問題は解決するはずです。そうした日がはやく訪れることを期待したいものです。
(山本 晋也)
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