●盗みにくそうだと認識させる物理的な対策が必要!
警察庁が2021年3月に発表した自動車盗難等の発生状況データによると、自動車盗難の認知件数は2003年の6万4423件をピークに減少傾向となり、2020年は5210件まで減少しています。これで、3年連続で1万件以下となり、2020年の検挙率は57.7%と年々上昇しています。
車両盗難の手口としてよく耳にするのが、“リレーアタック”でしょう。
リレーアタックは自宅にあるスマートキーから発信されている信号を受信し、それをブースターと呼ばれる危機で増幅することで、電波を強くし、クルマのコンピュータは「鍵をもった運転車が近くにいる」と判断。解錠されてエンジン始動を可能としてしまい、盗まれてしまうというものです。
最近では、このリレーアタックに変わる新たな盗難手口が横行しています。それが「CANインベーダー」です。
2021年8月にCANインベーダーによる自動車窃盗グループが摘発されました。この窃盗グループは195台のクルマを盗み、被害総額は約10億円にのぼっています。
CANインベーダーという車両盗難の手口は、スマートキーなどを使用しません。
クルマに搭載されているCPUのCAN信号の配線に不正接続して侵入。この制御システムを操作して、ドアロックの解除やエンジン始動を行うという「クルマのハッキング」といえる手口です。CAN信号に侵入することからCANインベーダーと名付けられました。
リレーアタックやCANインベーダーといった車両盗難の手口は素早く、目立たないように行われています。新たなCANインベーダーの車両盗難に有効な対策としてオートバックスでは「物理的な対策」を推奨しています。
商品としては、ハンドルやタイヤをロックすることで物理的にクルマを運転できなくする簡易セキュリティ商品です。
価格はハンドルロックが2000〜4000円、タイヤロックは1万4000円ぐらいで手に入れることができます。
CPUへのハッキングを行うCANインベーダーのような手口には、電子システムでの警報音や光などによるセキュリティよりもタイヤやハンドルロックのような物理的な対策のほうが有効で、オートバックスにおいては対前年比140%という売上となっています。
車両盗難の発生場所は一般住宅が最も多く36.8%。次いで駐車場が30.7%と自宅や駐車場に停めている時が最も狙われやすくなっています。
最近では、ドライブレコーダーで監視するユーザーも増えていますが、ハンドルロックやタイヤロックといった目で確認できる防御が、窃盗団に諦めさせる効果が高まります。
(文:萩原文博、写真:トヨタ自動車、オートバックスセブン)