ダイハツ YRVは走りのカイカンと格好よさのカイカンを融合【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第12回】

 ■ダイハツエントリーモデル、ほのぼの志向からスポーティ・スペースユーティリティ路線へ

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第12回は、高性能ターボエンジンの走りとワゴンの広さを両立させた、新解釈の斬新コンパクトに太鼓判です。

YRV・メイン
強いウエッジスタイルが新しいワゴンを提示

●ストーリアに続く個性派コンパクトを!

市場を拡大するワゴンスタイル車への参入に当たって、ダイハツはストーリアに続く「We do COMPACT」第2段を企画。「カイカン」をテーマに、スポーティな走りとスペースユーティリティの融合を図り、2000年に登場したのがYRVです。

そのストーリアとホイールベースは同一ですが、全長を105mm、全幅を25mm拡大。全高もワゴンらしく約100mm大きくなっていますが、一部モデルを除き1550mm以下に抑えたのは、欧州市場対応とも日本の立体駐車場対応とも言われています。

大きくスラントしたフロントは、ボンネットフードのセンターに引かれたラインがシャープさを引き立てます。さらに、バンパーラインに沿ったミニマムなグリルと左右に広がるランプがスポーティな雰囲気を創出。

YRV・フロント
フード上のセンターラインがシャープさを強調

サイドビューでは、最大の特徴である「ダブルウェッジスタイル」が、前席と後席の用途の違いを明快に表現。また、ウエッジボディであってもリアドアガラスが狭くならないというメリットも生み出しています。

そうして基本は「前のめり」なスタイルですが、前後のホイールアーチを結ぶ段差を持った強いラインによって、下半身に落ち着きがもたらされています。

リアビューは、上下左右に広いガラス面がワゴンとしての広さや開放感を演出。大型の三角形のランプが、リアパネルの背の高さをうまく吸収しています。

●スポーティなコクピットは懐かしさも

YRV・インテリア
3連メーターによるインパネは往年のスポーツカーを想起

インテリアは、左右に長い庇を持った3連メーターと、1列に並ぶ丸形の空調口、アナログ時計が特徴。非常に強い個性を発揮しつつ、同時に往年のスポーツカーを想起させる不思議な魅力があります。

「We do COMPACT」を掲げ、個性的で魅力のあるコンパクトを生み出すとした当時のダイハツ。YRVは、海外市場で「非常に欧州車的だ」と、予想外の評判を得たと言われています。

国内での販売が思わしくなかったのは、ターボエンジンによるスポーティな走りと、スペースユーティリティとの両立というコンセプトが「空振り」だったのか? あるいは斬新なスタイルに対する拒否反応だったのか? そこが実に興味深いところです。

■主要諸元 ターボ 2WD(4AT)
形式 TA-M201G
全長3765mm×全幅1625mm×全高1535mm
ホイールベース 2370mm
車両重量 940kg
エンジン 1297cc 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ
出力 140ps/6400rpm 18.0kg-m/3200rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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