海外バイクメーカーの歩み概説:ダイムラーが発明した2輪車が進化しながら欧州と米国で発展【バイク用語辞典:バイクメーカーの歴史編】

■エンジンを搭載して動力源とするエンジン搭載自転車で始まったバイク

●多くのメーカーは、レースに参戦しながら技術と知名度を上げて成長

2輪車の原型は、エンジンと自転車を組み合わせたエンジン搭載自転車で始まりました。当初は、比較的構造が簡単で製造が容易であったことから、1900年代に入ると欧州と米国で多くのバイクメーカーが誕生し、バイク市場が活況を迎えました。

バイクの歴史と代表的な海外バイクメーカー4社の歩みについて、概説します。

●2輪車の始まり

1885年のリートワーゲン(ゴットリープ・ダイムラー発明)
1885年のリートワーゲン(ゴットリープ・ダイムラー発明)

世界で初めて自動2輪車を作ったのは、自動車を発明したゴットリープ・ダイムラーです。1985年、左右に補助輪が付いた木製の「リートワーゲン」で、現在の2輪車とは異なるスタイルでした。ただし、ダイムラーは4輪車の開発に注力して、2輪車の市販化は行いませんでした。

世界初の市販2輪車は1894年のドイツ「ヒルデブラント&ヴォルフミュラー(H&W)」です。水冷エンジンがフレームの下に搭載され、直接長いコンロッドでリアホイールを駆動させる方式を採用。リートワーゲンからわずか10年足らずでしたが、スタイルは現在の2輪車に近く大ヒットしました。

1900年代に入るとエンジンの技術も進み、エンジンを動力とするエンジン搭載自転車や本格的なバイクが世界中で作られるようになり、多くのバイクメーカーが誕生しました。

現存する代表的な4つのメーカーの歩みの概要は、以下の通りです。

●ハーレーダビッドソン(アメリカ)

1916年 1,000 cc HT (C)Creative Commons
1916年 1,000 cc HT (C)Creative Commons

アメリカンバイクの代名詞とも言えるハーレーダビッドソンは1901年、製図工のウィリアム・ハーレーと模型製作者のアーサー・ダビットソンによって設立されました。1903年に、単筒400ccエンジンを自転車のフレームに取り付けた初めての試作車が完成します。

1911年に、排気量1000ccのVツインエンジンを完成させ、現代に通じるハーレーのエンジンの原型が出来上がりました。以降100年以上の間、優美なスタイルと独特のエンジン音、その躍動感が、長くバイク乗りを魅了しています。日本ではバイクのことを知らなくてもハーレーの名前は知っている、高級ブランドバイクの代表的存在です。

●ドゥカティ(イタリア)

1946年クチョロ-エンジン (C)Creative Commons
1946年クチョロ-エンジン (C)Creative Commons

イタリアンバイクを代表するドゥカッティの起源は、1926年にボローニャで設立された電子部品製造会社です。設立者のアドリアーノ・ドゥカティとマルチェロ・ドゥカティの兄弟は、1946年に自転車搭載用エンジンの製造に成功します。第二次世界大戦の後、高性能40ccエンジンが評判となり、多くの欧州バイクメーカーに供給しました。

その後、完成車の製造を始めて本格的なバイク製造に着手します。ドゥカティは、デスモドロミック機構などの先進技術を積極的に採用し、レースで成果を上げて1950年代前半には世界的に有名なバイクメーカーへと成長しました。

●BMW(ドイツ)

1923年 R32 (C)Creative Commons
1923年 R32 (C)Creative Commons

2輪も4輪も手がけるBMWの起源は、航空機エンジンの製造です。1916年にグスタフ・オットーが航空機エンジンを製造する「BFW(バイエルン航空機工業)」を設立し、その後「BMW(バイエルン発動機製造)」に改称して、1919年にバイク製造に着手します。最初に開発したエンジンは、水平対向493ccのサイドバルブエンジンで高い評価を受けます。

1923年に、水平対向2気筒(ボクサーツイン)を搭載した「R32」を生産。その後、BMWは欧州のレースで驚異的な強さを発揮し、世界中にその名を轟かせます。BMWは、高価ながらドイツらしい頑強なエンジンと優れた走行安定性によって、高級バイクブランドを確立しています。

●トライアンフ(イギリス)

1916年モデルH (C)Creative Commons
1916年モデルH (C)Creative Commons

現存する最古の歴史をもつといわれているトライアンフの起源は、1885年にドイツ人のジークフリード・ベットマンとモーリス・シュルトが設立した「ジークフリート貿易会社」です。自転車販売で成功し、1902年にエンジン搭載自転車、1905年には本格的バイクの生産を始めます。1907年には、マン島TTレースに参戦して名を馳せます。

世界大戦中は、優れた走破性と信頼性の高さで軍事用バイクとして評価を上げ、戦後はハーレーと並ぶ世界トップのバイクメーカーへと成長します。その後低迷する時代を経験しますが、英国を代表するバイクメーカーとして現在も高い人気を博しています。


本章では、海外バイクメーカーの代表として、ハーレー・ダビッドソン、ドゥガティ、BMW、トライアンフの4社の起源や成り立ちについて、それぞれ個別に解説します。

Mr.ソラン

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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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