GPSの測位とは?三角測量の原理で位置情報を特定する仕組み【バイク用語辞典:便利な装備編】

■自車位置の特定のためには、4機の人工衛星からの電波が必要

●ナビの精度を上げるため、GPS自律航法を組み合わせる

ナビ(ゲーション)やスマホ、携帯などでは、自分の位置を正確に確認(測位)するためにGPS(全地球測位システム)が使われています。GPSによる測位とは、地球を周回する人工衛星からの電波を受信して、正確な位置を特定するシステムです。

クルマやバイクだけでなく、さまざまな分野で活用されるGPSの測位原理について、解説していきます。

●GPSとは

GPSとは、人工衛星と連動して位置情報を特定するシステムです。

GPS衛星は米国が軍事目的で打ち上げた衛星で、現在31機が国防総省によって運用されています。衛星は、6つの軌道上を約12時間かけて一周するので、地球上のどこでも衛星の電波を受信できます。

GPS衛星からは、軍事目的の高精度の電波と民生用の精度を下げた電波が常時発射されています。軍事用の測位精度は20cm未満、民生用は10m程度です。

現在、日本でも準天頂衛星「みちびき」と呼ぶ独自の衛星システムを運用中です。2018年11月から4機の衛星体制でGPSを補完する体制を開始しました。使い方によっては測位誤差を小さくできますが、スマホなどが使う衛星測位サービスの精度は、現行GPSの10m程度と同等です。ただし、ビルの間や山間部での位置情報が安定して得られるメリットがあります。

2023年からは7機の衛星体制になり、常時4機が日本の上空に存在するので現行のGPSに頼らずに、測位誤差は数cmレベルまで改良されます。

●GPSによる測位の仕組み

GPSによる測位の仕組み
GPSによる測位の仕組み

自車位置の特定方法は、電波の時間差を利用した「三角測量法」を利用します。

GPS衛星から自車までの距離は、電波速度(約30万km/秒)×時間で求められます。ただし、これは衛星を頂点とする円錐底辺の円周上のどこかであることを意味するだけで、特定には至りません。位置を特定するためには、あと2つの衛星からの電波が必要です。3つの円錐底辺が交差する点が、自車位置です。

GPS測位のための衛星
GPS測位のための衛星

ただし正確に自車位置を特定するためには、上記3機の衛星電波に加えてもう1機の衛星電波が必要です。GPSには、セシウムまたはルビジウムの原子時計が搭載されていますが、クルマやバイクのナビゲーションには普通の時計しかありません。4機目の衛星から正確な時間情報を受け取って、はじめて精度の高い自車位置が特定できます。

●GPSの精度向上手法

GPSによる測位の弱点は、トンネルやビル群などの障害物によってGPS電波が途絶えた瞬間に位置情報が消えることです。ナビでは、GPSを補完するために自律航法と組み合わせて、どんな悪条件でも測位ができるようにしています。

自律航法とは、クルマやバイクの動きを検出して位置を特定する方法です。例えば、トンネルに入って電波が遮断されると、車速センサーで移動距離(車速×タイヤ外径)を、ジャイロセンサーで移動方向を検出して自車位置を推定します。

ただし、GPSと自律航法を組み合わせても、どうしても誤差は生じます。そのまま地図上に表示すると、自車が道路から外れることもあり得ます。ナビには、自車を強制的に道路上に移動させるマップマッチング機能が組み込まれています。マップマッチングはその修正加減が重要で、強すぎると駐車場に入ったのに自車が道路上を走行しているように勘違いし、弱すぎるとフラフラと走行経路が安定しません。


GPSの測位精度を高めることができれば、ナビの自車位置がフリーズしたり、エラーの発生が起こりにくくなります。クルマにおいては、世界中のメーカーが取り組んでいる自動運転技術に進展が期待できます。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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