クルマは長く大切に乗ってはいけない!? 13年を超えると自動車税はなぜ高くなるのか?

●2019年に名前を変えた自動車関連税。名前は変われども税負担は大きく変わらず、中には負担が増えるケースも

毎年5月、当たり前に支払っている自動車税は、エンジン排気量によって税負担が変わります。同じクルマに乗っていれば、基本的に毎年同じ金額を支払い続けているわけですが、今年から突然、自動車税の金額が高くなった方はいませんか。

これは、自動車税のグリーン化特例という政策で、新車登録から一定期間を経過したクルマに、税金の重課税が行われるものです。クルマを大切に長く乗り続けることは、税金を多くかけられるような行為なのでしょうか。今回は、自動車税の重課税について、解説していきます。

・古いクルマはグリーンでもクリーンでもない?

クルマとお金
購入費、維持管理費の他に、多くの税金がかかるクルマ。中でも自動車税は毎年徴収される税金です。(写真はイメージです。)

新型のエコカーが減税を受けられるのは、皆さんご承知のとおりです。

新規登録されたクルマの中で、燃費がいいクルマ、環境性能が高いクルマは、翌年の自動車税が最大で75%減税されます。(FCVや電気自動車など)

また、2019年10月1日以降に初回新規登録を受けたクルマは、自動車税(種別割)の税率が引き下げられています。たとえば1.8Lエンジンを搭載するプリウスに乗っている場合、毎年39,500円の自動車税を払いますが、2019年10月以降に新車として購入し、登録した場合は、自動車税が36,000円となります。そのほかの排気量でも1,000円から最大4,500円の税額引き下げとなりました。

このように、新しいクルマには様々な減税措置が取られる一方で、古いクルマには重課税を強いるのが、グリーン化特例のもう一つの顔です。

車検証
クルマの初度登録は、車検証を見ると確認できます。マイカーが、初度登録からどのくらい経過しているのか、確認してみましょう。

具体的には新車登録から13年以上超過(ディーゼル車は11年経過)したクルマへ、重課税が課されます。

負担が増える割合は、おおむね15%です。1,000㏄以下では29,500円の自動車税が、13年以上が経過したクルマは33,900円となります。同じように1500cc以下では34,500円が39,600円に、2,000㏄以下では39,500円が45,400円といった具合です。

最も税額が大きい6,000㏄を超えるクルマでは、111,000円が127,600円まで引き上げられます。

これに加えて、継続検査(車検)時に支払う自動車重量税も13年経過で重課税となり、18年を経過するとさらに重課税が行われます。長く同じクルマに乗り続けることで、経済的な負担が大きくなる時代になってしまいました。

・古いクルマは環境にとって悪なのか

オーリス
まだまだ街中でも見かける13年超のクルマ達。クルマの保有期間も右肩上がりで伸びています。

13年超という区分けが行われたグリーン化特例による重課税ですが、本当に13年以上が経過したクルマは、環境に良くないのでしょうか。

今から13年前、2008年に登場したクルマを振り返ってみましょう。

2008~2009日本カーオブザイヤーには、トヨタ・iQが輝きました。特別賞は日産・GT-R、スバル・エクシーガ、ホンダ・フリードが受賞しています。その前年2007~2008日本カーオブザイヤーでは、ホンダ・フィット(2代目GE型)が輝き、特別賞は三菱・ランサーエボリューションX、ダイハツ・ミラ(7代目)が受賞しています。

このラインナップを見ていると、それほどまでに古いクルマという感じを受けないのは、私だけでしょうか?

2008年当時、クルマの環境性能は、決して置き去りにされていたわけではありません。排出ガスの削減をし、低燃費車を開発することは、現在と同じ熱量で行われていたでしょう。

13年前のクルマは、現行型のクルマよりは、性能で劣る部分もありますが、大きく環境性能が落ちたクルマとしてしまうのは、少々乱暴な気もします。

・なぜ13年なのか、今や10年10万キロ以上使えるクルマは山ほどある

初度登録から13年以上が経過したクルマに重課税する制度は、平成13年の国会で審議されました。当時、クルマの平均保有期間は10年とされており、この10年に車検1回分を加えて、13年という基準ができたと言われています。

自動車検査登録情報協会が公表している、わが国の自動車保有動向、車種別平均使用年数推移表によると、クルマの平均使用年数は年々長くなっています。

昭和56年には8.70年、平成12年には9.96年と10年に近づきます。平成22年には12.70年と平均12年を超え、直近の令和2年には13.51年と、重課税の対象となる13年を超えました。(統計には軽自動車を含んでいません)

整備風景
基本的な消耗部品をしっかりと交換すると、驚くほど長持ちするのが現代のクルマです。

クルマの寿命は年々伸び続けており、1台のクルマに長く乗り続けるケースも増えていると言えるでしょう。余談ではありますが、筆者の乗る30系プリウスも、初度登録から今年で9年を迎えます。

走行距離は146,000キロを超えましたが、大きなトラブルはなく、消耗部品以外の交換は行っていません。エンジンも足回りも、まだまだ元気です。

新車を購入してほしい、経済を回したいという理由から、新型車の減税を行い、減らした税金は別の場所から徴収する必要があります。その徴収対象に選ばれてしまったのが、13年超のクルマたちなわけです。経済政策としては理解できますが、古いクルマを悪者のように扱うのは、どうなのでしょうか。

一台のクルマを大切に乗り続けることと、新しいものを生産し古いものを廃棄すること、どちらが本当のエコロジーなのでしょうか。グリーン化特例という名前がついている以上、環境問題対策にどれほどの有効性があるのか、しっかりとした理由が欲しいものです。

(文:佐々木 亘

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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