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■機械式は電気式に比べて、メーターギヤとワイヤの破損による故障が多い
●安全走行のため、保安基準で指示値の誤差が許容値内であることを規定
ライダーが走行中に常に車速を認識しておくことは、法定速度を守って安全に運転するための基本です。道路運送車両法の保安基準では、速度計の指示値の誤差は基準値に対して定められた許容範囲内であることが規定されています。
速度計の故障の原因と指示値の誤差の許容範囲について、解説していきます。
●速度計の作動原理
速度計の指示方法には、一般的な指針で示すアナログメーターと、デジタルで示すデジタル式があります。これは、得られた速度の出力を磁力によって指針の回転角で示すか、電気信号に変換して数値で示すか、アウトプットの仕方の違いです。
また計測方法には、機械式と電気式があります。
・機械式
ホイールの回転軸に取り付けられたメーターギヤでタイヤの回転をメーターケーブルの回転に変換して、この回転を磁力によってメーターの指針で表示させる仕組みです。
・電気式
車輪速センサーでタイヤの回転数を読み取り(エンジン回転を計測する場合もあり)、車速に変換してメーターに表示させます。指針で表示させたり、デジタル表示させたりします。
●速度計が動かない、指示値が狂う原因
・機械式の場合
故障の原因としては、メーターギヤのグリス切れによる破損、油切れや摩耗などによるメーターワイヤ切れ、メーター指示部のゼンマイの破損などがあります。メーターワイヤは、長年使うと寿命がくる消耗品と考えた方がよいです。
・電気式の場合
機械式に比べると不具合は少ないですが、車輪速センサー自体の故障や電気配線の断線などが発生すると、正しい表示ができません。また、車輪速センサーはタイヤ外周を使って車速に変換するので、タイヤの摩耗や空気圧変化などの影響を受けて指示値に誤差が生じます。
●誤差はどこまで許容されるか
機械式であれ、電気式であれ、計測システムには予期しない不具合や劣化によって、誤差が発生します。誤差が大きいと危険なので、速度計の誤差は道路運送車両法の保安基準で規定されています。
表示値の許容範囲は以下の式で規定されています。
・平成19年1月1日以降製造のバイクの場合
10(V1-8)/11≦V2≦(100/94)V1 (V1: 速度計の表示値、V2: 速度計試験による基準速度)
例えば、メーター表示値が40km/hの時に正確な速度は29.09~42.55km/hの範囲内にあること
・平成18年12月31日以前製造のバイクの場合
10(V1-8)/11≦V2≦(100/90)V1
例えば、メーター指示値が40km/hの時に正確な速度は29.09~44.44km/hの範囲内にあること
この規定のポイントは、実際の車速より低めの指示の誤差については厳しく、逆に高めの指示の誤差については甘い規定になっていることです。言い換えると、スピードメーターは実際の車速よりやや高めに指示することを推奨しています。
この理由は、何らかの要因で誤差が発生して低めに指示すると、次のような問題が発生するからです。
・ライダーの認識以上に実際の車速が出ていると、判断ミスによる交通事故につながる。
・スピード違反で警察に捕まった場合、メーターの指示値にしたがって法定速度を守って運転していたと主張するライダーと、メーカー間でトラブルの原因になる可能性がある。
ライダーは、常に速度計を見ながら運転します。体感でおおよその車速は分かるものの、速度計が狂っていると想定以上に車速が出ることもあり、非常に危険です。メーターの指示値のチェックは、車検で実施されますが、違和感があれば専門業者に点検を依頼しましょう。
(Mr.ソラン)