いつ起こるか分からない大規模地震、その時クルマはどうする? 東日本大震災体験者からの提案

■地震の時にクルマを使うべき、それとも避けるべき? 震災を経験した実体験から考えます

宮城県・福島県で震度6強を観測する地震が発生した、2021年2月13日。東日本大震災から間もなく10年、被災地をまたも大きな地震が襲いました。

今回は、東日本大震災、そして先日の地震を宮城県で経験した筆者が、地震の時のクルマの使い方やドライバーの心得など、地震とクルマについて実体験を元に解説していきます。

●地震発生時にクルマを運転していたら?

地震はいつ起こるかわかりません。クルマを運転中に地震が発生した場合、どのような対処をすればいいのでしょうか。

緊急地震速報がある現在、大規模地震が発生する際には、ほとんどの場合テレビやラジオ、そしてスマートフォンに緊急地震速報が入ります。しかし、地震初期の小さな揺れは、クルマで走行していると感じ取ることが難しいので、地震の発生が分からず走行し続けることも往々にしてあるでしょう。

まず、緊急地震速報が入ったら、クルマでの揺れを感じなくとも、ハザードランプを点灯し、ゆっくりと減速して路肩に停車します。

地震の揺れが発生しているときには、クルマを動かさないのが大原則です。揺れている中、走行しようとするとステアリングを左右にとられ、真っ直ぐに走行できない非常に危険な状態になります。あわてずに急ブレーキや急ハンドルなどは切ることなく、安全を確認しながら停車することが必要です。

救急車
災害発生後は救急車両の通行を妨げない場所に、クルマを移動して避難することが大切です。(写真はイメージです。)

揺れが収まるまではできるだけ車内に居ましょう。外に飛び出すことで、後続車と接触するということも考えられます。落ち着いてラジオなどから情報収集を行い、安全が確保されたら、周囲の状況を確認します。

津波から避難するなどのやむを得ない場合以外では、クルマを邪魔にならない場所まで動かし、置いて避難するのが基本です。道路に置かざるを得ない時には、クルマのキー(ボタン式スタート車ならリモコン)を車内に置いて(もしくは挿した状態で)、ドアをロックせず、窓を閉めておきます。これは、災害応急車両や緊急車両が通る際に、いつでもそのクルマを移動できるようにするためです。

筆者の経験上ですが、この状態でクルマを置いていっても、車内にイタズラをされるといったことはありませんでした。

●津波の避難にはクルマを使う?

大津波警報が発令されるなど、沿岸部や低い土地から高台に避難をする際には、クルマの使用もやむなしとなります。このとき、避難所付近は大渋滞が予測され、渋滞により逃げ遅れる危険性が高まるので、まずは避難所に限らず、津波から逃れられる高台や付近の鉄筋コンクリートでできた高い建物を目指します。

津波が目の前に迫っている場合には、すぐにクルマを置いて高い丈夫な建物へ避難してください。クルマは30cm~50cmの水深に入ると、エンジンが停止する可能性があります。また、50cm以上の水深ではクルマが浮きはじめ、車外に出ることもままならなくなる可能性が高いです。このような状態になる前に、クルマで進むべきか、置いて離れるべきかの判断が必要となります。

●地震後にクルマを運転しなければならないときは

地震後の道路
地震発生後は、道路状況が普段とは大きく異なります。いつも以上に注意を払い運転しましょう。(写真はイメージです。)

地震が発生した後、どうしてもクルマを運転しなければならない場合には、細心の注意を払って走行しましょう。まずは道路の亀裂・陥没が各所に発生しているため徐行します。また、停電により信号機が動いていない可能性もあります。交差点などでは停車し、お互いに譲り合って走行することが大切です。大渋滞が想像されるので、ゆっくりと心にゆとりを持って目的地へ向かいます。

走行中には緊急車両の通行を妨げないようにします。できるだけ左車線を走り、緊急車両の走行のため、1つ車線を開けておきましょう。

走行が夜間になるときには、さらに注意が必要です。停電のために街灯もなく、真っ暗な道を走ることになり、普段の夜間走行とは比べ物にならないくらい周囲が見にくくなります。歩行者や障害物の発見も遅れるので、事故を起こさないように、ゆっくりと走行しましょう。

筆者は2011年3月11日、東日本大震災発生当日の夜、クルマでの移動を余儀なくされました。普段なら20分で到着する道のりを、2時間半かけて走行しました。街灯も信号も機能していない道路ではこれまでの交通ルールは機能しません。ドライバーそれぞれの心づかいや優しさが、スムーズな交通を作り出します。

暗闇のクルマ
街灯や信号が機能しない道は、想像以上に危険が伴います。急がず、落ち着いて運転することが大事です。

当時、宮城県仙台市の中心部は、警察の手信号などもなく、その道路を走行しているドライバー同士の譲り合いだけで交通が成立していました。しかし、目立った事故もなく、またクラクションが鳴り響くこともなく、円滑にとは言えませんが、安全に走行できる状態になっていたのを思い出します。

交差点では、ドライバー同士が暗黙の了解のように、約10台ずつのクルマを交互に通行させていました。一定量のクルマが交差点を抜けたなと思うと、その後ろのクルマは止まり、違う方向のクルマが流れていく不思議な光景だったのを覚えています。

「困ったときはお互い様」の精神がそこにはあり、日本人の優しさや思いやりを強く感じた場面でもありました。

災害発生時には危険と隣り合わせで運転をすることになります。はやる気持ちを抑えながら、お互いに思いやりを持ってクルマを運転しましょう。危険を伴う場合も多いので、できるだけクルマの使用を避けることも必要です。その場の状況判断を的確に行い、まずは安全を担保することが大切です。

(文;佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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