■いざとなれば、サハラもゴビ砂漠も走れる(ハズ)
「ねぇ、ああいう砂浜ってこのクルマは走れるの?」(彼女)
車窓から見える砂浜を見ながら、ふとそんな疑問をぶつけてきた彼女。
クルマが走っていい場所なのかどうかを除いて走行性能だけで返事をすれば、答えはもちろん「YES!」だ。このディフェンダーにとって、ちょっとした砂浜の走行なんて朝飯前だ。
なんなら、サハラ砂漠でもゴビ砂漠でも走れちゃう(はず)。
ディフェンダーは2019年秋に初のフルモデルチェンジを迎えたばかりで、それは約70年ぶりの全面刷新なのだからもはや驚くしかない。
ちょっと前(先代が生産を終えた2016年1月)までは、まさに生きた化石だったのだから。
スズキ・ジムニー、トヨタ・ランドクルーザー、メルセデス・ベンツGクラス、そしてジープ・ラングラー。世界的なオフローダーがラダーフレーム構造にこだわるなかで、ディフェンダーがモデルチェンジでモノコックボディにスイッチしたのは意外だった。
もちろんその恩恵はしっかりあって、舗装路での乗り味はすっかり今どきのSUVだ。
高速道路巡行なんか、快適性も操縦性もまったく不安がない。そのあたりは舗装路で乗っても「さすが本格オフローダー」と妙に個性が伝わってくるラングラーとは大違いだ。
サスペンションだって、新型は独立懸架。つまり悪路走破性最重視ではなく、オンロードでの快適性や操縦性を求めた設計ということになる。
でも、新型ディフェンダーが道なき道を進む性能を割り切ったかといえば、決してそんなことはない。
■秘めた実力
たとえば新設計のプラットフォームを使った車体は同ブランドのなかでもっとも強靭に作られ、初代のように激しい悪路で走ることを考えているのだとか。
エアサスペンション装着車だと最低地上高を291mmまでアップでき、水深900mmの河まで渡れると聞けば、その悪路走破性が常識はずれのレベルだということが理解できる。
「でも、そんな場所は走ることないよね」(彼女)
確かに彼女の言うとおりだ。でも、イザとなればそういう場所を走れるっていう秘めた実力がいつまでも冒険心を忘れたくないオトコゴコロをくすぐるのだよ。
ハードな使い方なんてしないのに腕時計に「Gショック」を選んでみたり、アウトドアレジャーには出かけないのにアウトドアブランドの服を着る感じ。わかってもらえるかな。
女の人だって、着る機会はないかもしれないけれどエレガントなドレスを買ったらテンションがあがるでしょ?(ちょっと違うかな)。
そうそう、エンジンは2.0Lの4気筒ガソリンターボ。
聞いたときは「もしかし動力性能がいまいちなのでは」と思ったけれど、実際に運転してみたらそんなことはなかった。
「インジニウム」と呼ぶジャガー&ランドローバーのこのエンジンは、想像以上にパワフル。さすが300psだ。(おしまい)
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:牧野 澪菜/ヘア&メイク:牧 詠子/写真:ダン・アオキ)