「スッと曲がる印象」トーヨータイヤの新スタッドレス 、オブザーブ・ギズツーが厳しい日本の冬を安心で楽しくする!【TOYO TIRES OBSERVE GIZ2試乗】

■日本の冬が要求する高性能なスタッドレスタイヤとは?

2020年、いよいよ冬がやってきます。日本の降雪地路面は世界でも名だたる悪条件だと言われています。その最大の理由は、安定しない路面。新雪からシャーベット、アイスバーンとさまざまに表情を変える日本のウインターロードで、走りに安心を与えてくれるのがスタッドレスタイヤの存在です。

トーヨータイヤはオブザーブというブランドのスタッドレスタイヤを長年販売していますが、2020年にそのオブザーブがフルモデルチェンジ、新たに「オブザーブGIZ2(ギズ ツー)」として登場しました。

●多様な路面状況が混在する日本の冬

トーヨーの新スタッドレス「オブザーブGIZ2」とテスターの諸星陽一さん
トーヨータイヤの新スタッドレス「オブザーブGIZ2」とテスターの諸星陽一さん
日本の雪道
アイスバーンからシャーベット路面まで、日本の雪道は千変万化

近年、地球温暖化の影響によって日本の降雪地でもさまざまな変化が起きています。気温が高くなるとウインターロードの条件は次々に悪くなります。もちろん雪が降らない、路面が凍らないほど気温が上昇すれば話は別ですが、今の日本の降雪地では太陽が沈むと気温が氷点下となり、朝日が昇ったあとはプラスに転じるというような気候が増えています。

北海道の札幌でもこうした気候になってきているといいます。路面の状況でいえば、昼間は氷が解けたウエット路面で、夕方からはアイスバーン、そしてひとたび雪が降れば新雪かシャーベットというあらゆる路面が混在するのが日本の路面で、ここまで多彩な路面が日常的に現れるのは世界でも珍しく、日本のスタッドレスタイヤに求められる性能が過酷だと言われるゆえんです。

●氷より硬くアスファルトより柔らかい「鬼クルミの殻」

オブザーブGIZ2
トーヨータイヤの新スタッドレス「オブザーブGIZ2」

新しい「オブザーブGIZ2」は、多様な路面での性能を確保するためにさまざまなアプローチでの開発が行われています。

オブザーブGIZ2のコンパウンド(タイヤのトレッド面=路面と接する部分に採用されるゴムの素材)には、トーヨータイヤが20年以上前から採用している“鬼クルミの殻”を配合した、新開発の「吸着クルミゴム」が使われています。このコンパウンドは鬼クルミの殻によるアイスバーンでのひっかき効果に加えて、ミクロ単位の水膜の吸水と除去、しなやかな特性による路面追従性などが特徴です。

オブザーブGIZ2
トーヨータイヤ独自の吸着クルミゴムのイメージ
オブザーブGIZ2
トレッド面の特徴

トーヨータイヤのスタッドレスタイヤは、トラックやバスなどの大型車用タイヤから乗用車用までクルミの殻を使ったコンパウンドを採用。氷より硬く、アスファルトより柔らかいのが特徴で、非降雪時に路面を傷つけることなく、環境に優しいタイヤとして知られています。

コンパウンド内にはゴムのしなやかさを維持する“持続性密着ゲル”も配合され、経年変化によるコンパウンドの硬化を抑制しロングライフを実現しています。さらに、シリカの配合量をアップし、低温時の柔軟性を向上。ウエット性能を向上しています。

●サイプの閉じ込みを防ぐ「吸着3Dサイプ」

オブザーブGIZ2
周方向には3本のストレートグルーブが走ります
オブザーブGIZ2
吸着3Dサイプがサイプが閉じ込むことによる吸水力やエッジ効果低減を防ぎます

トレッド・パターン(路面に接するトレッド面に描かれる溝の模様)は方向性を持たせたものです。

周方向に3本のストレートグルーブ(縦溝)を配置、横方向にも太い溝が配置されます。

中心付近のメインのトレッドは「3連ブロック」と呼ばれる3つのブロックが周方向で互いに支え合う構造として、発進時とブレーキング時に高いエッジ効果を前後方向へ発揮。トレッドに刻まれるサイプ(細かい溝)は「吸着3Dサイプ」と呼ばれるもので、サイプ内側に空洞を設けてブロック全体が均一に接地するように設計。サイプの閉じ込み(サイプ同士が密着して空げきがなくなる状態)を防止し、吸水力を高めるとともにブレーキング時に高いエッジ効果を発揮しています。

またブロック周囲に刻まれたギザギザのスリットによるグリップ確保、2つの大型ブロックが支え合う「コンビネーションブロック」構造なども採用されています。

●グリップ発生までの時間が早い

オブザーブGIZ2
北海道佐呂間町のトーヨータイヤテストコースで行われた試乗会
オブザーブGIZ2
ステアリングにしっかりしたインフォメーションが感じられます

発売に先がけ、2020年2月に北海道常呂郡佐呂間町にあるトーヨータイヤのテストコースで試乗会が開催されました。

外周路と呼ばれる比較的高速で走行可能なワインディングロードでは、まずカローラスポーツを使っての従来モデル(GIZ)との比較試乗を行いました。「GIZ」でも十分にグリップして楽しいドライビングができたのですが「GIZ2」に乗るとその進化にビックリさせられます。

まず、手応えがしっかりしていることがなによりの好印象です。滑りやすい路面でのドライビングは、ステアリングから得られるインフォメーションがなによりの頼りとなります。圧雪路面でスラロームをしていくと、しっかりとしたインフォメーションが伝わって来ます。先代の「GIZ」に比べると、横方向のグリップ発生までの時間が早く、スッと曲がって行く印象です。

●4WDではコーナリングの姿勢が作りやすい

オブザーブGIZ2
トラクションに優れる4WD車では荷重変化がつかみやすくなり、スポーティな走りが可能です

アウディA4では「GIZ2」のみの単独試乗を行いました。言わずと知れたクワトロシステムを採用するアウディA4は、効率のいいトラクション性能を発揮し強い加速を示してくれます。

タイヤのグリップに不満はなく、スポーティで楽しい(つまり適度にすべり、それをコントロール下における)走りが可能です。定常走行からアクセルを緩めフロントに荷重を移動した際のグリップの変化をつかみやすいので、コーナリングに向けての姿勢を作りやすく、スポーティな走りも可能です。こうした走りはクローズのテストコースだから楽しめるものと思いがちですが、この基本特性はドライビングを楽にしてくれる部分です。こうした高い性能があるタイヤを普通に使うことで、ストレスのない安全な運転が可能になります。

●制動距離はもちろん止まり方も力強い

最後に用意されていたのが、アイスドームと言われる施設です。アイスドームはテストコース上にカマボコ状のドームを設置した施設で、18×200mの氷盤路が作られています。直射日光や風を遮断することで安定した路面を獲得しています。

オブザーブGIZ2
カマボコ状のドームを設置した氷盤路
オブザーブGIZ2
歩くことすら難しい評判路で制動距離の短縮を確認

アイスドームの氷盤路ではプリウスを使ってブレーキ比較試乗を行いました。30km/hからのABS作動フルブレーキで「GIZ2」が18m、「GIZ」が19.5mという結果でした。トーヨータイヤからは40km/hで約8%短縮というデータが公表されていますので、ほぼテストデータどおりの結果と言えます。ブレーキング時のフィーリングもよく、7km/h程度からの、ABSがカットされロックブレーキとなったときのガツンという止まり方も力強い。

アイスドームではもう一つテストを試みました。オフィシャルなメニューにはなかったものです。テスト方法は15km/hの定常走行からアクセルオフ、どれくらいの距離を滑走するか? というものです。

「GIZ2」は「GIZ」に比べて、10m弱長く滑走しました。これが示すのは転がり抵抗の低さです。技術者にお話を聞いたところ、「GIZ」では含有量が少なかったシリカを「GIZ2」では大量に配合したとのこと。間違いなくシリカの効果で転がり抵抗が減っています。ということは、燃費も期待できるというわけです。

●あらゆる車種に対応できるワイドラインナップ

オブザーブGIZ2
スタッドレスでありながら転がり抵抗の低さを実感しました
オブザーブGIZ2
オブザーブGIZ2は他の新製品「セルシアス」「M646 」グッドデザイン賞を受賞しています

サイズ展開は145/80R13から245/50R18まで23サイズを用意。軽自動車のベーシックグレードから、輸入上級セダンまで数多くの車種への対応を可能としています。
トーヨータイヤのスタッドレスタイヤ「オブザーブGIZ2」は、同社のオールシーズンタイヤ「セルシアス」、トラック・バス用オールウエザータイヤ「M646」とともに、2020年度のグッドデザイン賞を獲得しました。信頼できる高性能を獲得しつつ、デザイン面でも高い評価を受けた「オブザーブGIZ2」は、2020年ウインターシーズン大注目のアイテムなのです。

(文/諸星 陽一)

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この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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