全車一斉V6ターボに! ラグジュアリー路線に転向? の3代目Z31型【7代目新型フェアレディZ プロトタイプ発表記念・3代目Z31編】

■大規模マイナーチェンジで後期型へ(1986(昭和61)年10月)

日産フェアレディ300ZR(1986(昭和60)年10月)
ここへきていきなりピュアスパルタンスポーツの風貌を纏うようになった。写真は300ZR

1986年秋、Z31は、マイナーチェンジを超えるマイナーチェンジ受けて後期型に移ります。
エクステリアは、スポーツ魂を忘れかけた自らのGT志向に戒めのブレーキをかけたかのようにスポーツ路線に回帰。ただし初代の汗だくスポーツとも異なる、スパルタン志向を多く加味した路線転換です。

基本デザインは、日産デザインのアメリカ拠点・NDI(ニッサン・デザイン・インターナショナル)の手によるもので、彼らのクレイモデルを日本側が熟成させました。
フロントフェイスは、正面から見たときにたれ目と称された(そうかな?)パラレルライズのヘッドランプをいくらか修正、上下に少し薄く、切れ長になりました。ランプと隣接するフードもふくらみ方が変わっています。

 

日産フェアレディ300ZR(1986(昭和60)年10月)
同じく300ZR。車体色のシルバーや、ホイールデザインのせいで、ワルな雰囲気が漂ううようになったのは、スポーツモデルとしては〇だ。

リヤに前期の面影はなく、中央のライセンスプレートをバンパー側に移し、分断されていた左右ランプをガーニッシュでつなげて一本化しました。位置もいくらか上方移動したようです。
サイドにまわって、フェンダーを新造形。といってもこれは3L車のみですが、前後フェンダーを、ホイールアーチのフレアをうまくぼかしながら膨らませてワイド化、正面から見たときの安定感、踏ん張り感がプラスされました。一方の2L車は5ナンバーサイズを守るため、従来のまま・・・このあたり、衝突対応という都合があるとはいえ、2L未満でも安易にワイド3ナンバー化に走るいまの車両企画者、デザイナーは見習ってほしいところです。

外観とは対照的に、インテリアに大きな変更は見られません。

エンジンのパワー競争には、ますますの拍車とターボとスーパーチャージャーがかかった印象です。前年秋の2L・直6セラミックターボに加え、自然吸気で最高出力190psを発生するV6・3LツインカムのVG30DEを引っ提げてきたのです。同時に、2Lターボという点でRB20DETと重複するVG20ETはこの時点で廃止されました。
というわけでエンジンバリエーションは出力順に、前年秋のRB20DET(180ps)、今回の新参者・VG30DE(190ps)、そしてZ31初期から続投するVG30ET(195ps)の3種・・・同じクルマに直6・V6、ツインカム・シングルカム、ターボ有無、これらの組み合わせ次第で5~10ps刻みの出力となる3バリエーションのエンジンが用意されるとは、いまならどのメーカーも採らない手法でしょう。

【スペック】日産フェアレディ300ZR 2by2(HGZ31型・4AT・1986(昭和61)年10月)
●全長×全幅×全高:4605×1725×1310mm ●ホイールベース:2520mm ●トレッド 前/後:1455/1475mm ●最低地上高:150mm ●車両重量:1490kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:5.3m ●タイヤサイズ:215/60R15 ●エンジン:VG30DE(水冷V型6気筒 DOHC) ●総排気量:2960cc ●圧縮比:10.0 ●最高出力:190ps/6000rpm ●最大トルク:25.0kgm/4400rpm ●燃料供給装置:ECCS(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:72L(レギュラー) ●サスペンション 前/後:独立懸架ストラット式/独立懸架セミトレーリングアーム式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク式/ベンチレーテッドディスク式 ●車両本体価格(当時・東京価格):382.1万円

 

何度も述べたとおり、クルマのハイパワー化、ラグジュアリー化はZ31でグンと高まりました。そしてそのピークは次作Z32型で迎えることになるのです。

(文:山口尚志 写真:花村英典/日産自動車/モーターファン・アーカイブ)