激戦のTCRJに颯爽と現れたシンデレラドライバーの正体は?

大湯都史樹選手や角田裕毅選手とも張り合ったドライビングテクニックでTCRJに殴り込み!?

手頃なマシンとスプリントレースという親しみやすいレースフォーマットで瞬く間に世界中に広まり活況を呈しているTCRレースシリーズ。日本でも満を持して昨年TCRジャパンシリーズが開催され、盛り上がりを見せました。

2シーズン目となるTCRJ2020シーズンの開幕戦において、デビューレースで最後列からあわや優勝かと思わせる走りを見せてくれたドライバーがいます。今回はそんなミラクルドライバーの素顔に迫ってみたいと思います!

── はじめまして。まずはプロフィールを教えていただけますか?

「はじめまして。一條拳吾、22歳です。よろしくお願いします。今年23歳になりますが、レース歴は四輪は今年で5年目になります。」

── 意外と長いんですね

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今回はBRPからLeon TCRでTCRJにエントリー

「そうですね、年数的には5年目なんですけど、レースの出場回数はそんなに多くないんです。四輪デビューはJAF-F4で土屋武士さんのチームで2016年と17年に走らせてもらったんですけど、年に1レースしか出てませんでした。
2016年は毎年12月に開催されているJAF-F4の日本一決定戦で、その年は大湯都史樹選手が優勝したレースでした。それが四輪のデビュー戦で3位表彰台でした。」

── 四輪デビューが日本一決定戦っていうのも凄いですけど、そこで表彰台っていうのもまた凄いですね

「四輪の前はもちろんカートもやってましたけど、カートを始めたのも高校生になってからで、高1でSLレースに出て、そこから高2・高3と地方選手権、全日本選手権という感じで毎年優勝もできていたので、少し駆け足ではあったんですけどステップアップして、武士さんのところにお世話になって16年の日本一決定戦がそういう結果でした。
2017年は9月の富士チャンピオンレースにスポット参戦させてもらって、その時角田裕毅選手も出ていたんですね。そのレースは予選から決勝まで雨だったんですけど、車のセットがすごいハマってて優勝しちゃったんです。」

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大湯都史樹選手や角田裕毅選手と張り合ったテクニックで今回も最後列スタートからいきなり3台をオーバーテイク!

「でもその年はそのレースしか出られなくて、翌年ミニチャレンジっていう新しく始まったワンメイクレースでスカラシップオーディションがあったので、それに応募してスカラシップをいただいてフル参戦したんです。それがハコ車でのレースもシーズン通してのレース参戦も始めてでした。
初年度でチャンピオンを獲らせてもらって2019年も継続して参戦させていただいて2年連続チャンピオンも獲らせていただきました。そこで今回お世話になったBRPの奥村さんと知り合って、昨シーズンの終わりにステップアップしたいんですけど乗れる車がないんですっていう相談をしたんですね。
そうしたらいろいろ策を練ってくれて、いろんな条件が揃った状態で声をかけていただいて僕もそれならっていう感じで、今回に関してはスポット参戦の予定ではあるんですけど、こうしてエントリーする事ができました。」

── ということは、次戦は乗れるかわからないということですか?

「ちょっと現状ではそうですね。」

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8月のもてぎ大会でも一條選手の走りを見たいところです

── なるほど。そういう経歴なら今回のレース結果も納得です(笑)。では、今回このLeon TCRに初めて乗ったのはいつですか?感触的にはいかがでしたか?

「このマシンに乗ったのは今週の木曜日が初めてです。木曜金曜と練習走行でこのコースを走ってそれで土曜の決勝という流れでした。マシン自体はすごく乗りやすくて、且つしっかりしたレーシングカーとしてのフィーリングが凄くあったので、単純に面白いなというのが第一印象でした。難しさはそこまで感じなかったです。
ただ、僕が乗り慣れているミニチャレンジのマシンも速いんですけど、そこまでスピードが出るわけでもなくて、ハコ車でこれだけスピードが出るマシンは初めてでした。」

── そんなに違いますか?

「TCRのほうが断然速いですね。パワーがあるのでアクセルワークとか気をつけないとアッという間にホイールスピンしちゃうって感じでした。」

── 今回はレース前の練習走行と土曜日の決勝を走ってみて、手応えとしてどのあたりまでいけるかなと思いましたか?

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レース後半はオーバーオールクラスの2台と接戦を演じる

「そうですね、金曜まではずっとドライコンディションで篠原選手が飛び抜けてるなって感じはありましたけど、なんとかオーバーオールの2台、篠原選手と松本選手に食らいついていけるかなってところまでは持っていけたと思っていました。ただ、まだ自分は詰められるところもあったので、土曜の予選2本とサタデーシリーズの決勝でそこを修正しようと思っていました。
チームの方たちも『お前は日曜に仕上がればいいんだ』って言ってくれて、本当にフルサポートっていう感じでこの週末はやってもらえました。」

── そうすると、今日の決勝キャンセルはやはり残念な感じですよね?

「本当に今日は勝つつもりで来てて、昨日のレースの感触ではこのコンディションなら絶対勝てると思っていたので、なんとかやってもらいたかったんですけど、結局キャンセルになってしまってすごく残念です。でも天気には勝てませんし、これもレースですから。」

── こちらとしても昨日の決勝ファステストラップからのポールポジションでどんなレースになるのかすごく観たかったです。TCRJオフィシャルの中継でMCのお2人も期待してましたし、ライブ中継を観ていた方々もきっと次のレースを楽しみにしていると思いますので、次戦も期待しています。

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最後は篠原拓朗選手との一騎打ち。もう少しこのアツいバトルを見ていたかったです

「そこはまだ現状ではどうなるかわからないですけど、また走れるように頑張ります。」

── ところで一條選手は、普段は何をされてるんですか?

「今は実家の近くにある整備工場で働いています。ただ、こういうレースがある時はお休みをいただかないとならないので、社員ではなくアルバイトのような形で使っていただいてます。」

── 将来的にはどこを目指しているのでしょう?

「将来的にはやはりドライビングにしても何にしてもプロとして、きちんとお金を稼げるようになりたいですね。今はまだこちらがペイする状況ではあるんですけど、ゆくゆくはクルマに乗る事だったり評価する事、クルマ作りについても相談された時にいろんなアプローチでアドバイスする事で、自分の好きな『クルマ』を通して人の役に立てる人間になりたいなと思っています。」

── その枠の中にプロドライバーは入ってますか?

「もちろんです。プロドライバーに憧れてクルマの世界に飛び込む人もいるだろうし、プロドライバーって何かとクルマのスペシャリスト、中でもクルマを扱う運転のスペシャリストだと思うので、そこは自分も運転が好きだし自信もあるし、それでちゃんとお金をもらう事ができて初めて一人前だと思うので、そうなれたら1番ベストかなと思います。
ただ、クルマをいじるのも好きなので、いずれにしてもそっちもやっていきたいなというふうに思っています。」

── この世界で生きていこうっていう覚悟がひしひしと伝わってきます。それでは最後にファンの方やレース関係者の皆さん、そしてこの記事をご覧の皆さんにメッセージをお願いします

「今まで、応援してくださる方々や支えてくださる方々のご協力がなかったら今回のTCRJ参戦もなかったですし、今のドライバーとしての自分も存在しないので、そういった皆さんのおかげでここまで来れました。本当にありがとうございます。
そしてこれからも前進していきたいと思っていますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします!」

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ゆくゆくはクルマのプロとして生きていきたいとのこと。ご活躍を期待しています!

自身の好きなクルマを通じて人の役に立ちたい、プロとして生きていきたいという熱意が伝わってくる今回のインタビューとなりました。

これからのさらなるご活躍に期待し、応援していきたいと思います。みなさんもぜひ、一條選手の今後の走りにも注目してみてくださいね!

(H@ty)