法人がクルマを購入する際の注意点や利点【クルマとお金:金融知識編】

●リースや買い上げ、節税のためにクルマを購入するなど、法人とクルマの付き合い方は様々

法人がクルマを購入すると節税につながることを知っている人は多いでしょう。しかし、リースする場合と購入する場合、新車を買う場合と中古車を買う場合など、ケースによって節税の効果は変わってきます。

今回は、法人がクルマを購入する際の注意点や利点について解説していきます。

・法人はクルマをリースする?購入する?

法人がクルマを使う際、クルマを購入する以外にカーリースを利用するという方法があります。「クルマを購入するよりもカーリースの方がお得」という話を聞いたことがある人が多いかもしれませんが、実際はどちらがお得になるかは状況により異なります。

クルマとお金の疑問
事業形態や利益の出方により、ベストなクルマの買い方は異なります。企業会計の中で、効率的にクルマを利用する方法を考えていきましょう。

カーリースは、月額の利用費用(リース料)を払ってクルマを利用する方法で、支出額が毎月一定になるため経費計画が立てやすいという特徴があります。

購入費が一度に賄えない場合でもすぐにクルマの使用を開始できるほか、クルマのメンテナンスはリース会社が代行してくれるため、車検や自動車保険などの煩雑な手続きをする必要がないのもメリットです。リース料は経費として計上でき、課税対象額が減少するため節税につながります。

一方、クルマを購入する場合は「減価償却」という計算方法に則って経費計上することになります。新車を購入すると、購入費用を6年間に分割して経費を計上します。購入時は一時的に資金を負担することになりますが、支払う総額はカーリースの利用料より安くなる傾向にあります。クルマにかかる費用は経費に計上できるので、こちらもカーリースと同じく節税につながります。

リースと購入、どちらのメリットが大きいかはケースによって異なるので、両者の特徴と自社の状況を踏まえて選ぶようにしましょう。

・新車と中古車の減価償却の違い

前述したように、クルマを購入すると「減価償却」という計算方法で経費計上をします。経費を分割して支払う年数を耐用年数と呼び、新車の場合は基本的に6年間、総排気量0.66L以下の小型車は4年と定められています。

中古車の耐用年数は「法定耐用年数-経過年数+(経過年数×0.2)」という計算で求められます(小数点以下は切り捨て)。

中古車の方が耐用年数が短くなる分、1年間に計上する経費の額が大きくなるため、一般的に中古車を購入する方が節税面で得になると言われています。

たとえば、300万円の新車を購入すると法定耐用年数は6年なので、一年あたり50万円(購入額の6分の1)を6年間にわたり経費として計上できます。一方、3年落ちの中古車を300万円で購入した場合、耐用年数を計算すると3年になり、一年あたり100万円を3年間にわたり計上することになります。

同じ300万円のクルマを購入しても、新車だと1年あたりの計上額が50万円、中古車では100万円となり、中古車の方が1年あたりの経費計上額が大きくなります。経費が多くなるほど課税対象額が減るため、節税に有利になるのです。

新車償却
減価償却を考えた際に、必ずしも新車が有利になるとは限りません。新車の償却と、中古車の償却の違いを理解して、自社にとってどちらがいい選択なのかを見極める必要があります。

・経費計上できないクルマがある?どんな場合?

法人がクルマを購入する際、クルマを経費計上できない場合が存在します。「この車種はOK、この車種はNG」と明確に決まっているわけではありませんが、基本的には「業務に必要であるか」が経費として認められる際のポイントとなります。

運転記録が確認できない場合や、プライベートで使用していると疑われる場合は、経費計上できない可能性があります。また、フェラーリやランボルギーニなどの趣味嗜好性が高いクルマは経費として認められにくい傾向があります。

一方、高級車の場合でも、取引に有利になるなど業務上の必要性が明らかな場合は、経費として認められやすいです。

メルセデス・ベンツ
どの車種が認められて、どれがダメという基準は明確ではありません。業務に関係すればOKですし、無関係ならNGとなります。スポーツカーだから認められないということもないので、業務との関係性を明確に示し、クルマを購入しましょう。

税務署は、車種だけでなく業務内容によってそのクルマが業務に必要と認めるか判断します。走行記録をつける、社用車と私用車と明確に使い分けるなどして、業務に使っていることがハッキリと分かるようにしておきましょう。

・まとめ

今回は、法人がクルマを購入する際の注意点をまとめました。カーリースという選択肢もあることや、一般的に中古車の方が節税に有利になること、業務に必要と認められない場合は経費計上できないことなどを理解した上で、クルマを購入するようにしましょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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