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●自分で申請する車検「ユーザー車検」をやってみよう
車検は自動車ディーラー、整備工場、ガソリンスタンドなどの業者に依頼して受けるものという印象が強いですが、業者に依頼せずとも自分で車検を受けることができるのをご存知でしょうか。これをユーザー車検と言います。
ユーザー車検は予備知識を身につける事で、不安なく検査を受けることができるようになります。
今回はユーザー車検を受ける際の手順や流れについて解説していきます。
・ユーザー車検とはどんなものか
クルマは道路運送車両法に定められた保安基準に適合していないと、公道を走行することができません。そのため保安基準に適合しているかを調べるための公的な検査が車検です。
車検を業者に依頼する場合は法定費用、車検基本料、整備費用がかかります。
ユーザー車検の場合は法定費用のみ(自賠責保険、自動車重量税、印紙代)で車検を更新することができる場合があるので、業者に依頼した際に発生する手間賃の部分をカットし、費用を安く済ませることができるのです。
ただし、事前に必要な整備はしっかりと行っておく必要があります。
ユーザー車検は全国どこの運輸支局でも受けることができます。ユーザー自ら点検、整備を行い事前に必要な書類を準備し、運輸支局にクルマを持ち込みます。
各種書類の手続きを行い検査官の指示に従い、検査ラインを自分でクルマを操作し検査をします。クルマを保安基準に適合させることができれば車検完了です。
・ユーザー車検時に知っておきたいクルマのこと
ユーザー車検を受ける前に検査項目をしっかり把握し、クルマが検査に合格できる状態なのかを確認する必要があります。
まず「同一性の確認」では車検証や申請書に記載内容と車両が同一であるか、エンジンルーム内や運転席シート下にあるエンジンの型式や車体番号を確認されます。車体番号が刻印されている場所を必ず確認しておきましょう。
この時、運転席ドアを開けた箇所や、エンジンルームの中に貼り付けてあるコーションプレートでの確認ではなく、車体への車体番号の打刻箇所を確認します。
「外観の検査」では車体の外観、灯火類、ワイパー、ウォッシャー液、ホーンなど、内装もシートベルト、サイドブレーキ、ペダル、ハンドルが保安基準に適合しているか点検されます。
ここからは、実際に検査機器を使っての数値の測定を行います。
「サイドスリップ検査」では前輪タイヤの横滑り量(直進安定性)の確認をします。ハンドルをまっすぐの状態で直進した時に、どのくらい左右にずれるかを測定します。タイヤの空気圧を適正に調整することで、タイヤの横滑りを抑えることができます。
「ブレーキの検査」では前輪、後輪、駐車ブレーキの制動力の確認をします。「スピードメーター検査」では実際の速度と速度表示機械との誤差の確認をします。
「ヘッドライト検査」ではヘッドライトの光量、光軸が基準値内であるかの確認をします。登録年月日で検査方法が異なる場合があるので注意が必要です。「排気ガス検査」は排出ガスの一酸化炭素と炭化水素の濃度を測定します。
最後に「下回りの検査」は車両下部のオイル漏れやマフラーの破損、排気漏れの不具合がないか下回りの確認をします。
このように検査項目はたくさんあります。クルマの状態を確認し不備が見つかれば調整、交換をして車検に臨みましょう。
・クルマの電子制御をオフにする方法をチェックしておく
クルマの各種検査をする際に、装着されている電子制御によって正しい検査ができないことがあります。そのため、検査ラインに入る際には、各種電子制御をOFFにして入場しなければなりません。
近年の多くのクルマには、ABS、トラクションコントロール、スタビリティコントロールなどの多くの電子制御が行われており、これらは統合制御されて、日々のドライビングを助けてくれています。インパネやコンソールに各種装置のスイッチ類がありますが、これらのスイッチをOFFにしても完全に電子制御が無くならない車種も増えてきています。
そのため、検査ラインを通すための専用モードを備えたクルマが増えてきています。サイドスリップ検査、ブレーキ検査はもちろん、ハイブリッド車の排ガス検査など、専用モードに入れないと行えない検査があるので注意が必要です。
例えばトヨタのハイブリッド車の場合、イグニッションONの状態でPレンジに入れたまま、アクセルを2回踏む、Nレンジに入れてアクセルを2回踏む、再度Pレンジに入れてアクセルを2回踏んで「メンテナンスモード」と表示されたことを確認し、READY ONするという方法です。
この方法は取り扱い説明書に書かれていることは少なく、一般にはあまり知られていません。インターネットなどを利用する、担当のカーディーラーの整備士に確認するなどして、整備モードの方法をチェックしておきましょう。
・ユーザー車検の具体的な手順とその方法
検査をスムーズに進めるためには、検査当日までにやるべきことがあります。
まず法定24ヶ月点検整備を行なってから陸運支局に検査の予約を行います。必要書類の車検証、自賠責保険証明書、自動車税納税証明書、点検整備記録簿、予約番号を準備しておきましょう。
検査当日は陸運支局場内の印紙・証紙販売窓口で必要書類を受け取り、重量税額分と検査手数料分の印紙と証紙を購入し、所定の用紙に貼り付けましょう。書類の書き方は受付窓口付近の例を参考に作成してください。
自賠責保険の継続手続きは前もって自分の任意保険の保険会社に頼むか、当日に行う場合は陸運支局近辺の行政書士事務所で手続きをしてください。また自賠責保険の期間は新しく車検を取得する際の全期間を保険期間にしなければなりません。
検査に不合格になったときなど、車検と自賠責保険の期間が同じだと自賠責保険の加入期間が足りなくなってしまうことがあります。数日足りないだけでも車検を通すことはできなくなるので、自賠責保険の加入期限は余裕をもたせ車検より1ヶ月長い25ヶ月にするという方法もあります。
書類の作成と自賠責保険の加入が終わったら、継続検査窓口に書類を提出し受付を行います。係員の指示に従い検査ラインにクルマを並べ、自ら運転して検査ラインを通していきます。
検査を終了したら総合判定係のところに書類を提出し、審査結果通知欄にハンコをもらいましょう。最後に受付棟に書類を一式提出し、新しい車検証と検査標章(シール)をもらい完了です。
・まとめ
ユーザー車検を受けようと考えている方は、事前の準備から検査までの全てをユーザー自らやらなければいけません。
手間や時間がかかり難しく感じることもあると思いますが、点検整備と当日の流れを細かく確認することでスムーズに検査を受けることができるでしょう。内容を理解して、チャレンジしてみてください。
(文:佐々木 亘)