「メルセデス・ベンツ ミディアムクラス(W124)」最善最良のドイツ製セダン/ワゴンはなぜ伝説化された?【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第22回は、「最善か無か」の最終世代となる、渾身のミディアムセダン/ワゴンに太鼓判です。

■シェイプアップされた「ちょうどいい」ボディ

124・メイン
190シリーズに準じつつ、サーフェス化が進んだボディは非常に滑らかな面を持つ

ファミリーを意識したエントリーカーとして成功、9年間もの間生産されたW123。先に新たなエントリー車である190シリーズが登場したことにより、その後継には「ミディアムクラス」(W124)の名称で1985年に登場となりました。

基本的なスタイルは190に準じ、クラシックイメージから抜け出した新世代バージョンへ。実に46mmも狭くなった全幅によりシェイプアップされたボディは、逆に延ばされたホイールベースと相まってグッド・プロポーションを獲得しました。

フラッシュサーフェス化が進んだボディは実に滑らかで、ハイデッキ化もあって、意外にもCd値0.29を達成。前後に延びるショルダーラインもまた豊かな面を作りつつ、強く絞られたリアエンドまで続きます。

124・リア
トランクリッドの特徴的な切り方に合わせた小型のリアランプに抑制のきいた高級感が

光りモノを廃したサイドビューは一体成型バンパーと素材色のモールによって整理されクリーンなイメージに。同じく素材色のドアハンドルや、左右で大きさを変えたドアミラーがアクセントになります。

フロントの造形も190に準じますが、4本の横桟グリルとともにボリュームが格段にアップ。独特の切り方をしたトランクリッドに沿ったリアランプは、必要以上に横長表現にならないことで抑制のきいた高級感を出しています。

■できることはすべてやり尽くした

124・インテリア
シンプルな造形ながら丁寧な作り込みから高級感が醸し出される内装

インテリアは、比較的コンパクトな台形メーターナセルを含め、非常にシンプルなT字型のコクピットで、フラット形状のステアリングホイールとの組み合わせも良好。立体的なドア内張りやザックリしたシート表皮、そしてウッドパネルが鉄壁の高級感を表現します。

SクラスことW126よりも現代的な面とプロポーション、190シリーズより質感を上げた面やハイデッキスタイルなど、少しずつ着実に進化させるやり方には、計算された周到なデザイン計画が垣間見られます。

このミディアムクラスは「最善か無か」の最後のモデルなどと言われていますが、その表現が適当か否かはともかく、セダン/ワゴンのスタイリングにおいては、ある種完成の域に達しているように思えます。やれることはすべてやる、という意気が感じられるのです。

●主要諸元 メルセデス・ベンツ 300E (5AT)
全長4740mm×全幅1740mm×全高1446mm
車両重量 1340kg
ホイールベース 2800mm
エンジン 2962cc 直列6気筒SOHC
出力 190ps/5600rpm 26.5kg-m/4250rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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