シンプルでありながら端正でエレガント、しかもスポーティな贅沢ボディ「プジョー・405」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

80〜90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第14回は、一見シンプルなボディながら、実にさまざまな表情を持つミディアムフレンチセダン・ワゴンに太鼓判です。

■空力を意識しつつ、セダンの基本を押さえたボディ

405・メイン
205に続くピニンファリーナとの協業は、また違った美しさを生み出した

1980年代半ば、欧州市場で大きな比率を占めていた中型車クラス。このM2と呼ばれるクラスでの持ち駒がなかったプジョーは早速ミディアムカーを計画。1987年に発表されたのが405です。

ヒット作となっていた205や309に引き続き、空力特性を重視したボディはより強いウエッジシェイプ。またミディアムクラスとして、4410mmの全長に2670mmという長いホイールベースを設定。大きなキャビンを余裕で消化する、実にバランスのいいプロポーションを獲得しました。

フラッシュサーフェスが徹底されたボディは、美しいラインで切られた大型のプレスドアにより一層の面一化を実現。フロントランプから始まりボディを一周する強めのキャラクターラインが、シンプルな面に端正な表情を与えています。

405・ワゴン
広いガラスエリアを持つワゴンは機能性を表現しつつ、同時に端正さも

205より薄くなったフロントフェイスはより繊細な表情に。309に準じて横桟のガーニッシュと一体になったリアランプは、横L字形のグラフィックが当時のプジョーのアイコンとなります。さらに、ワゴンでは広いガラスエリアが機能性と美しさの融合を見せます。

大型のバンパーやサイドモール、ガラス周りのメッキモールはクラス相応の質感を表現。一方で、DOHCエンジンを載せたM16に装着されたリアスポイラーは、ウエッジをより強調することで、端正なボディにスポーティなイメージを加えました。

■「セダンは退屈」は間違い

405・リア
横桟のガーニッシュと一体になったリアランプが、当時のプジョーらしさを表現

インテリアは、基本的にボディの直線基調を反映したもの。スクエアなメーターナセルの両端に広がる空調口が先進感を打ち出す一方、ゆったりとした大型のセンターコンソールが落ち着いた表情も生んでいます。

205に引き続き、ピニンファリーナとの協業によるスタイリングは、また新しい魅力を生み出しました。極めてシンプルなボディながら、端正でありつつエレガントでもあり、さらにスポーティな一面までも兼ね備えています。

最近、国内のセダン不況に対するコメントに「3ボックスは退屈だから」といった記事を見かけますが、それは全くの見当違いではないかと僕は思います。要は、単に優れたデザインのセダンが見当たらないだけのことなのです。

●主要諸元 プジョー 405 M16 (5MT)
全長4410mm×全幅1720mm×全高1405mm
車両重量 1170kg
ホイールベース 2670mm
エンジン 1904cc 直列4気筒DOHC
出力 150ps/6400rpm 17.3kg-m/5000rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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