【自動車用語辞典:空調「空気の浄化」】車室内に侵入する排ガスや塵埃、タバコ臭などを取り除く技術

■「きれいな空気」はクルマの新しい訴求力になるかも

●外から侵入する物質とエアコン内で発生する物質を浄化する

快適な車室内空間のためには、温度や湿度の管理とともにきれいな空気質を維持することが重要です。車室内には、車外から排ガスや塵埃、花粉などが侵入し、また室内で発生するタバコや乗員の体臭などが問題となります。

商品力向上アイテムのひとつである車室内清浄手法について、解説していきます。

●車室内空気質の悪化要因と清浄法

車室内の乗員を不快にする、あるいは健康を害する空気質には、車外から侵入してくるものと車室内で発生するもの、さらにエアコンユニット内で発生するものがあります。

車外から侵入してくるのは、排気ガスや塵埃、花粉などです。室内で発生するのは、タバコや乗員の体臭、内装部品からの有機成分などです。また、結露が発生しやすいエアコンシステムのエバポレーターは、カビや雑菌が発生しやすく、エアコン作動時に異臭を放つことがあります。

現在一般的に採用されている空気清浄法としては、集塵や脱臭、抗菌・防カビなどの機能があります。以降で、それぞれの機能について、解説していきます。

車室内空気の清浄法
車室内空気の清浄法

●集塵機能

塵埃や花粉などは、フィルタによって物理的に濾過します。最近は、花粉除去機能付きのクルマも多いですが、これはエアコンを内気循環にして花粉除去フィルタで濾過する方式です。

また、静電気によって排ガスやタバコなどの細かい粒子を除去する静電濾過方式も採用されています。粒子をイオナイザーで一旦マイナス帯電させ、プラスに帯電させた多層構造のフィルタが静電気の力で吸着する仕組みです。

●除去する物質の粒子径

除去対象物質の粒子径は、タバコの煙やディーゼル排出ガス中の黒煙:0.01~0.5μm、PM2.5:1~2μm、花粉やカビ胞子:10~100μm、塵埃:100μm~です。

最近のフィルタは、性能が向上しているので上記のほとんどの粒子を濾過して除去できます。

●脱臭機能

フィルタに活性炭を入れて臭い成分を吸着させる方式が一般的です。また、臭気を酸化分解する光酸化触媒法やマイナスイオン発生器などが採用されています。

光酸化触媒は、光があたることで触媒作用が働き「OHラジカル」を発生します。OHラジカルの酸化分解力は強いので、さまざまな有害物質やタバコの臭いを除去します。清浄器やコーティング剤として採用されています。

●抗菌・防カビ機能

プラズマクラスター・イオン発生器は、プラズマ放電によって活性酸素を発生させ、イオンによって抗菌や脱臭を行います。エアコンユニットに組み込み、エアコン吹き出し口からマイナスイオンのさわやかな空気を供給します。

冷房時には、エアコンのエバポレーターには結露が発生しやすく、条件によってはカビや雑菌が繁殖することがあります。この場合、エアコン作動時にカビの胞子を車室内にまき散らすことになり、異臭だけでなく、アレルギーや気管支の疾病の原因になります。
カビが発生すれば、簡単には除去できないので洗浄するしかありません。

●酸素補給

酸素濃度コンディショナーは、酸素富化膜を利用して酸素を含む空気を吹き出し、車室内の酸素濃度の低下を抑えます。


車室内の空気質については、乗員に不快感を与えない、健康を害さないのは無論のこと、より高いレベルの快適性が求められています。

近いうちに、体に良い健康に良いクルマが、大きなアピールポイントになるかもしれません。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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