●密閉型のインホイールモーターだけじゃない。精緻なボディが自慢のFOMM ONE
東京モーターショー2019に出展された小型電気自動車・FOMM ONE。
タイの洪水被害の際に水に浮く電気自動車ということで日本の新聞などでも報道されご存じの方もいらっしゃると思います。水に浮くだけではなく3~4km/hで「泳ぐ」ことも可能です。
そのFOMM ONEがなぜ東京モーターショー2019に出展したかといえば、日本企業が開発し、タイで製造しているからなのです。
創業者の鶴巻日出夫社長はスズキでの2輪車設計からアラコ(現トヨタ車体)に転職し、一人乗り電気自動車エブリディ コムスや新型コムスの開発に携わります。その後慶應義塾大学環境情報学部の清水浩教授が起業したSIM-DRAIVEに参加しインホイールモーターなどを利用した小型EVの開発に従事。
その後、2013年に独立・起業したのがFOMMとなります。FOMMは「ファーストワンマイルモビリティ」の略とのこと。まさにはじめの一歩ということでしょうか。
水に浮くことで有名になったFOMM ONEですが、これはたまたま水に浮いたわけではなく、密閉度の高い精緻さで設計製造されていることの証左です。
水に浮くことができる精度を追求した発想の源は、起業する直前に起こった東日本大震災などで津波に飲まれて沈んでいくクルマを見て、また様々な洪水被害を見て水に浮くような密閉度の高い精度の生産の重要性を感じたとのことです。
ただし水に浮くというのは保証外の機能であり、あくまでも緊急時に水に浮いて微速航行ができるというもので、水に浮いてしまった後は速やかに整備工場でのメンテナンスが必要となります。
モーターは密閉型のインホイールモーター。モーターからドライブシャフトを介するようなタイプよりも軽量化、構造の簡素化ができます。
水に浮くことばかりが注目されるFOMM ONEですが、実はかなり革新的な電気自動車なのです。バッテリーを交換ステーションで交換できるようにすることで航続距離の問題を無くそうというのです。
タイの一部地域ではすでに実用化されているとのことで、バッテリー交換にかかる時間は10分ほど。この10分間で満充電できるのですから一般的な急速充電器に比べたらかなり早い。
バッテリーの搭載位置も交換しやすい場所となっています。
運転席を見るとハンドルにパドルシフトのようなものがありますが、これはアクセルとなります。そしてペダルはブレーキのみ。これなら踏み間違いによる事故は起きません。
2019年3月よりタイで量産が始まり4月に行われたバンコクモーターショーでは1600台以上を受注するなど、本格的に稼働を始めたFOMM。
東京モーターショー2019では2020年に日本での発売を開始するための準備を行う、との発表もありました。
タイでは4人乗りとして販売されるFOMM ONEですが日本国内では2人乗りの軽自動車登録となりそうだ、とのことです。バッテリー交換ステーションのシステムとともに普及してくれることを祈ります。
(写真・文:松永和浩)