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EV嫌い!と言っていたハズの「頑固一徹・和」こと清水和夫さんが、ジャガー初のEV「I-PACE」でロングドライブを決行! 場所は熊本空港から阿蘇のワインディングを経由し、仕上げはミニサーキットのHSR九州を全開にしました。さて、その電気パワーを清水和夫さんはどう評価したのでしょうか?
■I-PACEはジャガーらしい高級感もあるスポーティSUV!
●モーター音なのにXJの12気筒サウンドを感じる!?
最近いろんなEVに乗っていますけど、テスラが広げたこのEVの世界というのは、着実にプレミアムブランドの中で浸透してきていますよね。静かでトルキーで速い! まさにテスラが言ったように、ポルシェターボと同じ速さを半分の価格で提供できるというのは、非常に大きな魅力なのかもしれません。
でも、EVを使って新しい時代のクルマを作るというのは、本当に正しいEVのあるべき姿かな?と思います。ただ速さだけを追っかけていくようなEVに、ボクはあまり未来を感じません。特に、ポルシェやこのジャガーのように「美しくて速い」というブランドは、ややもするとパワーウォーズに陥ってしまいます。
今回、このI-PACEで評価したい点は、EVで気持ちよく走れる…というだけではなく、自動車としてなにか新しい世界観があるのかな?ということを、空港からワインディング、そしてサーキット(HSR九州)へとロングツーリングをしながら見ていきたいと思います。
●ブレーキ不要!? 街中からワインディングまでワンペダルでイケる
まず街中で驚いたのは、回生ブレーキを使っているのでワンペダルでほとんど街中から阿蘇のワインディングまで、ブレーキペダルを踏まずにワンペダルで済みます。これはすでにBMWのi3がやっていますけど、便利といえば便利ですね。
ただ気を付けなければいけないのは、このクルマは0-100km/hが4. 8秒! その数値以上にアクセルを踏んだ瞬間に凄い加速Gがドカーン!ときます。まるでカタパルトから発進した戦闘機のような加速です。これはいかにもEVという特徴ですが、ちょっとなまして欲しいなというところがあります。ドライバーはアクセルを踏むときに身構えますけれど、助手席に座ったらムチウチ症になる人が出るかもしれません。そのくらい加速Gは強烈です。
いいところもあれば、ちょっと乱暴なところもこのEVには見え隠れします。でも、静かでトルキーで、高級感という部分では非常に新しい世界を持っています。
I-PACEはモーターの音作りに拘っていると聞きました。そういわれてみれば昔のジャガーXJの12気筒エンジン…静かで完全バランスのとれたあのエンジンサウンドが、どこか遠くのほうで…加速をしたときに静かにゴォ~!って聞こえるので、あぁ~これなんだ!って。
ジャガーは多分、昔の12気筒のデータを全部シュミレーションして数値化し、モーターの音を作るときには人間の耳に頼らずにかなり研究したんじゃないかな?という気がしますね。モーター単体でどういう音が出せるのか?というのが、ジャガーのEVに対する拘りだったのかもしれません。
ハンドリングは往年のジャガーの猫足っていうわけにはいかず、もっと引き締まった感じのスポーツカー。むしろFタイプのほうに近い、かなりスポーティなハンドリング性能を持っています。
■サーキットでもハイパワーEVの本領発揮! ヒャ~こりゃいいわ!!
●しかし、エンジン車よりアクセルコントロールが難しい
さぁI-PACEでHSR九州サーキットを走ります。すごい速いんだろうな。ポルシェのEV、タイカンは助手席に乗っていただけでブラックアウトしそうなくらいの加速でしたから。
重心が低いのでコーナーがイイですね。けっこうコレ、タイム出ますね! ストレートは 170km/h近いです。
さっきも言いましたけど、フル加速すると遠くでV12エンジンが唸っているような音がします。EVではなく静か~なエンジンが載っている感じさえします。
ステアリングの手ごたえもしっかりしているし、やはりこういうところはさすがジャガーだなって感じがしますね。しかし、トルクあり過ぎ!
普通、EVでサーキットをガンガン走ると、バッテリーの温度が上がって途中からセーブモードになっちゃいます。だからテスラは富士スピードウェイは2周も走れないくらいなのですが、その辺はバッテリーの冷却システムに起因するので、I-PACEはしっかり冷却性能があり、ハイスピードでガンガン走っても性能劣化がないんですね。
でも冷却するということは、考えようによってはエネルギーを捨てているということ。なので、バッテリーは30度くらいの人肌が一番いいって言われてますよね。
いや~楽しいなコレ。フォーミュラEって全然違う世界のモータースポーツかな?と思っていたんですが、走ってみるといいなぁ。
とにかく、アクセルを踏んだ瞬間に最大トルクが出るので、コーナーでのアクセルコントロールは実はエンジン車より難しいです。あまりにもレスポンスが良いので、直線の加速はいいんですが、コーナーでのアクセルワークに気を付けないと、ブッシュアンダー気味になっちゃうかな。
しかし、まだバッテリーへこたれないね。ターボエンジンにインタークーラーがあるみたいに、今バッテリーを水冷で冷やしています。
【頑固一徹 総合評価】
★★★★★
【頑固一徹 評価ポイント】(10段階評価)
パワートレイン:10点
シャシー性能:8点
インターフェース:9点
(※今回は10段階に細かく評価しています!)
(試乗:清水 和夫/アシスト:永光 やすの/取材協力:ジャガージャパン)
【SPECIFICATIONS】
ジャガー I-PACE ファーストエディション(エアサスペンション仕様)
ボディサイズ:全長4695mm×全幅1895mm×全高1565mm
ホイールベース:2990mm
トレッド 前後(22インチタイヤ装着車):1630mm/1650mm
車両重量:2240kg(パノラミックルーフ装着車2250kg)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電力:388.8V
総電力量:90kWh
最高出力:294kW(400ps)/4250〜5000rpm
※フロント&リアモーター共に 147kW(200ps)/4250〜5000rpm
最大トルク:696Nm(71.0kgm)/1000〜4000rpm
※フロント&リアモーター共に 348Nm(35.5kgm)/1000〜4000rpm
トランスミッション:1速固定
駆動方式:全輪駆動(AWD/フロントモーター×1 リアモーター×1)
最小回転半径:5.6m
サスペンション:フロント ダブルウイッシュボーン/リア インテグラルリンク
タイヤサイズ:フロント&リア 255/40ZR22
航続距離 WLTC:438km/L
電力量消費率 WLTC:224Wh/km
車両本体価格(税込):13,120,000円
【清水 和夫 プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業
1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。
【頑固一徹試乗とは?】
国際モータージャーナリスト、清水和夫が斬る試乗インプレッション『頑固一徹テスト』。頑固一徹・清水和夫が独自の目線でチョイスした新型モデルを、パワートレイン、シャシー性能、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)の3分野で評価、採点し、その合計点によって10段階で評定します。
■頑固一徹 総合評価指数
3〜6点→★
7〜12 点→★★
13〜18点→★★★
19〜24点→★★★★
25〜30点→★★★★★
■頑固一徹テスト 試乗インプレッション
評価軸(3項目)&評価ポイント
パワートレイン 10段階評価(1〜10点)
シャシー性能 10段階評価(1〜10点)
ヒューマンマシンインターフェイス 10段階評価(1〜10点)
【関連リンク】
StartYourEngines HP
https://www.startyourengines.net
国際モータージャーナリスト、清水和夫が主宰する自動車専門動画ウェブメディア。クルマの限界性能と安全性を徹底的に試すダイナミック・セイフティ・テスト(DST)を始め、国内外の新車インプレッション、注目度の高まる先進安全技術、自動運転など、クルマに関するあらゆるジャンルの動画をサイトアップしています。ぜひぜひ!チャンネル登録のうえご視聴ください。
StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX