【SUPER GT 2019】荒れた路面、火山灰、急変する天候に翻弄されつつも存在感を示したModulo勢のオートポリス(PR)

9月7,8日に大分県にあるオートポリスで開催の「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 6 AUTOPOLIS GT 300km RACE」。7日土曜日にはその公式予選が行われましたが、34号車と64号車のModulo勢2台はこのオートポリスをどのように戦ったのでしょうか。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

状況の変化が速さをもたらした34号車。しかし・・・

9月7日の予選をQ1敗退という残念な結果で終えたGT300の34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

7日午前中のフリー走行でも、オートポリス特有の荒れた路面がタイヤのライフを削るうえ、薄っすらと路面を覆うように降り積もった火山灰がグリップそのものを奪っていきました。

道上龍選手
道上龍選手

予選Q1をドライブした道上龍選手はタイヤのチョイスが原因と語ります。「オートポリスは他のサーキットと違い主要レース(SUPER GT、スーパー耐久、スーパーフォーミュラ)以外のレースがあまり行われないので路面にラバーが乗っていなくて荒れた状態になっています。だから予選だけを考えてのソフトなタイヤをチョイスすると決勝では5周くらいしか持たないんです」

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

道上選手は続けて「決勝でのスタートタイヤは予選で使ったタイヤを使用します。Q2に進出していればQ1かQ2どちらかのタイヤが抽選で決まります。そんなルールの中では決勝で使いものにならないタイヤは予選では使えません。ほかのチームの中にはころころ変わる今回の天気予報から『決勝はウェットコンディションだ』と想定し、予選でソフトタイヤを使ったチームもあったようですが、うちのチームはドライの決勝を想定したタイヤ、今回の予選ではハードコンパウンドのタイヤをチョイスしてQ1に臨んでいます」と語っています。確かに道上選手のいうとおり、7日の午前中に行われたフリー走行でも、コースのレコードライン以外はタイヤカスが散らばり、まるで耐久レースの中盤以降の様な路面状況でした。

道上龍選手
道上龍選手

「フリー走行では路面に散らばるタイヤカスを拾ってしまうピックアップなどにも悩まされました。しかも埃っぽいということもあって予選ではアタックラップになろうという時でもグリップのピークが来ない。こんな状態で臨んだ予選Q1で結果が思うように伸びなかった(予選18位)、ということになってしまいました」

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

「予選結果からみればあまりいい結果とは言えませんが、決勝レースではレーシングカーが周回を重ねるごとに路面にラバーが乗ってきますし、火山灰も飛ばしてくれるでしょうから予選の時にライフの長いハードのタイヤをチョイスしていますので上に上がる、追い上げることはできると思います」と道上選手。「うちには追い上げるのが得意な大津がいますから」

大津弘樹選手
大津弘樹選手

その大津選手は「昨年も予選7位から表彰台に行っているので今回の予選結果だけを見て悲観しているわけではありません。路面や天候の状況が変わればその分チャンスも大きくなります」との意気込みを語っています。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

9月8日の決勝レース。グリッドは予選順位通りGT300の18番グリッドとなります。

道上選手と大津選手
道上選手と大津選手

この日のスターティンググリッドは、雲があるものの晴れという天候となり蒸し暑さも感じる夏の陽気。台風13号の懸念はあったものの、7日の予選日でもオートポリスには影響はなく、日付が変わる頃には九州を抜けてしまいました。しかし天気予報ではにわか雨が予想されており、それがいつやってくるのかを見極めることが勝負の分かれ目となります。

雨が降る可能性が高い第2スティントを担当する大津選手は「雨は好きじゃない、むしろ嫌いですね」と語っていますが、シーズン前のテストなどでは嫌いだからこそ集中して雨のドライビングを練習した、という話もあります。

GT300のスタート
GT300のスタート

14時30分にスタートした決勝レース。スタートラップこそ順位変動なく走ったものの、直後にGT500クラスのアクシデントによってセーフティーカー(SC)が導入されます。そしてSC解除となると予選4位だった61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTがミッショントラブルでピットイン。そして18号車 UPGARAGE NSX GT3とのバトルを繰り返しながらも、GT500での10周目には15位までポジションをあげていきます。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

GT500クラスの20周目辺りから第一コーナー周辺で雨が降り出しました。ウェットとドライが混在する路面が各チームのマシンを苦しめ始めます。GT500クラスの30周を過ぎた辺りではホームストレート以外はかなりの雨量となり、各チーム続々とピットイン。しかし交換されるタイヤはレイン、スリックと様々で、ここがひとつの勝負どころとなってきます。Modulo KENWOOD NSX GT3はレインタイヤを装着しピットアウト。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

しかし、Modulo KENWOOD NSX GT3はこのピットアウトで大きなミスを犯します。タイヤ交換に使うインパクトレンチのエアチューブを引っ掛けたままピットアウトしてしまったのです。これは後にピット作業違反のペナルティとなってしまいます。ペナルティはペナルティとして受けることとなりますが、そのペナルティの分までタイムを稼がなくてはいけません。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

しかしピットアウトの直後にSCが導入されると、全チームが同一周回となり前を走るライバルとの差も一気に縮まります。前を行くライバルが見えたSC解除の瞬間からのModulo KENWOOD NSX GT3の走りには凄まじいものがありました。スリックタイヤを履いていたライバルを次々と追い抜き、ピットアウト時に14位のポジションだったところからたった2周で6位まで急浮上します。しかしジェットコースターストレートの先で9号車 PACIFIC MIRAI AKARI NAC PORSCHEがコースアウトし、再びSCが導入されることに。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

3回目のSCがGT500の49周目に解除されると、再びペースを上げてきたModulo KENWOOD NSX GT3。ドライブするのは「雨は嫌いだ」と言っていた大津弘樹選手。しかし好きか嫌いかは別として雨のオートポリスでは光る走りを見せてくれました。GT500の54周目にはなんと4位に浮上!ここまででスタートから14台抜きという暴れっぷりです。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

ここまで速さを見せてくれたModulo KENWOOD NSX GT3ですが、GT500の55周目でピット作業違反のドライブスルーペナルティを消化するためピットロードを走行します。そして最終的には11位でフィニッシュする結果に。

道上龍選手
道上龍選手

ペナルティを受けて順位が落ちたとは言え、ここまで速さを見せたModulo KENWOOD NSX GT3について道上龍選手は「どちらに転がるかわからない天候で、レインタイヤを選択した作戦は間違っていなかった」と語ります。その上で「ピット作業違反によるペナルティで勝負権を失ったことは本当に残念です」とも。また次戦のSUGOについては「今回は天候の変化で他のチームも一斉にピットインして大混乱となりました。SUGOもピットが渋滞しやすいサーキットなのでその辺りを十分に気をつけて臨みます。コースとしては昨年もいいレースが出来たサーキットなので、ポテンシャルを発揮できるように組み立てていきます」。

大津弘樹選手
大津弘樹選手

次戦は昨年のModulo KENWOOD NSX GT3を大きく飛躍させたSUGO戦となります。その立役者だった大津弘樹選手は「事前のテストでもフィーリングは悪くないので、予選からパフォーマンスを見せられるようなレースにしていきたいです」と語ります。

Modulo KENWOOD NSX GT3
Modulo KENWOOD NSX GT3

結果は11位ですが内容はかなり濃いレースとなった今回のオートポリス戦。次戦のSUGOもModulo KENWOOD NSX GT3にとっては得意と言えるコースです。活躍に期待しましょう。

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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