【週刊クルマのミライ】夏の盛りはオープンカーには不向き? 5年間の経験から考える

●“秒”で開閉できるカブリオレなら真夏のオープンドライブもあり

一年でもっとも暑い時期といえるでしょうか、まさに真夏がやってきました。この季節になると、オープンカーで海岸線をドライブなんてシーンをイメージするでしょうが、一方でオープンカーのユーザーからは「真夏にオープンドライブなんて自殺行為」という声も聞こえてきます。

クルマの使い方は千差万別ですから絶対の正解はないのですが、本当に真夏のオープンドライブはナシなのでしょうか、それともアリなのでしょうか。個人的に、2013年から2017年まで5回の夏を「ザ・ビートル カブリオレ」というオープンカーで過ごした経験からすると「真夏のオープンドライブはアリ」というのが結論です。

ただし、条件はあります。カブリオレ、コンバーチブルなどなどオープンカーにも様々な呼び名や違いはありますが、いずれにしても「パッと開けて、サッと閉じる」ことができる機構を有していることです。こうしたオープンカーであれば真夏のオープンドライブはけっして不快でもなければ、自殺行為でもありません。たとえば、炎天下の駐車場にクルマを置いていたとき。乗り込んでまず最初にやるのは屋根を開けることです。これによって車内にこもった熱気を一気に抜くことができますし、そのまましばらく走っていれば走行風では車内は涼しいとさえ感じるほどになります。もちろん、信号待ちなどで停車するとジリジリとした日差しを感じますから、ある程度空気を入れ替えたと思ったら、すぐに屋根をクローズドにしてエアコンを作動させることにはなるのですが……。

そのためにも信号待ちの短い時間で屋根を閉じることのできるオープンカーであることは、こうした使い方をするには必須条件となります。10~15秒程度で開閉できる必要があるでしょう。その意味では、ホンダ・S660やロータス・エリーゼのようなオープンカーは条件を満たさないモデルといえますが、いまどきのオープンカーであればほとんどが短時間で開閉できることでしょう。マツダ・ロードスターには電動機能はありませんが、運転席に座ったまま手動で開け閉め可能です。

たとえば、ザ・ビートル カブリオレはロック解除などの手間もなくスイッチを操作するだけで、9~10秒程度で開閉ができるメカニズムを搭載しています。しかも50km/h以下であれば走行しながらの開閉も可能ですから熱気を抜く効果よりも日差しが強いと感じれば、すぐに屋根を閉じることができました。オープンドライブといっても開けっ放しにするという意味ではなく、状況に応じて開けたり、閉じたりを気軽に選択できると考えればいいのです。もっともクローズドでエアコンを効かせた状態で屋根を開けてしまうのは冷房で使ったエネルギーがもったいないとは感じますが、せっかくのオープンカーですから可能な限り、開放感を味わいたいというのはオーナー心理ではないでしょうか。

では、どんなときに屋根を開けたくなるかといえば、朝夕の時間帯です。とくに夕方になって日差しが弱まり、少し風が涼しいと感じる時間帯であればオープンドライブというのは真夏であってもまったく苦痛には感じません。むしろ真昼間の酷暑とのコントラストもあって、気持ちよさが強調されます。とはいっても我慢大会ではありませんから、暑いと感じたらすぐに幌を閉めればいいのです。いまどきのクルマであればエアコンがすぐに冷風を吹き出してくれるので、汗ばんだ肌をスッとクールダウンしてくれます。それも夏のオープンドライブの醍醐味です。

逆説的にいうと、オープンドライブに最適な季節というのはありません。春には春の、夏には夏の、秋や冬にもそれぞれオープンドライブの味わいはありますし、気持ちよさも感じます。せっかく屋根が開くクルマに乗っているのであれば、外野の声に惑わされることなく、どんな季節だろうと、たとえ短時間であろうと、積極的に開けてオープンであることを味わってほしいと切に願うのです。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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