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■タービンの通路面積を変化させ最適な過給圧を確保
●ディーゼルでは排ガス低減にも有効
ターボチャージャーの課題であるターボラグを解消するために開発されたのが、VGT(可変容量ターボ)です。排気タービン内の排出ガス通路面積を可変化することによって、レスポンスを向上させる機構です。
VGTの基本特性と効果について、解説していきます。
●ターボラグとは
加速時に排出ガスのエネルギーが増えても、慣性質量のあるタービンの回転はすぐには上昇しないため、過給圧の立ち上がり遅れが発生します。これが、「ターボラグ」です。
また、定常運転時でも低速では排出ガスの運動エネルギーが小さいため、過給圧が上昇せず、低速トルクが向上しないという問題もあります。
ターボラグは、加速レスポンスの不良だけでなく、ディーゼルエンジンの場合はスモーク(黒煙)発生の原因となるため、問題視されます。
●ターボの基本特性を決めるA/R
レスポンスを良くするために、タービンとコンプレッサーの軽量化やタービンシャフトにボールベアリングを採用したケースもありますが、コストが課題となっています。
ターボの基本性能を決める重要な設計要素に、A/Rがあります。ターボに入った排出ガスは、吹き出し口からタービンに向かって吹き出します。吹き出し口の断面積Aと、その中心からタービン中心までの距離Rの比A/Rがターボの性能を大きく左右します。
A/Rが小さいと低速型、A/Rが大きいと高速型になります。例えば、吹き出し口断面積Aを小さくすると、排気流入ガスの流速が高まり、タービンは高速回転します。一方で、高回転になり流入ガス量が増えると、吹き出し口断面積Aが小さいので排出ガス量が制限されてタービンが効率よく回らなくなります。
●VGTの仕組みと効果
吹き出し口断面積Aを、エンジン回転に応じて可変化すればA/Rが変わり、低回転から高回転まで連続的に最適な過給圧が確保できます。この考え方で、さまざまな可変ターボが開発されています。
可変ターボの中で最も普及しているのが、VGT(可変容量ターボ)です。
VGTは、タービンハウジングのスクロール内部に排出ガスの流れを制御する小型の可動式ベーン(翼)を多数配置しています。
配置された可動式ベーンの開度を、運転条件に応じて電動アクチュエーターなどで制御します。
低速条件では、ベーン間の隙間を絞って(開度小)、タービンに吹き出すガス流速を上げます。少ない排出ガスエネルギーでも、過給圧を上げることができレスポンスが向上します。
一方回転が上がり、排出ガス流量が十分になると、ベーン間の隙間を開けて(開度大)、絞りを減らして過給圧を制御します。
●可変ターボはVGT以外にも
VGT以外の可変ターボとしては、吹き出し口を2分割して、低速では片方だけ、高速では両方使う「ツインスクロール・ターボ」、吹き出し口を2分割して制御フラップで切り替える「バリアブルフロー・ターボ」、吹き出し口に可動フラップを装着した「ジェット・ターボ」などがあります。
ディーゼルエンジンでは、出力向上だけでなく、排出ガス低減のためにターボを装着するのが一般的です。
排出ガス規制の強化とともに、ターボの応答遅れに起因する加速時のスモーク発生が許容できなくなり、最近はレスポンスに優れたVGTを使うディーゼルエンジンが増えています。
一方でガソリンエンジンでも、ダウンサイジングターボの普及の中で、VGTを使うエンジンが出現し始めています。
(Mr.ソラン)