スバル新世代デザインはレガシィから始まった。80年代は技術とデザインの幸福な融合!【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:番外編】

4月5~7日、幕張メッセで開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2019」。展示された往年の名車から「グッドデザイン太鼓判」の番外編として、メーカー系出展車のデザインをチェック。3回目はスバルの2台に注目です!

今回、国内メーカー5社による共同企画出展が行われましたが、そのテーマは「百花繚乱 80’s」。旧車ブームの中心となる80年代のブースにスバルが出展したのは、初代のレガシィとアルシオーネの2台です。

初代レガシィ(BF5型)の登場は、いわゆるビンテージイヤーの1989年。従来のレオーネとはまったく異なる骨太の基本スタイルは、すべてを新設計した同社の意気込みを示したもの。展示のワゴンでは、ウエッジしたボディに載せたキャビンのリアに重心を置き、スポーティなプロポーションを獲得しました。

走りを示すブリスターフェンダーは、力強いショルダーラインへ巧みに溶け込んでサイド面の品を確保。また、スラントしたフロントフェイスはスポーティですが、構成はシンプルで実に端正。リアは、低く置かれたランプが視覚的な重心を下げ、赤いガーニッシュが広いリアパネルにアクセントを与えます。

そのレガシィに先駆けること4年、初代アルシオーネ(AX9型)は1985年の登場。セクレタリーカーを意識したかのようなクーペスタイルは実にアメリカン。明快なウエッジシェイプボディと、すべてのピラーをブラックアウトしたキャビンとの組み合わせは、恐らくスケッチ段階では極めて魅力的だったと思わせます。

しかし、先進のリトラクタブルランプは個性を消し、Aピラー下で段を付けたボディはいささか漫画チック。平板なサイドボディと、左右いっぱいに広げたリアエンドにも子供っぽさが。このあたりのリベンジは、2代目のSVXの登場を待つことになります。

ところで、今回展示の2台は個人オーナーから譲り受けたものを、SUBARUテクノ株式会社でレストアしたもの。そこで、同社レストアチームの山田晃一氏に80年代車の魅力について聞いてみました。

「スバルで言えば、それまでは機能、技術重視で後回しになっていたデザインの扱いが、このレガシィから変わったのが印象的です。いいデザインを成立させるために技術が協力するようになった。その後、2代目のデザインにオリビエ・ブーレイ氏を招聘したのが象徴的ですよね」

当時は「社員が皆空を見上げて働いている」ような熱い雰囲気があったという山田さん。ただ、最近はその時代を知る世代もすっかり減ってきたと言います。

「いまスバルでは、若い社員に向けて旧車の運転研修を実施しています。知識はあっても、やはり実際に運転してみないとクルマは理解できない。実はこのレガシィも研修用で、機構面のレストアも完璧に仕上げてあるんです」

ヘリテージを語ることが多くなった各メーカーですが、スバルもまた過去を踏まえつつ、最新のデザインに取り組んでいるようです。

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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