4月5~7日、幕張メッセで開催された「AUTOMOBILE COUNCIL 2019」。展示された往年の名車から「グッドデザイン太鼓判」の番外編として、メーカー系出展車のデザインをチェック。トップバッターはトヨタからです。
「Neo classic 80’s」と、まるで本コラムのタイトルのようなテーマを掲げたトヨタは、メインの「トヨタ博物館」ブースと国内メーカー共同企画ブースに6台の旧車を展示。ここではその中から3台をピックアップします。
1986年発表の2代目ソアラ(MZ20型)は、初代が持っていたエキゾチックな風合いは消えたものの、角を丸めて面一化を進めたボディが近未来的な先進感を表現。より薄く幅広になった前後ランプや華奢なBピラーが、スリムなボディと組み合わさって独特のスマートさを打ち出しました。
コロナの名前が外れた1984年の5代目マークⅡ(GX71型)は、真っ白なボディに繊細な格子グリル、ハードトップによるグラッシーなキャビン、トドメの「クリスタルピラー」という光りモノをセット。クラウンの下ながら、独自の「ハイソ感」を作り上げました。
1985年の初代カリーナED(ST160型)は、わずか1310mmのルーフにトヨタ初のピラーレスハードトップを採用、4ドアとは思えないスリムさに。グリル一体のフロントランプ、ガーニッシュを挟んだリアランプが横長を強調、圧倒的なワイド感を生み出しました。
展示を企画したトヨタ博物館副館長の増茂浩之氏によると、80年代をテーマにしたのは単なる懐古趣味ではないそう。オイルショックを経てようやく景気が安定した80年代のクルマは、現行車にも大きな影響を与えていることを伝えたかった、とのこと。もちろん、デザインもそこに含まれます。
「ハイソカーと呼ばれたマークⅡであっても、この時代は5ナンバー枠が基本。薄いボディやフードでスタイリッシュに見せつつ、その中で豪華さやスポーティさを打ち出す工夫に溢れていました。機能はもちろん、造形表現の技術も一気に向上し、とにかくチャレンジングなデザインが行われたのです」
80年代終わりには若いスタッフによる「Yプロジェクト」が発足、セラなどの斬新な商品を開発するなど、社内には熱い空気があったといいます。さらに、増茂氏は近年の旧車ブームにも強い関心があるそう。
「実は、いま80年代車が若者にも受けているんです。新型車と比較しても旧車の方がいいと言う。で、どうも単にカッコいいとかカワイイだけじゃない、何か惹かれるモノがあるようなんですね。まだそれが何なのかは分からないのですが、もし解明できれば新しいクルマにも応用できると期待しているんです」
80年代半ばから90年代へかけてのトヨタデザインは、まさに向かうところ敵なし。その資産に博物館が着目しているのは興味深い話です。もちろん、その秘密が解明されれば、トヨタに限らず全メーカーにとっても画期的な発見になるでしょう。
(すぎもとたかよし)