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●気になる所① 死角が大きく存在価値のない三角マド
昨今のクルマでは珍しく、運転席からの視界の確保ができていません。ドライバー席側のAピラー付け根に近い三角窓が、運転席からの視界確保に、全く生かせていないのです。e-NV200は背が高く、前席のウィンドーラインも低いため、ドライバー席真横の視界は良いのですが、太いAピラーと巨大なサイドミラーが合わさり、右前の下付近がほとんど見えません。
着座位置が高いため、遠くを見渡すことができて、視界が増えたように感じますが、これでは肝心の足元を見逃してしまいかねません。例えば、狭い現場や、散らばった場所で、細かな機動力を求められるクルマには、より視界確保を重視した設計をしてほしかったです。
●気になる所② 先進車なのに古いデザイン、遊び心の欠如、そして価格
ベースが商用バンですので、ついた汚れサッと拭いて掃除がしやすいプラスチックの内装素材にするのは正しい設計と考えますが、洒落っ気の一切無い内装デザインには閉口してしまいます。同社のセレナの方が圧倒的にクオリティの高い、考え抜かれた内装をしています。そのセレナと比べるまでもなく、まるで20年前のクルマかと思わされるほどのデザインは「日産は売る気があるのか?」と思いたくなるほどです。
エクステリアデザインも、無味無臭が「良し」とされる商用バンのまま。さっぱりとした不細工面だと、これだけの高額車を買いたいというユーザーはなかなか現れないのではないでしょうか。流行りのミニバンのようにギラギラにする必要はありませんが、ニッサンの武器である「EV」なのですから、一工夫も二工夫もしてほしい所です。
例えば、スズキのスペーシアギアなど、流行の軽キャンプのベクトルに向けた車両があります。イエローボディにアウトドアを彷彿させるブラックの加飾デザインなど大変に上手で、限られた予算とリソースの中で、工夫した魅力的なクルマを作ることに成功しています。
ちなみにe-NV200、キャンピングカーのベース車としての活路は十分にあります。先日、本社ギャラリーでリーフを使った車中泊イベントを実施していたりと、電源カーとしての用途も注目している日産ですから、電気と水を使えるキャンピング仕様の内装装備とアウトドアが似合うデザインをした「e-NV200キャンピングカーバージョン」を限定で出すなど、我々ユーザーを楽しませてくれるような提案が欲しいものです。
(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)