【横浜ゴムウインター試乗会・その3】トラック用タイヤ&産業用タイヤの底力に感動する

●「ウルトラワイドベース」のスタッドレスタイヤの効果を体感

2019年初頭の横浜ゴムウインター試乗会が北海道にある同社のテストコースで開催されました。普段、一般ドライバーがあまり知らないトラック&バス用タイヤなどについて、その進歩度の高さを知ることができました。

東京に住み、乗用車に乗っていると、タイヤは夏タイヤが標準でスタッドレスタイヤは特殊なもの……という考えになりがちですが、トラック&バスタイヤの世界ではちょっと違うようです。

トラック&バス用タイヤの世界には大きく3種類に分けられるタイヤが設定されています。それはサマータイヤ、スタッドレスタイヤ、そしてオールシーズンタイヤです。横浜ゴムが2017年に販売したデータを見ると、もっとも売れたタイヤはなんとスタッドレスタイヤで45%と約半分、続いてオールシーズンタイヤで37%、サマータイヤはわずは18%という値です。

トラック&バス用では履き替えやタイヤ管理の手間を削減したい、突然の雪でも走れるタイヤが欲しい、ということでスタッドレスタイヤの需要が大きく、北海道や東北では秋にスタッドレスタイヤを装着し新品に近い状態で冬を越してそのまま春、夏と使用してふたたび秋に新品のスタッドスタイヤに替えるというパターンがほとんどだといいます。

関東甲信越や中部ではオールシーズンタイヤを寿命に合わせて使い、冬の降雪時には必要な場合にタイヤチェーンを使うというパターン。近畿や四国、九州ではオールシーズンタイヤとスタッドスタイヤを履き替えて使うというパターンだといいます。

もちろん関東のトラック&バスでも、東北地方へ行く可能性のあるタイヤはスタッドレスタイヤを装着することになります。トラック&バスではなによりも安全に走れることが重要なのです。騒音や乗り心地もある程度は許容しています。ただし、高速バスなどはサマータイヤを使っていることが多くなるとのことです。

コストが重要視されるトラック&バスタイヤの世界ではちょっと面白いことが起きています。トラックやバスではダブルタイヤという方式が使われることがあります。単純にダブルタイヤをシングルにできればタイヤの数は半分になりますのでタイヤのコストを減らすことができます。

そこで横浜ゴムが開発したのがウルトラワイドベースという技術を使ったタイヤです。今回はそのウルトラワイドベースを採用した902Lをリヤに装着、フロントにはZEN902ZEを装着したトラクターヘッドの同乗試乗を行いました。

タイヤサイズはフロントが295/80R22.5、リヤが455/55R22.5です。455/55R22.5というサイズは、従来のダブルタイヤ11R22.5のダブルタイヤ状態でのタイヤ幅を100とすると80%の幅を確保していて、重量でもタイヤとリムを合わせて約20%の低減を可能にしています。

重量級のボルボトラックヘッドですが、圧雪路面でボディを大きくロールさせてスラロームを披露しました。助手席に乗っているときの感覚はごく普通のスラロームですが、これを外から見るとすごいものです。ボディがロールするということは、タイヤが滑っていない証拠です。ガッチリと路面に食いつくタイヤと大きくロールするボディからは、横浜ゴムのスタッドレスタイヤの凄さをまじまじと感じることができました。

また、各種の産業用タイヤも展示され、そのディテールに興味深い部分を見出すことができました。面白かったのは、フォークリフトのエアレスタイヤのスノー用。フォークリフトは冷凍倉庫で使われることも多く、スノータイヤは年間を通じて需要があるのだという。また、横浜ゴムが2016年に買収したアライアンス社の農耕機用タイヤも展示されていました。

(文/諸星陽一)

この記事の著者

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諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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