横浜ゴム「アイスガードセブン」は2023年の冬道を安心の性能で支えるスタッドレスタイヤ

■最悪猛暑の夏ながら冬は確実にやってくる

有史以来、最悪ではないかと言われた猛暑を過ごし、やっと9月に入りましたが、今年もしっかり冬はやってきます。

世界的にみても、夏と冬の気候がここまで大きく異なる日本のような地域は珍しいと言われ、その特性が、日本の自動車関連産業での各種性能を大きく飛躍させたとも言われています。

●日本の厳しい気候に育てられたスタッドレスタイヤ

横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ。アイスガードセブンiG7
横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ。アイスガードセブンiG7

スタッドレスタイヤも、そうした日本の厳しい気候によって鍛えられた製品のひとつです。

信じられないかもしれませんが、極寒の地でもサマータイヤのままで凍結路面を走れます。なぜかというと、氷の上でタイヤが滑るのは、氷とタイヤの間に水膜ができるからで、氷の表面温度が0度程度では氷が解けることがないので、水膜も発生せず、サマータイヤで走れるというわけです。

日本の冬の路面状況は、凍結路面だけではありません。新雪、圧雪、シャーベット、ウエット、そしてドライ…と、さまざまな路面がめまぐるしく現れます。同じ地域であっても、住宅街、商店街、郊外では路面状況が異なることも多く、そうしたさまざまな路面にスタッドレスタイヤは対応する必要があり、その厳しい状況が日本のスタッドレスタイヤを鍛えてきました。

横浜ゴムは、1985年に同社初となるスタッドレスタイヤ「ガーデックス」を市場投入。現在はブランドネームを「アイスガード」に変更していますが、登場以来、進化を続けて来たタイヤです。

最新の横浜ゴムのスタッドレスは、2021年9月に発表された「アイスガード7/iG7」です。クリッカーでは2022年にもレポートをお届けしていますが、2023年2月に北海道旭川で行われたアンコール試乗会で感じた感想をお届けします。

●一般道でさまざまな路面をテスト

試乗は、テストコースと一般道の2ステージで行われました。

一般路の試乗ではカローラ・ツーリングを使用
一般路の試乗ではカローラ・ツーリングを使用

まずは一般道での印象です。試乗車はカローラ・ツーリング。装着サイズは205/55R16 91Qです。旭川市内は圧雪路とシャーベット路が入り交じり、なおかつ深いわだちも存在。タイヤにも車にも厳しい状況ですが、大きな不満はなく走れました。

●シャーベット路も安心の排水性能

特にシャーベット路面は、グリップを確保することが難しいと言われます。シャーベット路面はいわば、泥だらけの泥濘路(でいねい路/ぬかるみみち)のような状況です。

シャバシャバになった雪は、雪道とウエット路面の中間的な要素を持っています。ウエット路面では水深が1cmを超えるようなことは珍しいですが、わだちの中にできたシャーベット路面の場合、1cmオーバーの深さになることはざらで、場合によっては3~5cm程度になることもあります。

こうした路面状況であっても、立ち往生しない性能を持っているのはとても大切なことで、アイスガード7はそれを実現しています。もちろん、ドライと同じ性能を確保できるわけではありませんが、その場を乗り切る性能はとても大切です。

わだちに沿って走ると、まるでレールの上を走っているような状態になりますが、そうしたなかで、わだちから抜け出せる性能も大切です。今回の試乗ではあまり深いわだちはありませんでしたが、わだちを乗り越えて自分が行きたい走行ラインを選ぶことも楽に行えました。

わだち乗り越えができないと、思わぬトラブルに落ちいることもあります。この性能のことを「ワンダリング性能」といいますが、ワンダリング性能は安心感につながる大切な性能です。

●圧雪ワインディングでも快適なハンドリング

圧雪ワインディングは快適でスポーティな走りを体験できた
圧雪ワインディングは快適でスポーティな走りを体験できた

ノーズを郊外に向け、大雪山旭岳のロープウェイ乗り場を目指します。

途中の忠別湖のあたりからは、完全な圧雪路面、そして右に左へ湾曲したワインディングとなっていきます。上り勾配では、トラクションの掛かり方が重要です。走行中の中間加速については何の問題も感じませんでしたし、いったん停止しての発進加速でも不満はありません。

下り勾配ではアクセルペダルを緩めて、フロント荷重とした状態でコーナーへ入っていくことを何度か試しました。リヤの荷重が減っているので、リヤタイヤが滑り出しますが、その状態でのコントロール性もいいものでした。いったん滑り出すと収拾がつかなくなるタイヤもあるのですが、滑った状態でもグリップが完全に失われることはないので、コントローラブルな印象でした。

●テストコースで定量的評価を行う

屋内氷盤路でのブレーキテスト
屋内氷盤路でのブレーキテスト

上記の試乗を半日で行い、翌日にはテストコースを使っての定量的な試乗となりました。一般道ではフィーリング重視の試乗ですが、テストコースでは、タイムや距離などを計測し、定量的な評価とフィーリングをプラスして評価できます。ここで使われた車はカローラセダン4WDで、タイヤサイズは195/65R15 91Qです。

●屋内氷盤試験場を使ったアイスバーンでの制動テスト

まずは、屋内氷盤試験場でのブレーキテストです。屋内氷盤試験場はテストコース内に作られた試験路で、その名のとおり、屋内で氷の上を走れるようにしている設備です。以前は屋外で自然に凍った路面を使って試験を行っていましたが、2018年に路面の状態などを安定させるために屋内氷盤試験場を開設。2020年からは冷媒装置を導入し、より路面状況の安定度を図ってきました。

ブレーキテストでは、アイスガードセブン、氷上専用トレッドを採用した氷上特化タイヤ、スリックタイヤの3種の比較試乗をしました。使われているトレッドゴムは、どのタイヤもアイスガードセブンに採用されているウルトラ吸水ゴムです。スタートし30km/hになったところでアクセルをオフ、惰性で走りつつ指定地点でフルブレーキングし停止距離を記録します。その結果がこちら。

アイスガードセブン:13.5m
氷上特化タイヤ:13.0m
スリックタイヤ:22.7m

試験用に特別に製造された氷上特化タイヤ
試験用に特別に製造された氷上特化タイヤ

氷上特化タイヤはアイスガードセブンに対して、接地面積が13%広く、サイプエッジ(トレッドパターンに刻まれた細かい溝のエッジ成分)が38%多い設計で、かなり有利な状況かと思いきや、アイスガードセブンと大きな差がありません。

アイスガードセブンは、舗装路やウエット路面での性能を含めたトータルバランスを向上しつつ、氷上制動性能を確保していることが確認できます。

また、スリックタイヤは溝やエッジ、サイプなどがないタイヤで、ウルトラ吸水ゴムの性能だけでこの制動距離を実現しているのにもびっくりです。

●雪上ブレーキでも安定した総合性能を確認

屋外圧雪路を使ってのブレーキテスト
屋外圧雪路を使ってのブレーキテスト

同じタイヤ、同じ車両で雪上路での試験も行いました。雪上路はオープンエアで、自然に積もった雪の路面です。試乗は各5回行い、各停止距離を補正し平均化したものが下記データです。実施速度は50km/hで、氷盤路よりも速くなっています。

アイスガードセブン:30.2m
氷上特化タイヤ:27.0m
スリックタイヤ:34.0m

氷上特化タイヤというネーミングですが、サイプ成分が増えているので、雪上での制動距離はアイスガードセブンに比べて10%程度短くなっています。

また、スリックタイヤはアイスガードセブンに比べて10%強、制動距離が長くなっています。氷上ではタイヤと路面の間に発生した薄い水膜をいかに除去して、タイヤと路面(氷盤面)を接触させるか?がグリップさせるうえで大きなポイントですが、雪上では別のメカニズムでグリップを得ています。

以前は、雪をかみ込んで吐き出すせん断抵抗というものが重要とされてきましたが、現在ではそれ以上に、接地面積が重要であることがスリックタイヤの性能で証明されています。アイスガードセブンは、やみくもに溝やサイプの比率を増やすのではなく、接地面積とサイプや溝とのバランス(シー/ランド比)を適切にすることで、総合性能を確保しています。

●氷盤での定常円旋回も安心して行えるバランスのよさ

最後にテストしたのは、2023年1月に新設された屋内氷盤旋回試験場という施設を使っての、氷上定常円旋回でした。ここは、安定した氷盤路面での旋回試験を目的に作られたコースで、10~22mの旋回半径で定常円旋回が可能です。ここでも3種のタイヤを使って、円旋回のタイムを計測しました。タイムの平均値は以下のとおりです。

屋内で氷盤旋回テストができる貴重な設備
屋内で氷盤旋回テストができる貴重な設備

アイスガードセブン:18.2秒
氷上特化タイヤ:18.0秒
スリックタイヤ:18.4秒

タイムには大きな差が現れていないように見えますが、ドライブしたフィーリングはそれなりに異なったもので、もっともコントローラブルだったのは氷上特化タイヤです。

定常円旋回では、車の挙動に対してアクセルに強弱を付け、ステアリングを切り増したり戻したりします。そうした操作の際の反応がもっともよかった(つまり操作に対して早い時間で反応する)のが氷上特化タイヤで、ついでアイスガードセブン、スリックタイヤという順です。ここでもアイスガードセブンが、見事にバランスよく設計されていることがわかりました。

(諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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