国際ドリフト杯は人間が審査! これからのドリフトの審査方法を考える【FIA IDC】

DOSSは、車両に搭載したGPSや角速度センサーを使って、最高速度、区間平均速度、振り出しや振り返しの際の姿勢変化の速さ、ドリフト中の姿勢の安定性といった項目を計測します。そして、それらの計測値を、従来の人間の100点満点法の感覚に合うように独自のアルゴリズムで計算し、得点を算出しています。

これはこれで一定の成果を上げていて、エントラントから採点のブレや贔屓が問題にされるようなことはなくなりました。

いっぽう、今年のFIA IDCはこのDOSSを使わずに、人間の審判員を使った方法で単走の審査を行いました。車速の計測だけはDOSSを使ったのですが、その割合は得点のうち100点満点のうち10点分だけで、使われた計算式も通常のDOSSよりずっと単純なものでした。

FIAとしては正確性や公平性という観点から、機械審査自体には賛成のようです。しかし、ドリフトをもっと世界的に普及させたいなかで、DOSSはシステム的に各国どこの大会でも採用するにはハードルが高すぎる、という理由と、今回は人間の審査でもできることを見せたかったため、DOSSは使わず、人間の審査で競技を行うことにしたそうです。

とはいえ、FIA IDCで行われた人間による審査方法は、日本で一般的に行われている審査員ひとりひとりが100点法で行う採点とはちがいました。

むしろアメリカを中心に開催されているFormula-Dの採点方法に近いものでした。それは、3人の審査員のうち、ひとりはラインのみを見る「ライン担当」、ひとりは角度のみを見る「角度担当」、もうひとりは、振りの鋭さや姿勢の安定性を見る「スタイル担当」という分業制をとるものです。

3人の持ち点は30点ずつ。それに機械で測定した「車速」のぶんの10点を加えて100点法としました。車速の項目が入っていること以外はFormula-Dを見慣れているひとにはおなじみの採点方法でしょう。下の写真が今回の審査員。左が「スタイル」担当のロシアのディーマ、中央が「ライン」担当のアメリカのライアン、そして右が「角度」担当の日本の神本サンです。

というわけで、2日連続で行われたドリフト競技は、まったくちがう方法によって単走の審査が行われたのです。しかし特にちがうのは、機械か人間かということではないかもしれません。いちばんのちがいは、「ライン審査」があるかどうかです。

以前はD1GPもラインが審査項目に入っていました。しかし、DOSSを導入したときに、「速く、角度をつけて、安定した状態で走れるならばラインはどこを通ってもいいんじゃないか」という考えかたから、ライン審査は廃止されました(ただしコースアウトはD1でも減点されます)。

というわけで、D1GPとFIA IDCでは、まずライン審査の有無がちがったわけですが、見た感じの感想をいえば、やっぱりFIA IDCの審査のようにライン指定はあったほうがいいかな。コンクリートウォールに寄せれば「ウォー!」って思うし、クリッピングポイントをなめていけば「上手い!」って感じがするし。見た目にわかりやすいですよね。

それに、もはや世界的にドリフト競技ではライン指定があることが標準的になっているようなので、それならもう日本もそれに合わせたほうがいい。ちなみに下の写真のオレンジと白の棒が、寄せるべきポイントです。

ほかの項目についてはどうでしょうか? DOSS審査では、角度、速度といった要素ごとの得点は表示されません。コースを5つに区切ったセクターごとの点数が出るんですね。だから、表示されたスコアは「第○セクターはよかったけど、第□セクターは落とした」というような見方になります。

それに対して、FIA IDC方式のスコアは「ライン」「角度」「スタイル」といった要素ごとの得点が出ます。「ラインはいまいちだったけど、角度はあったね」という見方になるわけです。ただし、角度が大きくついていたコーナーとそうでないコーナーがあったとしても、そういうことはわかりません。

この記事の著者

まめ蔵 近影

まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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