金曜日だけのメニュー「ホンダ社食のカレーうどん」はどれくらい汁跳ねするか実食して検証してみた!

作業服の役目は、着ていた服や体を汚さないために着替えるためのもの。だけではないのです。その作業着が汚れることでオイル漏れや何かの不具合で生じたものがそのシミなどによって判明することもあるのです。お客さんの服を汚す前に気付くこともあるでしょう。

そのため、ホンダの作業着は純白なのです。何事もなければ一週間、真っ白な状態で過ごせるわけです。

1960年、(株)本田技術研究所が本田技研工業(株)から独立して設立されたときのカット。モノクロですが作業着は見事にみんな真っ白!

なにか汚れがついたとしても、週末のお休みには、洗濯して月曜日にまた綺麗な作業着を来て仕事に挑めるわけで、それを見越して「じゃあ、金曜日には思いっきり食べ物の汁が付いても大丈夫じゃないか!」ということで、ホンダ関連の施設では、社員食堂などで、史上最大に汁跳ねが激しい食べ物としてカレーうどんが供されるようになったと言います。

では、そのホンダカレーうどんはそれほどまでに汁跳ねが激しいのか、取材班はその真相を探るべく、ホンダの純正アクセサリーや本格チューニングパーツ、さらにはスーパーGTでのレース活動も行うホンダ・アクセスの社員食堂に潜入取材を敢行することとしました。

まずは、社外の人間にとって前述の「ホンダでは金曜日にカレーうどんが出るらしい」というのも噂レベルでしか聞いたことがありません。本当に出ているのでしょうか?

とある金曜日11時55分くらいの社員食堂はガランとしていました。混む時間帯を避けて早飯、遅飯が当たり前のいい加減な業界に生きてきた私にとっての「社員食堂なんて美味しくなくて、誰も食べに来ないんじゃない?」という予想は12時を知らせる音楽とともに大きく覆されました。

次から次に社員の皆さんが入ってきます。老若男女というと大袈裟かもしれませんが、OLっぽい人も、管理職っぽい人もどっと押し寄せてきて、あっという間にそれぞれのメニューに対して人の列が出来上がります。

で、注目すべきはやはりうどんの列です。月〜木でも「カレー」や「うどん」のメニューはあるそうですが金曜日のうどんはほぼ「カレーうどん」が提供され、何事にも勝利を祈念した「カツ」がトッピングされます。

やはり、金曜限定メニューということもあり、ディーラー・トップセールスマンの売り上げ棒グラフのごとく、みるみるその数字を積み上げていきます。

やはり、間違いなく金曜日の主役はカレーうどんのようです。ちなみに、カレーそばも選べるのですが、見たところ7/3から8/2くらいでうどんのほうが人気だったようです。

さて、本題である「人気カレーうどんはそれほど汁跳ねするのか?」の検証のため、ホンダ・アクセス近くの「紳士服のア●キ」で真っさらで真っ白なワイシャツを購入しました。普段着ているユニ●ロのコットンシャツよりも高かったです。

舞台は整ったところで、いよいよ名物カレーうどんと対峙します。普段は紙の前掛けをするか、丼からの距離5cm以内から唇をそれ以上あげないようにしていただくカレーうどんですが、今回ばかりは気にしません。

犬の食事のようなスタイルを強いることなく、通常のテーブル-座高間の高さから啜り上げます。

子どもの頃、叱られると分かりながら泥んこ遊びが止められなかったような、すごい悪いことをしているような罪悪感が心地いいです。やってることだいぶちっちゃいですが。

いままでどんな麺類でもこれほどない!というくらいに啜り上げて完食しました。

気持ち良かった。問題の汁跳ね現象への検証ですが、なんとも不甲斐ない感じでした。いや、本気で下ろし立てのシャツをこんなにしちゃったら奥さんの大目玉を食らっちゃうのは確実です。けれど、写真で見る限り、「あー、どことなく染みつけちゃったんだね。けど、大丈夫じゃねぇ?」程度です。

いや、そりゃ、冬が近づくとテレビのバラエティ番組でそれほど熱くないおでんのこんにゃくを手先が誤ったように顔に付着させるくらいのムリクリ感で、べったりと麺の魚拓のごとく跡形をつけることだってできましたよ。しかし、きょうびヤラセやステマはwebメディアの存続を左右しかねないと思い、あえてこの程度で勘弁してしまいました。別に、アオ●のワイシャツを次の冠婚葬祭に使おうという下心が働いたのはそれほど大きなきっかけではありません。

もちろん、カレーうどんもカツも美味しかった。個人的には、うどん屋さんのカレーだからと言って出汁の多いカレーうどんは好きではないです。あくまでカレーライスのライスがうどんに置き換わったようなカレーうどんが好きなのです。出汁はちょっと入っていればいい。その辺のバランスが自分好みのカレーうどんでした。シャパシャパしてないんですね。シャパシャパしてるとカレーが麺に絡まないじゃないですか。結果、ルーが残る。そうするとご飯でも食べたくなる、という過食方向へ進んでしまう、それはよくない。そんな味と健康面と午後のお仕事へのバランスも考慮されているものだと納得出来る一品でした。

本田宗一郎さんの時代に生まれたこの風習、高度経済成長やオイルショックに排ガス規制はもちろん、バブル期とその崩壊を経て、リーマンショックを乗り越えて生き残っているのが不思議な気がしました。その間に日本の食文化は米離れ、パン食の代等、イタ飯ブーム、お取り寄せ文化、外食ならぬ中食の誕生など激変の時代をホンダのカレーうどんは生き抜いたわけです。そもそも社員食堂も失われつつあるものの一つかもしれません。

そこを生き抜いたカレーうどんに、従来からのホンダらしさを感じました。すでにある自転車にエンジンをトッピングするだけで今までにない大きな価値が生まれる。そういった発想から始まったホンダの原点がカレーうどんにもっとも息づいてるように思えてならないのでした。

(clicccar編集長 小林 和久)

この記事の著者

小林和久 近影

小林和久

子供の頃から自動車に興味を持ち、それを作る側になりたくて工学部に進み、某自動車部品メーカへの就職を決めかけていたのに広い視野で車が見られなくなりそうだと思い辞退。他業界へ就職するも、働き出すと出身学部や理系や文系など関係ないと思い、出版社である三栄書房へ。
その後、硬め柔らかめ色々な自動車雑誌を(たらい回しに?)経たおかげで、広く(浅く?)車の知識が身に付くことに。2010年12月のクリッカー「創刊」より編集長を務めた。大きい、小さい、速い、遅いなど極端な車がホントは好き。
続きを見る
閉じる