【週刊クルマのミライ】スバル・フォレスターに初採用された「e-BOXER」の横展開に期待大

さて、新型フォレスターは2.5リッターエンジン車を中心のグレード構成としていますが、なぜ2.0リッターエンジンのe-BOXERを積むアドバンス・グレードを用意したのでしょうか。純粋にコストを考えれば、スバルの水平対向エンジンは排気量によるコスト差はほとんどありませんから、2.5リッター直噴エンジンにモーターを組み合わせるという選択も考えられたはずです。

しかし、その点についてフォレスターの商品企画を取りまとめたプロジェクトゼネラルマネージャーの布目智之氏にうかがうと以外な答えが返ってきました。

いわく「フォレスターのお客様には2.0リッターを求める方もいらっしゃいます」という。しかし、アドバンス・グレードは装備の違いがあるとはいえ、新型フォレスターでは最上級グレード(もっとも高価な設定)となっています。フォレスターに2.0リッターを求める声があるというのは理解できますが、その回答が最上級グレードというのは素直に納得できません。むしろ、価格やグレードの立ち位置からすると、e-BOXERは従来の2.0リッターターボの後継といえそうです。

しかしながら、公道で試してみたアドバンス(e-BOXER)の走りは、ターボの代わりになるほどのインパクトはありませんでした。たしかにゼロ発進での力強さや、高速道路で追従クルーズコントロールを利用しているときの再加速のスムースさはモーターのおかげといえるのでしょうが、あえてコストをかけて2.5リッター車より100kg以上も重いグレードを「2.0リッターにこだわるユーザー向けに」用意する意義は感じられなかったのです。逆にいえば、それだけ2.5リッター車の仕上がりが素晴らしかったということです。

新型フォレスターのトピックスといえる顔認証システムを搭載しているのがアドバンスだけなので、その点においてアドバンス・グレードをオススメするという面があるのは事実ですし、そうした装備差もあって売れ筋グレードになっているのでしょうが、純粋にパワートレインを軸とした走りでいえば、2.5リッター車を選びたいというのが、第一印象なのです。もっとも電動アシストによるジェントルな乗り味がe-BOXERを選ぶ理由になるという評価も否定するものではありません。

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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