新型クラウンのチーフデザイナーにインタビュー グローバルトレンドを目指してすべて変えたデザインとは何か?

王冠のエンブレムが輝く太いリアピラーを捨て、6ライトを採用した新型クラウン。高齢化するユーザーの若返りを図るためにチーフデザイナーが目指したものとは何か? 話を聞きました。

── 最初の質問です。新型は、パッと見ると先代のイメージがありますが、あえて継続の意図はあったのですか?

「いえ。先代は、箱の中でしっかりスポーティさを出した巧みなデザインだったと思いますが、今回は当初から「すべて変える」という意識でした。そもそも、クラウンというクルマは、常にその時代の最先端を採り入れてきた歴史がありますよね」

── 6ライトの基本ボディはいつ頃決まったのですか?

「当初は、変えるといっても歴代の太いリアピラーの中での提案でした。しかし、それではあまりに形骸的だろうと。今回のテーマはロングノーズ、ショートデッキの低く伸びやかなスタイルだったので、じゃあ一旦6ライトも描いてみようかと仕切り直したわけです」

── それでも、フロントグリルはやはり先代の進化版に見えます。

「ロングノーズ、ショートデッキや6ライトに加え、顔もまったく変えてしまうと一体お前は誰だ? となってしまいます。そこで一部は先代の財産も使おうと。ただ、先代のグリルが少々グラフィック的だったのに対し、新型はセンター部分を前進させ、両サイドはタイヤに巻き付くような立体感を出しています」

── アンダーグリルをここまで目立たせた理由は何でしょう?

「スポーティさを出すためには、表面的なものではなく骨格そのもので表現したかった。ボディの軸が低く、まるで地面にへばりつくような造形を狙ったわけです」

── サイド面のキャラクターラインは、リアランプからつながる明快なものと、その下の折れ線の2本構成になっていますが、その意図は?

「ボディの軸を低く見せるためにはサイド面を上下圧縮させて見せたい。2本のラインを使うことで面のピークを2回設け、サイド面が単調な凸面にならないようにしました。単なる丸い面は少し古い印象になってしまうんですね」

── ピラーですが、6ライトにするにしても、もう少し太くすることができたのでは?

「そこはピラーの太さよりも、いかにサイドグラフィックが流麗で伸びやかに見えるかを優先しました。強さの表現については、ボディのサイド面でしっかり出せるだろうと」

── そのリアピラー下端とキャラクターラインの間にはトランクリッドラインが複雑に合流してますね

「やはりセダンとしてはノッチをしっかり持ってないといけない。しかし、リアピラーの面をそのまま後ろに流してしまうと本当にハッチバックに見えてしまう。なので、そこは多少複雑に入り組んだ面にはなっていますよね」

── リアパネルですが、滑らかなランプ形状などもあってカムリクラスに見えてしまいます

「そこは企画段階からチーフエンジニアと話をしていて、品位は欲しいけど妙な品格は要らないよね、と。そこは気にせず、とにかくキレイで流麗なボディを作ってくれということでした。高い質さえ確保すれば、現代のフォーマルさは表現できるということです」

── 最後に。新型はスポーティを謳っていますが、たとえば「ゼロクラウン」もまたスポーティだった。では、新型のスポーティとは一体何でしょう?

「個人的にはいろいろありますが、今回のクラウンでいえばグローバルトレンドを採り入れることです。ドイツ車など欧州勢を筆頭に、SUV台頭の中で、10年くらい前からセダン全体の骨格がスポーティに振られてきた。そこをしっかりやり切ろうと」

── ありがとうございました

新型には「ジャパンカラーセレクション」として「茜色(アカネイロ)」など日本的な特別色が用意されている。國重氏によれば、グローバルトレンドに乗りつつも、クラウンはあくまでも日本の高級車であることを示した提案だという。その立ち位置を造形でも示すこと。それが新型の肝と言えるのかもしれない。

[語る人)
トヨタ自動車株式会社先進技術開発カンパニー
グローバルデザイン企画部 主査
国重 健 氏

(インタビュー・すぎもと たかよし)