【週刊クルマのミライ】日産・ノートに前後独立モーターの4WDが追加。シンプルな直流モーターを採用した理由とは?

とはいえ、e-POWER車はフル電動車両として必要な大きな駆動エネルギーを安定供給できるだけのリチウムイオン電池をはじめとする電動システムを積んでいます。そうであれば、e・4WDのような発進・低速時に限ったシステムではなく、もう少し幅広くリアを駆動させる4WDである可能性もありそう……と思ってしまいますが、結論からいえば直流モーターを用いたアシスト式4WDとなっていました。

実際にe-POWERの4WD車を見ることができましたが、下から覗き込んでみると、たしかに後輪専用モーターはコンパクト。そして4WDへの切り替えはインパネのスイッチで選択するというのも、従来からのモーターアシスト式4WDと同様でした。

せっかくの電動車両なのに、モーターアシスト式4WDにとどまってしまうのは、そのスムースに加速するポテンシャルからするともったいない、と思う気持ちもありますが、昨シーズンのウインタードライブでノートe-POWERを運転したときに感じた高いコントロール性を思い出せば、そこに不満を持つ必要はないと気付きます。

速度が乗ってしまえば2WDであっても問題なく走ることができるのはe-POWER(電動車両)の好レスポンスを活かしたトラクションコントロールのおかげです。悪路に入ったりするのではなく、あくまで市街地での積雪路に対応するという範囲でいえば、発進さえクリアすればあとは2WDで問題ないと判断するのも妥当といえそう。

逆に、e-POWERの持つアドバンテージがあってこそモーターアシスト式4WDで十分と判断されたのかもしれません。それにしても前輪が交流モーター、後輪を直流モーターで駆動する電動4WDとなったノートe-POWER。その駆動系は非常に珍しい存在といえそうです。

●日産ノート e-POWER X FOUR 主要スペック
車両型式:DAA-SNE12
全長:4100mm
全幅:1695mm
全高:1525mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1300kg
乗車定員:5名
パワートレイン:HR12DE-EM57-N2
エンジン形式:直列3気筒DOHC
総排気量:1198cc
最高出力:58kW(79PS)/5400rpm
最大トルク:103Nm(10.5kg-m)/3600-5200rpm
前モーター形式:交流同期電動機
前モーター定格出力:70kW(95PS)
前モーター最高出力:80kW(109PS)/3008-10000rpm
前モーター最大トルク:254Nm(25.9kg-m)/0-3008rpm
後モーター形式:直流発電機
後モーター最高出力:3.5kW(4.8PS)/4000rpm
後モーター最大トルク:15Nm(1.5kg-m)/1200rpm
燃料消費率:28.8km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:185/65R15 88S
メーカー希望小売価格(税込):2,237,760円

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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