【プジョー308試乗】 復活した「猫足」!? ハンドリングと乗り心地、そしてロードノイズの実力は?

ステアリングの切り始めからやや重ためな操舵力特性であり、その反力を超えて操舵を切り込むと「くいっ」と軽やかにクルマが曲がっていきます。操舵後に立ち上がるヨーレイトの大きさは、このクラスの平均的な性能に感じますが、小径のステアリングホイールの影響もあり、少ない動きでクルマの向きが変わる印象を受けます。どこかゴーカートの様なクイックな挙動は、プジョー308の魅力の一つかもしれません。

操舵直後のフロント外輪側の沈み込みが大きいこと、そしてロールの動きが速いこと、また上下方向の動きがゆったりしていることから、足回りのセッティングについては、スプリングとショックアブソーバーの特性は緩めに設定されていると推測できます。

この「良い意味での足回りの緩さ」は乗り心地をよく感じることにつながります。そのため、この足の動きを予見してコーナー手前からゆっくりとステアリングホイールを操作できるようになれば、クルマがぐらつくこともない、上手な運転ができるようになるな、と考えられます。

旧型のプジョー308のセッティングがドイツ車のように固めに引き締められていたことを覚えている評論家の方々は、「猫足が復活した」という方も多くいます。仮に、他の欧州車の性能を「正解」とおくならば、「上屋がゆらゆらして足が緩すぎる、安心して飛ばせない」のでしょうけれど、なぜかプジョーだけは許されている(愛情がある)のは面白いものです。もし日本車ならば、間違いなく後者の評価が下されるでしょうけれどね。

また、小回り性能を表す最小回転半径のカタログ値は5.2mと、このサイズ感のハッチバックでは一般的な大きさです。駐車場での切り返しのやりやすさは、操舵力の重たさが影響して平均点以下です。据え切り操舵力は、EPS出力を上げてほしいところですが、力のあるフランス人にとっては十分なのかもしれません。あくまで想像ですが、日本人としては相手にしてもらえていないようで悔しいところです。

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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