軽自動車初のVTECエンジンを積んだのはS660ではなく、新型N-BOX!

さらに燃焼室の形状も非常にユニークなものとなっています。ホンダが公開している新旧・燃焼室比較イメージ図からもわかるように、S07A型ではオーソドックスな形状ですが、新しいS07B型ではひょうたん型のようになっています。さらに吸排気の各ポートを稜線によって区画整理しているのがユニークなポイント。この独自形状の燃焼室の狙いは、タンブル流(縦うず)をスムースにすること。ピストン頭部には、まるでターボエンジン用のような半球状のくぼみを設けることで、タンブル流を保持しながら点火プラグ近くに混合気を集中させるといった設計は急速燃焼のため。

小さな燃焼室で、急速に燃やす工夫をすることでノッキングを防ぎ、着実に運動エネルギーに変換しようという狙いが感じられます。

さらに耐ノッキング性能を高めるために世界初の技術も投入されました。

それが「鏡面バルブ」です。燃焼室側のバルブ面を極めて平滑にすることで、吸気時に導入された新気との接触面積を最小化。高温化したバルブから新気への熱伝達を抑えることで、耐ノック性を高めています。この鏡のような傘裏面を持つバルブを吸気、排気に採用することで、レギュラーガソリン仕様ながら自然吸気エンジンでは12.0という高い圧縮比を実現しています。

また燃焼室を小さくしながらバルブ面積を稼ぐために、M10サイズの小径スパークプラグを採用しているといった部分まで撤退して設計されているのです。

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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