35.2km/Lという高い燃費性能を誇るミライース。試乗したグレードはG“SA III”(IIIはローマ数字の3)という最上級グレードです。
スマアシと呼ばれる緊急ブレーキやコーナーセンサー、キーフリーセンサーなど装備が満載され、車両本体価格は120万9600円でエコカー減税は免税となります。
新設計されたシートは若干小ぶりですが、なかなかいいホールド性を持ちます。最初はちょっと違和感がありましたが、走行距離が長くなるにしたがってしっくりしてきました。発進は力強く、しっかりとしています。エンジンの力が無駄なくタイヤに伝わっている印象です。渋滞のない道での発進で、他車のペースに遅れることなくスタートすることができます。強い加速をするとCVT特有の高周波音がしますが、そのレベルは低くてさほど気になるものではありませんでした。
乗り心地はこのクラスとしてはかなりいいレベルです。燃費のためにタイヤの指定空気圧が260kPaと高めになっているため、路面の不正を拾いやすく細かいノイズが伝わってきますが、それを除けばおおむねいいと言えます。ちょっと気になったのはパワステのアシスト量です。普通に走っているときはちょうどいいアシスト量なのですが、車庫入れなどの極低速で走っているときはスコンと抜けるような軽さになってしまうことありました。
今回の試乗では高速道路も走りましたが、これがびっくりするくらいにいいのです。高速道路でも十分に走る……ではなく、高速道路が気持ちいいレベルになっています。流入時の加速もしっかりしています。インターチェンジのコーナーでは大きくロールしますが、車体の安定感は損なわれず、コーナリング中にラインを変更しても怖さがありませんでした。
じつは走行中に後席にも座る機会もありました。軽自動車の後席はあまりいい思い出がないのですが、今回のミライースはしっかりした乗り心地を確保していました。ミライースの後席はシートクッションもシートバックも一体型で、ラゲッジの使い勝手という面では不利なのかもしれませんが、この一体化したことでシートが無理な設計とならず、しっかりと取り付けられ安定していることがいい乗り心地を確保できた要因なのかもしれません。
もしミライースが軽量化などによって得られた余裕を走行性能ではなく、燃費性能に注いだらこうした好印象は受けることができなかったでしょう。必要な燃費を確保していたミライースは、その余裕をクルマ本来の魅力である走る、曲がる、止まるといった基本性能に振り分けたのです。だからこそ魅力的なクルマに仕上がったと言えるのです。もしかしたらミライースはこれからのコンパクトカーの方向性を示すモデルとなるかもしれません。飛び道具のような目立つ機能こそありませんが、基本性能の高さは非常に高いものに仕上がっていました。
(諸星陽一)
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