国連の作業部会でも日本が議論を主導してきたという「WLTP」は、 「Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure」の略で、地域や国ごとに異なっていた燃費測定モードに規格を設けようというもので、2014年に国連で「WLTP」が世界統一技術規則として成立しています。
従来の「JC08モード」は、その前の「10・15モード」よりはまだ実燃費に近づいたとはいえ、実燃費とJC08モードの差が大きいのは周知のとおり。車種や走り方により異なりますが、JC08モード燃費の5〜7掛けくらい(3〜5割くらい悪い)が実燃費という車種もあるはず。
新基準のWLTPモードでは、より実燃費に近づけるべく、測定内容を大きく変更。JC08モードでは、平坦路で渋滞がなくて燃費を左右するエアコンもオフという走行が想定されていましたが、WLTPでは最高速度、平均速度、走行時間、アイドリング時間、コールドスタート(冷間時、温度が低い状態で始動させること)比率時間も引き上げられます。
さらに、試験車両に載せられるウェイトも増やすことで、より実燃費に近づくような測定方法になります。JC08モードの「等価慣性重量(燃費試験時のシャシダイナモメーターに設定する負荷)」において、ステップ状に設定された区分(重量)すれすれにすることで有利な数値を出そうという手法が(実燃費との乖離の一因として)問題視されることもありましたが、WLTPではステップレスの実際の重量になります。
なお、WLTPモードには、「超高速走行」もありますが、日本の交通環境に合わせて先述したように、「平均」、「市街地」、「郊外(渋滞や信号の少ない走行)」、「高速道路」の4つを採用。
新燃費基準のWLTPになると、停車時間がJC08モードよりも約14%減るため、アイドリングストップ付モデルのカタログ燃費が下がると見られています。国交省では、ハイブリッドカーや軽自動車の燃費がJC08モードよりも下がると分析しており、いまやハイブリッドに限らず当たり前になりつつアイドリングストップですから一概には有利、不利とはいえなそう。
いずれにしてもWLTPに切り替わり、どれだけ実燃費との差がなくなるのか、あるいはクルマ選びにも影響を及ぼすのか注目です。※写真と本文は一切関係ありません。
(塚田勝弘)
【関連リンク】
乗用車等の燃費試験法に、WLTPを導入するための方針をとりまとめました(METI/経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160325006/20160325006.html