経済産業省も、PHVが急速充電器を利用する点については「もちろん使えるものは使っていい」という姿勢で、バッテリーEVのために設置したわけでない、とのこと。それでも、同省もまた電動化車両は、基本的に家庭などで普通充電するのが本来の姿と捉えているそう。
そうはいっても、PHVを買おうとしている人の中には、自宅に充電設備を設置できない、ロングドライブすることが多いなどの理由で、急速充電の対応をポイントのひとつとして考えている場合もありそうですから、普及のため(売れるため)に欠かせないといわれると、確かにそうかもしれません(トヨタ社内でも急速充電の是非については議論があったそうです)。
しかし、急速充電については料金面で割高です。以前は無料の急速充電スポットもありましたが、最近は有料が大半のようです。日本充電サービス(NCS)の場合、急速充電のみのカードで月会費3800円、都度利用料金は15.0円/分、急速・普通併用が月会費4200円、都度利用料金は急速が15.0円/分、普通が2.5円/分。
トヨタには基本料金なしで、使った時だけ支払うカードもありますが、これも決してkWあたりの料金は安価とはいえません。
なお、新型プリウスPHVには、EVモードを長押しすることで切り替わる「チャージモード」が用意されています。こちらは90分の停止状態で2.5Lくらい燃料を消費するそうで、このチャージモードの条件と急速充電を比べると、急速充電の方が割高になるとのこと。
なお、チャージモードによる最大充電量も80%までです。急速充電は充電時間も選べますし、便利ですが経済的にはあまり得とはいえないようです。
また、プラグインハイブリッド(PHV)が1カ所しかない急速充電スポットを使っていると、後から電欠ギリギリで来たバッテリーEV(ピュアEV)のユーザーが快く思わないといった内容の書き込みがインターネットなどで見受けられます。
経済産業省では、これ以上急速充電スポットを増やさないという姿勢とのことで、新型プリウスPHVが売れるとトラブルなどにならないか心配。
トヨタも重々承知していて、新型プリウスPHVには「20分で充電が終わります。声をかけてください」という趣旨のタグが用意されているそうです。使うかどうかはユーザー次第ではありますが、トヨタらしい心遣いも感じさせます。
急速充電がバッテリーに及ぼす影響では、充電量を80%に抑えることで悪影響が出ないようにしています。大電流を流す急速充電では、最後のフル充電の制御が難しいそう。さらに、頻繁に急速充電だけで使用し、フル充電に近い状態で放置しておくとリチウムイオンバッテリーの劣化が進みます。
しかし、プリウスPHVを1日に1、2回急速充電する程度なら影響はほとんどないそうで、3、4回と繰り返すと高温状態になり、SOC(充電率)が高いと劣化につながるそう。それでもたまに遠出して1日に3回急速充電する程度なら問題ありません。
(文/塚田勝弘 写真/小林和久、前田惠介、塚田勝弘)